押しかけカノジョが妖精な件。

帆高亜希

第1話 コトのはじまり

今日から高校生活がはじまる。

え、なにがうれしいかって?



幼なじみでお嬢の美月ミツキちゃんが同じ高校通うこと♪



本来ありえねー話なんだ、だって金持ちの娘だから幼稚園からエスカレーター式のお嬢様学校へ通っていて、そのまま進学するはずだったから。

それがオヤジさんの会社経営がうまくいかなくて赤字出したもんで、金かかる私立へはやれなくなって俺が通う事になる公立高校に編入するって決定したんだってさ。

こんなこと喜んじゃいけねーってわかってるけどさ、嬉しいもんは嬉しい。

だって美月ミツキちゃん、超かわいいからさ!


抜けるように色白くってツヤツヤの長い黒髪はサラサラしていて、

黒い瞳はパッチリ大きく人形みたい。

ほっそりしてスタイル良くって欠点がどこにあるかわからない。

オマケに性格までいいし、昔から優しいんだよな!

極めつけは、オトコもいる男女共学校通うの初めてで不安だから、慣れるまで俺にベッタリ。

これを機に俺の彼女になったらいいな、ってか、楽勝だろう!


と、ウキウキしてたところ、母親から意味不明な依頼されガックリくる。



怜士レイジ…帰りについでだからさ、ここ寄って苗木もらってきてくれない?」



突然の事に俺、



「はァ?意味わかんねーし…」



そう答えてとっとと家を出ようとドアノブに手をかけたら、

後ろから襟首むんずとつかまれた。



「こら、まだ行くな、これ見て」



そう言って俺の目の前にチラシを押しつけた。



「んだよ…」



押しのけて出ようとしたが、母親もなかなかしぶとい。



「お願いだからさぁ、もらってきてよ〜!トットコストアのリニューアル記念で会員限定でタダで苗木もらえるからさぁ」



「そんなの自分で取りに行けよ、ヒマだろ?」



「ヒマじゃないわよ、今ネタ考えるのに必死なんだから」



うちの母親は一応漫画家だ、もっとも売れてないし名前もそんなに知られてはいないんだが、そこそこ仕事はあるらしい。

それでも高校の入学式終わってからわざわざスーパーマーケット寄って苗木をもらいに行くなんて絶対いやだと思い、



「断るっ!」



そう叫んでドアノブ回して扉を開いたら…、

そこには見るもまぶしい超美少女が立っていた。



「おはよう、怜士レイジくん」



紺のブレザーに赤いチェックのリボンタイ、そして赤いチェックのミニスカート、

すらりと伸びた細い足は紺色のハイソックスに包まれていた。



「おっはよー、美月ミツキちゃん♪」



このときの俺を漫画に描いたらきっと目がハート型になっていただろう、

それくらい美月ミツキちゃんはマジでかわいすぎた。



「あらおはよう、みっちゃん」



母親が美月ミツキちゃんに挨拶をする。

昔から母親は美月ミツキちゃんのことをみっちゃんと呼ぶ。



「おはようございます、おばさま」



子供のころから美月ちゃん礼儀正しく、うちの母親からの評価も高い。

こりゃ、嫁に来ても姑とモメることはないだろうと今から安心だ。

と、ここで美月ミツキちゃんは思いもよらないことを口にした、



怜士レイジくん、お外まで聞こえてたわよ?トットコストアへ行くんですって?帰りに私も一緒に取りに行きましょうか?」



「えっ、マジで?美月ミツキちゃん付き添ってくれるなら行く、行く〜!」



やっぱ美月ミツキちゃん、イイだな、俺の嫁決定♪母親も、



「あらみっちゃん悪いわね…」



と言いつつ、なんだか嬉しそう。



「いえ、いいんです。うちもトットコストアの会員で、我が家にもう一本苗木が欲しいなと思っていたので…」



美月ミツキちゃんちは我が家とは比べものにならないくらい豪邸で立派な庭がある。

広い庭に苗木が一本増えたとこでどうってことないだろう、

それなのにウチはボロい一軒家で(って、父親のじーちゃんが建てた家に文句言えないんだが)、その上庭も猫の額ほど狭い。

そんな狭い庭に母親はなに考えてんだ!?って思ったが、

まぁ、そのおかげで美月ミツキちゃんと学校帰りも一緒にいられる。



こうして俺は幸先のいいスタートにウキウキしながら学校へと向かった、

これから色々とんでもないことが起きるとは知らずに…。




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