第19話 スキル解除(ジークフリート視点)
あの後、微妙な空気を放置して光の玉の中に入って来たリオンからペンダントをもらったジークフリートは、その後すぐアリシアナに「あのジーク様…やっぱりわからなくて少しジーク様の知恵もお借りしたいのですが、よろしいでしょうか…。」と呼ばれたので謎空間に戻った。
「いいよ、僕もちょうどシアに聞きたいことがあったんだ。」
それはもう…色々と、聞きたい。
本人が覚えているかは分からないけど。
「聞きたきこと…ですか?」
キョトンとした目で見つめてくるアリシアナを見て思わずジークフリートはアリシアナの頭を撫でつつ、ここに来る直前の事を聞いた。
スキル発動のきっかけになった何かがあるはずだと思ったからだ。
アリシアナは内乱の犠牲になるであろう女の子が助かりますようにと祈って気づいたらここに居たと言った。
「なるほど…シアはここに来る前に内乱の犠牲者になるであろう子に無事でいて欲しいと祈ってたんだね」
うーん、それが原因の一つだとは思うけどそれだけでスキル発動したりするものなのか。スキルの存在を知らない状態でただ祈っただけならもっと簡単にスキル解除できる気がするんだけど。
「僕は
同じ星の【原始創造スキル】でもスキルの根源が違うから詳しいことはわからない。何をすればここから無事に出られるのかはさっぱりだ。
むしろマリアのあの様子だと出た後の方が大変そうだと思い出し、もちろん出ないわけにはいかないのだが少し現実逃避したい気分なジークフリートは若干危ない発言をする。
ジークフリートが現実逃避しているとアリシアナがさっき自分でうっかり出した本を調べだした。その本で何かする様だ。
公爵曰く『放置すると何をしでかすかわからないから、アリシアナのやりたい事の邪魔をしないように守る事。』との事だが…
さて、どうなるか。
しばらく見守っていると少し本をパラパラめくった後、本が勝手に動いてなにかのリストが書いてあるページで止まった。
――――――――――そこまでは良かった。
本を見ていたアリシアナが青い顔で「なに、これ。」と呟いた。
ジークフリートはその時に異変は感じたもののどこからが"邪魔"にならないのかが分からずもう少し様子を見る事にした。
その為、異常事態にジークフリートが気がついたのはそのすぐ後、彼女が頭を抱えて泣き叫び始めた時だった。
「いやぁぁぁー!痛い、怖い、痛い…いやぁぁぁぁぁー!!」
アリシアナの叫び声を聞いて、ジークフリートが慌てて駆け寄った。
「シア!!シア!?」
呼び掛けながら本を見ると本に書かれた文字が光っていた。
くっそ!この本が原因かっ!
「しっかりして!!」
外でも異変が起きているのか外側にいる人達の声が聞こえる。
いろいろ言ってるけど、そもそも同じ星の【原始創造スキル】でも系統が全く違うんだから僕じゃどうすればいいのかさっぱりわからないって。
ジークフリートは内心で愚痴りつつもどうすればいいのか必死で考えたが答えは出ないままとうとうアリシアナは焦点の合わない瞳で倒れて動かなくなってしまった。
ジークフリートはアリシアナを慌てて抱きとめると空間内でアリシアナに呼び掛けつつ外の世界で自分のスキルを使ってアリシアナを視た。
関係ない所の記憶は見ないように気をつけながら今の記憶だけを。
すると流れ込んできたのは恐怖と痛みと何百人分もの人々の死の瞬間だった。
「っ…。」
突然の事に意識が飛びかけ循環させていた魔力が霧散しかけたのでスキルを解除した。すると外側から声が聞こえた。
「殿下っ!シーナ様からの言付けですっ!!そのまま言いますっ!『無茶は承知でお願いします、半分だけ娘から遮断してくださいっ!』以上ですっ!私も微力ながら手助けさせていただきますっ。」
いつの間にか僕とシアに精神的ダメージと肉体的ダメージを緩和させる系の結界を飛ばしてきていたマリアにとんでもない無茶を言われる。
「………あ、れを…半、分……正…気…?」
スキル切ったのに未だにズキズキ痛むし浮いてるからわからないかもだけど膝はガクガクしてる。
「殿下あまり時間がありませんっ!ここで失敗すると『ここら辺の国はいろいろあった後にまとめて全部数年以内に滅亡』だそうです!!」
はぁっ!!?いろいろってなんだ!?
シアの流れ込んでいる感情と痛みの奔流を半分切り取ると遮断すると行き場を失ったそれらは当然こっちに流れ込んできた。
痛い、怖い、悲しい、憎い、死にたい、痛い、怖い、痛い、悲しい、憎い、痛い…
終わりの見えない痛みに意識がまた飛びかけたところでマリアの声がとんでくる。
「殿下しっかりっなさってください!!周辺諸国の滅亡より先にシアお嬢様と殿下が先に亡くなられるそうですよっ!」
~~っ!
……そういうことは先に言ってっ!!
言葉を返す余裕はないが半分ならマリアの結界のおかげでギリギリ何とかなるかっ…?
気合と根性で何とか耐えつつ謎空間にいるシアに呼び掛け続けているとあっちでシアが目覚めて本に何かをしていた。シアが気がついた事に一安心していると魔力がごっそりと抜けて1人分だけ楽になった。楽になったと言っても何百人分の1人分、正直な所誤差のレベルだ。
今度はなんなんだと思っているとまた大量の魔力と共に1人分楽になった。
「っ!?」
1人、また1人と大量の魔力と一緒に消えていく死の記録を感じながら『まさかこれを全員分やる気なの!?』と泣きたくなった。
「殿下!?」
マリアの焦った声がしているがこっちはとんでもない事ハイペースで消えていく魔力で魔力欠乏症1歩手前の為、意識が朦朧としてきた。その時「マリア!大丈夫!ここからは私が母上から聞いてる!」と今度はリオンの声が聞こえる。
「王子殿下、今から私が2人に魔力を渡します!母上からは『リオンからの魔力でなんとか耐えてください』とのとこです!」
「っ!」
1人分魔力が増えたところで焼け石に水じゃないかと思ったが流れ込んできたのは信じられないくらい膨大な魔力だった。
今度は魔力で押しつぶされそう…。
もう、なんだこれ…。
それから数分後…全部消し終わってシアのスキルが解除される頃にはヘトヘトでシアが気を失うのと同時に僕も気を失った。
*****
目が覚めて時計を見る聖星暦1710年夏の2の月30日の早朝で気を失ってから約1日も経っていた。
シアと同じベットなのはおそらくお互い魔力をギリギリまで消耗していて繋いだ手を無理やり離す事が出来なかったからだろう。あのまま無理やり離されていればもう何日かは2人とも目が覚めなかっただろう事は容易に想像がつく。
1度目は覚めたもののまだ本調子とは言えず、隣で眠るシアの寝顔をしばらくぼんやりと見つめていた。色々と考えながら微睡みつつ2時間ほど経った頃シアも目を覚ました。
「おはよう。僕の眠り姫。今度は早かったね。」
僕の存在に気づいたシアはピンクゴールドの大きな目をこれでもかと見開いて驚き、顔を真っ赤にした。
「ジ、ジーク…様…。」
アリシアナは真っ赤な顔で必死に自分の記憶をたどって混乱している。
しばらく混乱していたアリシアナは結論を出すのを諦めたからなのか、まだ混乱していたからなのかはわからないが「……………お…おはようございます?」と真っ赤な顔で不思議そうにしつつも普通に朝の挨拶をしてきた。
ジークフリートは可愛いアリシアナのその姿をみて自分が守ろうと漠然と決意した。
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