第11話 じゃんけん大会

「愛と友情と絆を深めるために、〇〇少女高等学校名物! お友達じゃんけん大会を行います!」

 女教師少女のスリア先生が学校行事の開催を告げる。

「ええー!? じゃんけん大会!?」

「私たち高校生なんですけど!? 小学生じゃないんですよ!?」

 魔法少女アリアや明るい少女ケリアはじゃんけん大会に抗議する。

「あそこに喜んでいるお友達もいるけど?」

「え?」

 女教師少女が喜んでいる少女たちを指を指した。

「やったー! じゃんけん大会だ! キャッホー! アハッ!」

「じゃんけん大会なら私でも参加できる! 嬉しい! ヒーハー! アハッ!」

 超能力少女の真理亜と鈍感処女のコリアは大喜び。

「真理亜ちゃんとコリアちゃんか・・・・・・。」

「納得できるので何も言えない・・・・・・。」

 こうして、じゃんけん大会は開かれることになった。

「じゃんけん大会の景品は、アイドルデビューです!」

「おおー!?」

「自分のお友達がアイドルだと自慢もできて嬉しいですよね! 応援したくなりますよね! コネで会いたい芸能人にも会えますよね!」

「おおー!」

「みんな! アイドルになりたいか!」

「おおー!」

 大喜びの超能力少女と鈍感少女。

「私たちでもアイドルになれるんだよ! あの煌びやかなアイドルに! ステージで輝く星になれるんだよ! アハッ!」

「やったね! 真理亜ちゃん! お友達アイドルデビューしよう!」

「はあ・・・・・・。」

 二人を見ていてため息をつく魔法少女。

「どうしたの? アリアちゃんはアイドルになりたくないの?」

「別に。」

「あ! エリカ様だ! アリアちゃん、薬やってるの?」

「やってないわい!?」

 きっとアダルトな部分はカットされる。

「どうしたの? アリアちゃん。○○少女学園は、元々アイドル養成学校だよ。」

「なに!? 普通の都立の学校じゃなかったの!? いつの間に変わった!?」

 即断即決! 生徒が集まらなくて廃校になる学校を救うためにスクールアイドルを目指す訳でもなく、廃部になりそうな軽音楽部を乗っ取りライブやお茶会をしたい訳でもなく。あ、潰れそうな学校や部活を立て直すというストーリー構成は、大ヒットアニメだけど類似・リスペクトのストーリーなんだね。

「○○少女はキャラクターや少女の量産はできるけど、○○少女は何をするの? ○○少女は何のためにいるの? メインストーリーが超能力少女の私の日常でしかなかった! ○○少女は食パンやコロナウイルスの時事問題を取り上げているレベル!」

「そこ、力強く言わないとダメな所かしら?」

「まだ分からないの!? アリアちゃん!? あなた!? もしかしておバカなの!?」

「あんたに言われたくないわい!?」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す超能力少女。

「要するに、○○少女も潰れかけの学校や部活動と同じということよ!」

「なんですって!?」

「メインストーリーがない○○少女ワールドなんて、潰れかけの○○少女ワールドよ!」

「そこでアイドルか。」

 現在、アニメ界で成功しているのがアイドルモノ。リズムゲームとしてキャラが欲しければガチャ回せの課金しろ。アイドルは歌手なのでCD、DVDも売れ、声優さんのコンサート、握手会、劇場上映など、ファンからきれいな煌びやかな世界に見えるアイドルモノは、リアルとアニメの融合で最強のWINWINお金儲けのコンテンツである。

「戦闘ゲーはどうするの?」

「それは現状でも実装済みでしょう。私たち既に何度も戦闘を繰り返しているもの。なんとでもなるわ。アハッ!」

 逆に異世界ファンタジーRPGというものが、可愛いキャラクターの日常モノや時事モノに押されて消えそうな風前の灯火である。今時の若者がRPG? 異世界に冒険? に共感できないみたいだ。なんせ今の時代の憧れの職業は、アイドル、声優、ユーチューバーだからだ。「勇者になって魔王を倒そう!」ではなく、「ユーチューバーになって、お金を稼ごう!」と現実的である。異世界ファンタジーも面白ければ見てもらえるという程度である。

「ねえねえ、アイドルもやめて、今のまま日常モノでいいんじゃない?」

「これも実験です。アハッ!」

 話が落ち着いた所でじゃんけん大会が始まる。

「それではじゃんけん大会を始めます! 全員参加お友達じゃんけん大会! 第一試合は魔法少女アリアちゃん対ゾンビ少女イリアちゃん!」

 じゃんけん大会など、スタミナ消費ゼロのミニゲームにしかならない。それでもゲーム中のアイテムをプレゼントすれば、お客さんを逃がさない囲い込みはできる。

「アリアちゃん! がんばって!」

「うん。行ってくるよ。」

 魔法少女はじゃんけん場に登壇する。

「あれ? イリアちゃんがいないぞ?」

 ゾンビ少女は姿を現さない。

「えーゾンビ少女のイリアちゃんは日中は墓地の土の中で眠っているため参加できません。よって魔法少女アリアちゃんの不戦勝です!」

「それでいいのか? じゃんけん大会。」

 じゃんけん大会の将来が不安な魔法少女。

「やったね! アリアちゃん! さすが我がライバル! アハッ!」

 本題は1割、中身の9割は日常会話。それが現代の日本アニメのストーリー構成である。 

 つづく。

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