やり方は常に幾通りもある。

「つまりこの世界は、誰もが輪廻転生という異世界転生を繰り返している、ということなんだね」

「そうだ」

「そして、誰も彼もがその事実を忘れている。きみはそう言いたいんだね」

「厳密には違う。誰も彼もではない。もしすべての人間が忘れているのなら、過去から現在において『輪廻転生』という概念は存在しなかったはずだ」

「なるほどね」


 前世の記憶を持った人が概念を残し、語り継がれてきたと陽翼よはねは言いたいらしい。

 だが、蓮理は意を決した。


「それだけでは根拠としては弱いよ」

蓮理れんり、なぜだ」

「ぼくたちは想像する生き物だからだよ。恐怖は『わからない』から生まれる。日の出や日の入り、月の満ち欠けの事実を前に怯えた祖先は、恐怖から逃れるためにそれぞれの真実を想像した。太陽は朝に生まれて夜に死ぬとみなし、月は死後の魂の赴く場所であり、魂の再生の中継点と思い描いた。そんな古代の人々の空想から、輪廻転生が語り継がれてきたかもしれないだろ」

「その可能性も否定できない。だが、どちらの考えも正しい可能性もあるであろう」


 彼女の意見に、蓮理は力なく同意した。

 二人の意見のうち、どちらが正しいかなんて、過去から現在に至るすべての人間に聞き取り調査をしない限り、確かめようがないからだ。

 もし仮に可能だったとして、すべての人が前世の記憶を覚えているとは限らないし、嘘偽りなく答えてくれる保証はどこにもない。どのみち、そんな聞き取り調査は不可能だ。

 ……本当に不可能だろうか?

 もちろん、過去の人間に尋ねることは無理だけれど、現在生きている人に質問することは、やろうとすればできるじゃないか。

 だけども、それには膨大な時間と労力が必要だし、費用がどれだけかかるのか検討もつかない。

 なにより、長期に渡る調査に必要なものが欠けている。

 情熱だ。

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