第827話 激戦の疲労
☆奈々美視点☆
場面変わってこちらはホテルに残った組。 私と希望の部屋よ。 私も希望もベッドの上に寝転がって大の字になっている。 もうそろそろ偵察組が帰ってくる頃かしら。
「あー怠いわね……」
「ぅん」
「ちょっとお風呂でも入ろうかしら……」
「いいね」
「希望、お風呂貯めてきてよ」
「はぅ。 奈々美ちゃんが貯めてきてよぅ」
と、お互いに動く気がまったくない。 実はさっきからもう3回も同じやりとりを繰り返しているわ。 いつまで経ってもお風呂に入る事はできない。
そんなタイミングで丁度良く部屋に亜美が帰って来た。
「ただいまだよー。 うわわ。 予想以上にダラけてる……」
「亜美、丁度良いわ。 お風呂貯めてくんない?」
「え、まだ夕方だけどもう入るの?」
「疲れ取れるかと思って」
「なるほど。 らじゃだよ」
亜美は嫌な顔をする事なくバスルームへ向かい、お湯を貯め始めた。 優しいわねー。
「はぅ、亜美ちゃんありがとぅ」
「大袈裟だよ」
私はベッドの上で上半身だけを起こし壁にもたれるように座る。 亜美がソファーに座って紅茶を飲み始めた。
「で、どうだったのよキューバ対クロアチアは?」
「キューバの圧勝だったよ。25-13、25-11でストレート」
「何よそれ……私達より楽勝してんじゃない」
「はぅ、強い……」
「そんなのと試合するの……また疲れそう」
「あはは……でも勝てるよ、ブラジルに勝った皆なら」
「ま、頑張るわよ。 てか、あんたとかも出なさいよね」
「そう言われてもねぇ」
まあ、采配は全部監督任せだから亜美に言っても仕方ない事だけども。
15分程ウダウダと駄弁りながら時間を潰していると、お風呂が入れる状態になったという音楽が流れてきた。
「希望ー、どっち先入るかじゃんけんしましょー」
「どうせ勝てないから奈々美ちゃん先にどうぞー」
自分がじゃんけんに弱い事を理解しているのか、勝負すらなしなくなったわね。
「じゃあありがたく」
私は疲れて重い身体をゆっくりと起こしてバスルームへ向かう。 あー怠い。
脱衣所でノソノソと服を脱いでバスルームへ。 足を伸ばして入れるタイプのバスタブでゆったりと浸かりながら疲れを癒す。
「はぁ……やっぱりお風呂は良いわぁ……疲れた身体に沁みるー」
「年寄り臭いよぉ」
相変わらずバスルームの外からツッコミが飛んでくる。 適当に返事だけしておいてボーッ天井を眺める。
「……キューバか。 ここに勝てれば優勝も見えてくるのね……」
多分、昨日のブラジル戦と同じぐらい疲れるんでしょうね。
キューバに勝てたとしたら準決勝の相手はどこになるのかしら?
「ねぇ、準決勝の相手候補ってどこ?」
「順当ならアンジェラさんのいるイタリアになりそうだねぇ!」
バスルームと外の部屋で会話を交わす。
イタリアか……そこもまた激戦になりそうね。
「反対ブロックは決勝戦どこが勝ち上がってくるかしら?」
「残ったチームだけで見たらアメリカか地元フランスが濃厚だよー!」
はた、もう余裕ある試合は一戦も無さそうね。
「って当たり前か。 私達が戦ってんのは各国代表の選手が集まる世界一決定戦なんだものね。 余裕のある試合なんかあるわけないか」
「そうだねー!」
世界一まで後3つか。 にしても本当に凄いとこまで来たもんね。 日本じゃ今盛り上がってんのかしら?
◆◇◆◇◆◇
お風呂から上がって来た私は、またまたベッドに寝転がっている。 このまま寝れるわ。
「奈々ちゃん、お夕飯までもうちょっとだよ?」
「わかってるわよ……ちょっと目を瞑るだけ」
「もう。 よし、疲れてる奈々ちゃんの為に私がマッサージしてあげよう!」
「げっ」
亜美のマッサージは控えめに言ってど下手くそなのよね。 何ていうか力は全然入って無いくせに押す場所が悪いのかただ痛いだけみたいな。 紗希のマッサージとはえらい違いよ。
「何その『げっ』って」
「マ、マッサージは遠慮するわ」
「むぅ。 まるで私のマッサージじゃあ疲れが取れないみたいな」
「まさにその通りなのよ」
「うわわ! ひどっ!」
「希望にしてあげれば良いでしょ」
「そうするよ。 後で奈々ちゃんもしてほしいって言ってもしてあげないよ?」
「言わないってば」
その後、お風呂から上がって来た希望にターゲットを切り替えて、希望にマッサージを施していた。
希望は「はぅ、痛いー」と嘆いていた。 やっぱり下手くそだわ。
◆◇◆◇◆◇
夕食の時間になったという事で、まだまだ疲れの残る体を起こしてホテルを出る。 昨日スタメンで頑張っていたメンバーの中でも、紗希と遥はだいぶマシになったみたいね。 奈央もいつも通りに戻っている。
回復早いわねぇ。
「ほな行こかぁ」
「弥生も随分マシになったわね?」
「おう。 紗希マッサージしてもろたんや」
「きゃはは。 私もまだ完全に抜けてないけどさー」
「食後に私もお願いしていいかしら?」
「りょ!」
紗希は敬礼ポーズしながら快諾してくれたわ。
「じーっ……どうして私のマッサージは拒否するのに紗希ちゃんには自分からお願いするのかな?」
「紗希のマッサージは上手だからよー」
「むぅ」
「きゃははは」
まあこれで多少は身体の疲れも取れるかしら。
レストランに入っていつもの物を注文。 これだけ滞在していると、大体好きなメニューってのもある程度固まってくる。
私は4種類ぐらいをその日の気分で回しているわ。
「んん。 麻美、キューバ相手に勝つ方法とか何か見つかった?」
隣に座る麻美に話しかける。 今日キューバの試合を観戦に行っていた麻美にキューバの事を聞いてみると。
「ブロックが下手ー。 揺さぶって崩していけば何とかなるかもー? 後はこっちのブロックがどれくらい機能するかだよー」
「何や、意外と行けそうなな感じなんか?」
「ブラジルに勝てたならいい勝負は出来るだろうって思うよー」
麻美は私達を信じているみたいね。
「頑張るで」
「ですわね」
「私達の出番ちゃんと作ってよ?」
今大会まだあんまり活躍していない亜美や渚にも出番を作る為には負けられないわよね。 多分、準決勝はその辺がスタメンになるだろうしね。
「任せなさいよ。 絶対勝ってやるわよ」
「おう!」
まあ、まだ正式にスタメンが発表されたわけじゃないんだけど、監督曰くブラジル戦のスタメンそのままで行くとの事だし。
「ウチらももっと暴れたいわ。 なあ、お姉ちゃん」
「そやな。 せっかく秘密兵器の新連携も意味あらへんやん」
「そういえばそんなのあるって言ってたわね」
「おう、見たら皆腰抜かすんちゃうか?」
「そんな凄いの? ぜひ見たいけど」
たしかに興味はある。 見る機会はあるのかしら?
◆◇◆◇◆◇
夕食後、約束通り紗希にマッサージをしてもらい、幾分身体の怠さが抜けた。 まだ明日1日あるし完全に疲れを抜いてキューバ戦に臨みましょ。
「奈々ちゃんー。 私のマッサージも受けてみない?」
「やめてよ?! せっかく紗希に解してもらったのにまた痛くなるでしょ? 希望見てみなさいよ、亜美にマッサージされてから調子悪そうでしょ?」
「はぅ……肩と腰が……」
その後、希望も紗希にマッサージしてもらってからはマシになったみたい。 亜美にはマッサージさせない方が良いわね。
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