第807話 ワールドカップ開幕
☆亜美視点☆
フランスに到着し、周辺の開拓を済ませた私達は、ホテルに戻って来ています。
「夕飯食べられるお店も見つけたし、とりあえず安泰だね」
希望ちゃんの言うように、夕飯を食べられるレストランも見つけてきた。 当然フランス料理のお店である。
「だけどさ、亜美と奈央が一緒にいないと本当に何が何だかわかんないわよね。 英語なら多少はわかるけど、フランス語なんて意味不明だわ」
「あはは、不便だよね」
私はフランス語もそれなりに出来るから問題は無いけどね。
ここは私と奈央ちゃんが頑張らないと。
「ホテルの本も新聞も、全部フランス語。 日本でマンガ買って来てなかったら退屈すぎて死んでたわね」
「それは良い過ぎだよ」
「そぅだよ。 それに明日からは試合とか、ライバルチームの偵察で忙しいよぅ」
「まあそうか」
さて、ここで今大会の形式なんだけど、まずはグループ予選があるよ。 1グループに4カ国が入り、2カ国が決勝トーナメントに進める。
私達のグループはC。 強豪と呼ばれる国としてはクロアチアが同グループにいる。
「私達は十分に予選抜け出来る可能性があるわね」
「まあ、クロアチア以外はランク的にも格下だからね」
だからって油断は出来ないけど。
「どんな選手がいるんだろうねぇ。 楽しみだよ」
「それはあるわね」
「私は緊張の方が大きいかなぁ……」
「希望ちゃんは相変わらずだね。 緊張して動きが悪くなるのだけはダメだよ?」
「わかってるよぅ」
まあ、本番に強い子だから大丈夫だろうとは思うけど。
希望ちゃんには期待しているよ?
◆◇◆◇◆◇
夕飯を食べに行って帰って来た私達は、監督に集められてミーティングに参加しています。
「皆集まったかー? 時差ボケとかになってないか?」
まあ、中には時差ボケになってる人もいるだろうね。
「明日開会式の後、我々日本はCコートでいきなり試合だ。 相手はアイルランドだ。 ランク的には格下ではあるが、油断はするな。 特に注意すべきは長身
むう、大きいねぇ。
「普通にスパイクも打ってこれる選手だ。 心してかかるように」
「はい!」
「で、明日のスタメンだが……まずは藍沢姉、神崎、蒼井と身長のある3人は出そうと思う。 残りだが……新田、宮下、明日行けるか?」
「は、はいっ!」
「もちろん!」
残るはセッターだけど。
「最後は西條。 あとは、藍沢妹。 新田との交替だ」
「はい!」
うむ。 明日はスタメンからは外れたかぁ。 まあ、スポットで使われるかもしれないから気は抜かないようにしないとね。
「では解散! 体調を整えておくように!」
◆◇◆◇◆◇
部屋に戻ってきた私達は、明日の対戦相手であるアイルランドの試合動画を漁っていた。
「この人がメアリーさんかな? 本当に身長高いね」
「そうね。 でも身長高いだけで、ジャンプはそこまでじゃなさそうだわ。 私はわかんないけど、紗希なら上も抜けるかも」
「うん。 小林監督の采配がハマりそうだね」
その他の選手もさすがは国の代表になっただけあるね。 軒並みレベルは高い。 高いけど……。
「これなら十分やれるわ」
「頑張ってね、奈々美ちゃん!」
「任せなさい」
なんとも頼もしい事である。
◆◇◆◇◆◇
翌日、開会式だよー。
フランス開催という事もあり、開会の挨拶なんかはフランス語である。 だけど、一応翻訳機が配布されたので何とか聞き取れるよ。
「……」
開会式は問題無く終わり、選手達が自分達の試合のあるコートへと散っていく。
私達日本チームもCコートへ移動して来たよ。
「昨日言った通りスタメンは藍沢姉、神崎、宮下、西條、蒼井、新田で行く。 作戦は無い! とにかく自分達のバレーをやれ!」
「はい!」
「頑張ってね、皆!」
「新田さん、ファイトだよぅ!」
「頑張ってきます!」
世界戦デビューの新田さん。 さすがに緊張してはいるみたいだ。 コートに入って落ち着けば良いけど。
「よし、行ってこい!」
監督に送り出されたスタメン達がコートに入って円陣を組んでいる。 今日はスタメンから外れた私達は応援でチームを盛り上げるよ!
観客席にはわざわざ日本から来て下さったバレーボールファンの方々と、ゆりりんの姿も見える。
「にしてもデカいなぁ。 あれがメアリーっちゅう選手やな?」
「だね」
相手コートに立つ選手の中でも一際目立つ長身の選手がMBのメアリーさんだろう。 周りのアイルランドの選手も皆身長は高い方だけど、それでもメアリーさんは抜けている。
「まあ、関係あらへんけどな。 いてもうたれー!」
「たれー!」
黛姉妹は相手に日本語が通じないのを良い事に言いたい放題し始めたよ。 だ、大丈夫かな?
そんな中、試合は開始された。
サーブはアイルランドからである。 新田さんは緊張ほぐれただろうか? しっかり拾えるかな?
パァンッ!
アイルランドからの力のあるサーブで試合が始まった。
「任せてください!」
新田さんが声を出してボールを拾う。 どうやら緊張はしていないようだ。 いつにも増してキレのある動きを見せる新田さん。 これなら心配無いね。
「ナイスレセプションですわよ!」
司令塔の奈央ちゃんがそのプレーに対してしっかり声をかけている。 奈央ちゃんはああやって選手をノせるのも上手い。
さて、上がったボールの落下点に入った奈央ちゃんは、ネットに背を向けて両手を上げる。 それに合わせて走り出したのは遥ちゃんである。 更に少し遅れて宮下さんの、奈々ちゃんが同時に助走を開始。
そのタイミングで奈央ちゃんが軽く跳び上がり、トスを上げる。 高いトスは、奈々ちゃんの手をすり抜け、その後方から猛然と突っ込んで来た紗希ちゃんにドンピシャり。
パァンッ!
奈々ちゃんに釣られて跳んでいたブロッカーの上から時間差でスパイクを叩き付ける。
ピッ!
「ナイスー!」
「きゃははー! 記念すべき初得点いただき!」
「おー日本! 日本!」
紗希ちゃんのオープニングアタックも華麗に決まり、応援団のテンションも上がる。
「完璧な時間差攻撃やな。 さすが月ノ木はんや。 練度の高いコンビネーションやで」
「あの攻撃は普段もよく使うコンビネーションだねぇ。 紗希ちゃんはバックアタックでも点を取りに行けるからね」
実は決定率なら奈々ちゃんより上だったりするんだよね。
「さ、このまま勢いに乗っていてもうたれー!」
「もうたれー!」
ま、黛姉妹は相変わらずである。
さてさて、サーブが日本に回ってきた。 サーバーは宮下さんだ。 このタイミングが日本の最も火力の出るローテーションだよ。 前に紗希ちゃん、奈々ちゃん、遥ちゃんが並ぶタイミングである。
「宮下ーナイサー!
パァンッ!
宮下さんのジャンプサーブ。 威力もあるそのサーブをアイルランド側
遥ちゃんがブロックについたのは同じMBのメアリーさん。
クイック警戒である。
アイルランド側のトスが上がるが、ここはメアリーさんではなくエースのアシュリーさんへ。
紗希ちゃんと奈々ちゃんがしっかり2枚で対応する。
「せーの!」
タイミングを合わせたブロックがスパイクコースを塞ぐ。 アシュリーさんは空きスペースを求めた結果クロスへ。
しかし。
「そこは新田さんの守備範囲だよぅ!」
いち早く反応した新田さんがコースに入って真正面でディグる。 さすが希望ちゃんのライバルだ。
「ナイス千沙っちぃ!」
「やめてってば」
都姫の幼馴染コンビ健在。 奈央ちゃんが舌なめずりしながらブロックのフォーメーションをチラッと確認し、トスを上げる。
「奈々美!」
「来た来た!」
ここでエース奈々ちゃんにトスを上げる。 反応してメアリーさんがブロックへ。
「はっ!」
パァンッ!
ここのところ、磨きをかけてきた奈々ちゃんのスパイクは、長身のメアリーさんのブロックを物ともせず、矢のように相手コートに突き刺さった。
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