第793話 奈央のお仕事
☆奈央視点☆
今日の練習も終えて「皆の家」に戻ってきた私達は、夕食をいただいているわ。 亜美ちゃんと希望ちゃんは今日は今井家で食べてから戻ってくるみたい。 往復大変ねー。
今井君は家事出来ないから仕方がないんでしょうけど。
「あかんなぁ夕ちゃんは。 家事はある程度出来んと」
「あいつがやると何故かめちゃくちゃになるのよ。 掃除すれば散らかるし洗濯すれば洗濯物が増えるのよ」
「どういう原理やそれ」
「あはははは! 私でもそこまでひどくないわよ」
宮下さんが爆笑。 しかしそれを見た弥生はジト目になって宮下さんを睨む。
「あんさんは家事あんまやらへんやろ。 なんでウチがあんたの部屋の掃除せなあかんねん」
「ははは、助かってるわよ弥生っち」
「あんさんの部屋見てたらなんちゅうかイライラしてくんのや」
「弥生って結構大雑把そうに見えるけど潔癖症なの?」
奈々美の質問に弥生は首を振る。 私も弥生はどっちかって言うと雑そうなイメージを持っていたんだけど。
「弥生っちは潔癖ってより几帳面よ。 ね、渚っち」
「ですね。 部屋の家具とかもビシッと収まってないとあかんみたいです」
「へぇ」
「あー、たしかに! 大学受験前に弥生の実家にお世話になった時の弥生の部屋も今思えばそんなんだった気がするわ」
結構意外な事が知れたわね。 宮下さんの方はまぁ……うん、予想通りだわ。
「ちなみに宮下さんの部屋って?」
「あー、もうめちゃくちゃやでタンスは出っ張ってるわ、テーブルの位置はずれてるわ」
「良いじゃん住めればさー」
「あれ? 2人共仲悪い?」
「いや? 別に仲はええで? よう一緒に出掛けてるし。 せやけど性格は合わへんな」
「だねー」
ちぐはぐな関係みたいね。 まあ言うように仲は良いみたいだけど。
「まあ、美智香の部屋行ったらイラっとしてくるから掃除手伝うとき以外は入らへんけどな」
「きゃははは、面白い」
「ただいまだよー。 何が面白いの?」
「はぅ」
話の途中で亜美ちゃんと希望ちゃんが戻ってきたようだわ。 今井君は後はお風呂に入って寝るだけという状態にしてきたらしい。
「弥生と宮下さんの関係よ」
「んー?」
というわけで1から話してあげると。
「あはは、2人ってそんな感じなんだねぇ」
「はぅ」
東京組の貴重な話も聞けて中々有意義な夕食タイムだったわ。 やっぱり2人を呼んで正解だったわね。
◆◇◆◇◆◇
さて、入浴も終えて自室へ戻ってきた私。 早速メールチェックを行う。 西條グループ次期総帥の私だけど、少しではあるがお父様から任されている事業がある。 そういった関連のメールがないか確認するのが寝る前の日課よ。
「……これは後回しで良いわね。 こっちは急ぎか。 ……もしもし西條奈央ですわ。 メール拝見しましたわ。 えぇ、えぇ。 それですけど、すぐ資料をメールで送っていただけます? えぇ、お願いします」
まったく、資料なんて最初から添付しておきなさいよね。 手間なんだから。
来た資料を確認っと。
「ふむ……こんな機械導入する必要あるのかしらね? ちょっと工場視察にでも行きましょうかね。 ついでに亜美ちゃんと春人君も連れて行って勉強してもらうのも良いわね」
いずれは私と共に西條グループを支えてくれる存在である2人。 いや、亜美ちゃんからは確約を貰ったわけではないのだけれど。
「ふむ……明日の練習は午前中だったわよね。 亜美ちゃんと春人君に聞いてみて明日の午後から視察に行きますかね」
というわけで春人君には電話で了承を得る。 後は亜美ちゃんね。 亜美ちゃんの部屋へ向かい、直接話をすることにした。
◆◇◆◇◆◇
「えっ?! 私も?!」
「えぇ、どうかしら? 将来私の秘書になるんだったら経験しておいても良いと思うのだけど。 もちろん秘書になるつもりが無いなら……」
「あ、ううん。 それは大丈夫だよ。 オッケーだよ、明日ついていくよ。 服とかはスーツの方が良いのかな?」
「いえ、そこまでかしこまらなくても良いですわよー」
「らじゃだよ!」
「じゃあ明日の練習が終わってお昼食べた後で出発しますわね」
「うん」
これで2人も連れて工場視察へ行くことが出来るわね。 何だかんだ亜美ちゃんも秘書になる事は特にいやってわけじゃないみたいね。
◆◇◆◇◆◇
というわけで! 翌日のお昼──。
練習を終えた私は、私有車を出してもらい、亜美ちゃんと春人君を連れて工場視察へと向かう。 春人君には既に何回か付き合ってもらったこともあるので、割と落ちついた様子だけど、亜美ちゃんは初の体験で緊張しているようだ。
「そんなに固くならなくても良いですわよ亜美ちゃん」
「うん」
ふむ、やっぱりいきなりは辛いかしらね。 でも慣れてもらわないことには困るのも事実。
まぁ、亜美ちゃんならすぐにでも慣れるでしょう。
「視察に行く工場って何をしている工場なの?」
「医療器具なんかを作ってる所ですわよ」
「おお」
「結構大きい工場ですよ」
春人君は一度工場見学についてきたことがあったわね。
「医療関係だと結構消毒とかもうるさいんじゃ?」
「ええ、入る時は無菌服を着て消毒室で消毒してからじゃないとは入れませんわよ」
「おおー。 初体験でワクワクしてきたよ」
さっきまで緊張してたくせに、初体験となると急にテンションが上がる亜美ちゃん。 変わった子ね。
車を走らせて約40分程で目的の工場に到着。 亜美ちゃんは工場を見て「うわわ! うわわ!」と興奮気味。 大丈夫かしら?
「では行きますわよ」
「はい」
「うん」
というわけで保安の前で待っている工場長と合流。
「遠いところわざわざご足労いただき……」
「別に良いですわよ。 あ、そうそう、こちらの子ですが将来的に私の右腕になる予定の清水亜美さん」
「初めまして清水亜美です。 よろしくお願いします」
「で、昨日資料を送っていただいた新規の機械ですけど」
「はい、現在使用している物が老朽化で、そろそろ更新しようと思いまして」
「ふむ。 今使っている物を見せてくださる?」
「はい、こちらです」
という事で工場内へと案内してもらう。 亜美ちゃんは田舎者みたいにキョロキョロと工場を見回しているわ。 専用の服を着用し消毒をして中へ入って行く。
「おお、凄いねぇ」
「亜美ちゃん、はぐれないようにね」
「うん」
奥の方へと進んでいくと、工場長が足を止める。 どうやら目の前にある機会が今回更新したい機械のようね。 たしかに少し古いわね。 型番を見るに、昨日の資料は同シリーズの最新型かしら?
性能も格段に上がるみたいですわねぇ。 ふむ。
「最新型のようなハイスペックが必要な状況ですの? もう1つぐらい型落ちした物でもよろしいのではなくて?」
「どうせ導入するなら最新のものをと思ったのですが、再検討しろと言われるのでしたら」
「構わないわよ。 最新型を導入してください」
「え、いいんですか?」
「えぇ。問題ありませんわよ。 どうせすぐに型落ちになるでしょうし最新型でいきましょう」
「ありがとうございます。 それではそのように」
「頼みますわよ」
後は工場長に託して、とりあえず工場を後にすることにした。 亜美ちゃんは終始私と工場長のやり取りを見て勉強していたようだ。
「やっぱり奈央ちゃんは凄いねぇ」
「まだまだ、お父様ほどじゃないわよ。 私が任されてるのはまだまだ一部ですし」
「でもかっこよかったよ。 私も頑張って奈央ちゃんの右腕になるぞー」
「ははは、頑張ってください」
ちょっと気の抜ける感じで気合を入れる亜美ちゃんだけど、頼りにしてるわよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます