第787話 最後はのんびり

 ☆希望視点☆


 ボケねこショップでのショッピングも終わると、夕也くんが次の行き先を聞訊いてきました。 私はもう見るもの見たし満足したので、最後は「皆の家」でのんびりしようと思っていました。 その前に夕也くんは何処か行きたい場所は無いか訊いてみる。


「いや、特には無いぞ。 希望の行きたいとこに付き合うぞ」

「じゃあ戻って『皆の家』に行こう」

「あいよ」


 市内でのデートはこれにて終了。 後は「皆の家」でゆっくりと過ごそうと思います。



 ◆◇◆◇◆◇



 というわけでやって来ました「皆の家」。 ドアを開けるために鍵を差し込むとどうやら鍵は開いているようでした。


「誰か来てるみたい」

「ふむ。 どうする? 人いるなら別のとこにするか?」

「ん? 別に良いよぅ。 人がいた方が楽しいし」

「ま、希望がそう言うなら」


 誰が来ているのかは知らないけれどとにかく中に入るよぅ。


「おりょ? おー、希望ちゃんと今井君じゃーん。 今日はデートでしょー?」

「こんにちはですわよー」


 来ていたのは紗希ちゃんと奈央ちゃんでした。 紗希ちゃんはよく来ているらしい。 京都へ戻ったら来れなくなっちゃうからという事みたいです。


「うん。 最後はここでのんびりしようと思って」

「じゃあ私達お邪魔かしら?」

「うぅん、大丈夫だよぅ。  一緒にお話でもしよう」

「りょ! あ、麻美の部屋に麻美と渚も来てるわよん」

「受験勉強ですって」

「じゃあ邪魔しないよぅにしないと」

「そうだな。 2人も頑張ってるなぁ」


 ドタドタドタドタ!


「夕也兄ぃの匂いー! いたー!」

「麻美ちゃんっ?!」


 騒がしい音とともに嵐のようにやってきた麻美ちゃん。 どうやら夕也くんの匂いを感知して降りてきたらしい。 犬並みの嗅覚だよぅ。


「勉強は良いのか麻美ちゃん」

「ぬあっはっはー! 私は朝から来てやってるからちょっと休憩だー!」

「朝から? 凄い」

「私達は10時くらいに来たんだけど、その時には既に来てたみたいよん」

「なはは、7時からやってるー」

「渚は?」

「まだ部屋で勉強してるー。 そういえば希望姉、今日はデートでしょー?」

「もうしてきたよ。 もう今日はここでゆっくりだよぅ」

「おおー、私も勉強終わってゆっくりするー」

「あんたは余裕ねー。 渚なんて必死こいて勉強してんのに」

「渚もそこまで必死にならなくても大丈夫だと思うよー。 心配しすぎなんだよあの子ー」

「亜美ちゃんもそんなこと言ってましたわね」

「でも落ちると後がないって考えるとやれるだけやりたくなるのはわかるよぅ」

「落ちたら実家に戻る約束してるんだったか?」

「うん-。 絶対受からないとって気負ってるよー」


 渚ちゃんも結構不器用な子だね。


「せっかく夕也兄ぃ来てるし渚も呼んでくるー」


 言うが早いか、嵐のように走り去っていく麻美ちゃん。


「元気ねぇ相変わらず。 あ、コーヒーいる? 淹れてきますわよ?」

「お、じゃあ頼む」

「私もお願いだよぅ」

「了解ですわよ」


 奈央ちゃんにお願いして私達はソファーに腰を掛ける。

 紗希ちゃんは私達のデートの内容に興味津々のようで、根掘り葉掘り訊いてきた。


「どこ行ってきたの?」

「ボケねこの映画観て、ボケねこショップ行ってきたよぅ」

「おおー! 映画どうだった?」

「良かったよぅ! 今度一緒に行こう!」

「行く行くー!」


 私のボケねこ仲間紗希ちゃん。 大体2人でボケねこ関連のイベントに行ったりしている。 映画もまた観たいから、今度2人で行く約束したよぅ。


「本当にあれの何が良いんだよ……」

「今井君はまだわかんないの?」

「そぅなんだよぅ」


 というわけで、奈央ちゃんが淹れてきてくれたコーヒーを飲みながら夕也くんにボケねこの素晴らしさを説く。 途中から麻美ちゃんと渚ちゃんも加わったけど、中々ボケねこの素晴らしさが伝わらなかった。 なんであの良さがわからないんだろぅ?


「そうだ。 ボケねこショップで広告出てたんだけど、新キャラデザインを一般公募するらしいよぅ! 紗希ちゃんも応募してみよぅよ」

「おお! それいいわねー!」

「神崎先輩ならええ線行くんちゃいます?」

「やってみたら?」

「ボケねこの良さはよくわからんが応援するぜ」

「神崎先輩の作ったキャラ人気出たら凄いー」

「採用されるかわかんないけどいっちょやってみますかー」


 紗希ちゃんは鞄からノートを取り出して設定を練り始めるのでした。 


「にしても、せっかくのデートをこんなところで過ごすのもったいないですわね?」

「あはは、今日は急なデートだったから行先ほとんど決めてなかったし良いんだよぅ」


 もっとゆっくり計画してからちゃんとしたデートすれば良かった。 まぁ、デートしてもらえただけでありがたいよ。


「ま、亜美が特に何も言わないならまた誘ってくれれば良いぜ。 俺も空いてたらデートくらいは構わない」

「じゃあ今度私ともデートしましょーよー」

「私ともしろー!」

「わ、私かて」


 何故か他の子が夕也くんをデートに誘い始めて夕也くんも困り顔です。 本当にモテモテです。

 麻美ちゃんはわかるんだけど、彼氏の居る紗希ちゃんや、夕也くんとあってまだ2年ほどの渚ちゃんまでが夕也くんに惹かれるなんて。


「希望ぃ助けてくれー」

「あはは、頑張って」


 助けを乞う夕也くんだけど、ここは私も傍観側に回る。 夕也くんは「そんなぁ」とか言いながら麻美ちゃんと紗希ちゃんに両側から引っ張られる。 痛そうだけど大丈夫かな?

 渚ちゃんはさすがに弁えているのか、力ずくでの行動には出ていないよぅ。


「騒がしいですわねぇ」

「これぞ私達って感じだよぅ」

「希望ちゃんは私達の中でも一番静かじゃない」


 と、奈央ちゃんに言われてしまった。 そうなのかなぁ?



 ◆◇◆◇◆◇



 のんびりとした時間を過ごした私と夕也くんは「皆の家」を出て家に帰ることにしました。

 こんな簡素なデートでも私は結構楽しめるのです。 亜美ちゃんはデート1つでもきっちり計画したりしているみたいだけど、私にはああいうのは無理だなぁ。


「さっきも言ったが、亜美が特に何も言わないようならいつでも誘えよ?」

「うん。 一応毎回亜美ちゃんには伺いを立ててみるけど」

「まあそこは好きにしてくれ」


 夕也くんは私とのデート自体は普通にしてくれるということです。 多分、夕也くんの中では私への罪滅ぼし的な意味合いがあるのかもしれない。 私はもう気にしてないし後悔もしてないし、何より諦めたわけでもないのだけど。


「ねぇ夕也くん。 私も指輪ほしいって言ったらくれる?」

「ぬ?」

「ははは、さすがに無理だよね。  きっと亜美ちゃんへの指輪だけで予算大変だろうし」

「……何年かかっても良いって言うならまぁ」


 と、想像もしていなかった返答が返ってきた。


「は、はぅ。 私にもくれるの?」

「おう、後回しになっちまうが」

「えへへ、じゃあ何年でも待ってみようかなぁ」

「おう。 じゃあちょっと時間かかるけど待っててくれよ」

「うん」


 言ってみるものだなぁ。 亜美ちゃんの後になるのは仕方がないけど、楽しみが増えるのでした。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る