第771話 2日の夜

 ☆亜美視点☆


 2日目も夜に差し掛かってきた有馬旅行。 西條グループが経営するという六甲山頂の展望レストランで、美味しい神戸牛のステーキを食べるよ。

 肉厚でとても美味しそうなお肉だ。 奈央ちゃんは皆に合わせてそれぞれお肉のサイズやソースの種類を変えるように注文してくれたようだよ。


「きゃはは! 佐々木君と遥のステーキでっかいわねー」

「うおー! 西條神!」

「さすが奈央だな!」

「ふふ、それでは夜景を楽しみながらいただきますか」

「いただきます!」


 少食な私や希望ちゃんのお肉は、皆のより一回り小さめ。 ちょうど良いサイズだねぇ。 ナイフで切り分けて一口。


「んぐ。 ん! 柔らかくて美味しいねぇ!」


 家でもたまーにステーキ肉が安い時なんかには出すけど、やっぱりスーパーの安売り品とは何もかもが違う。

 ジューシーな肉汁が口の中で広がって、ソースとの絶妙なハーモニーを生み出しているよ。


「うめー!」

「佐々木! そっちのソースも試させろ!」

「おう! 蒼井の方も寄越せ!」


 と、大食いの2人は自分の分だけでは飽き足らずに、お互いの分をシェアし始めた。 食べ物の事になると息ピッタリである。 ある意味お似合いな気もするよ。

 実際にはありえない組み合わせではあるけど。


「亜美のはどうなのよ?」

「私のはあっさりソースだよ」

「ふぅん。 一口交換しましょ?」

「良いよ」


 私も仲良し奈々ちゃんと交換していただく。 奈々ちゃんのはオーソドックスなオニオンソースだ。 これもイケるねぇ。


「ねーねー、辺りが一気に暗くなってきて、下界の灯りが綺麗に見えてきたよー!」


 麻美ちゃんが窓の外を指差してはしゃぐ。

 私達も視線を窓の外に向けると、そこには綺麗な天の川のような光景が眼下に広がっている。

 想像していた数倍綺麗である。


「ほわぁ! 凄いわねー! あっちの方は大阪になるのかしら?」

「そうですわね」

「ロープウェイからでも見れそうね、希望?」

「はぅ……せっかく忘れてたのに」


 奈々ちゃんはまた希望ちゃんをイジってるよ。 帰りも希望ちゃんの気を紛らわせながら下らないとねぇ。



 ◆◇◆◇◆◇



 綺麗な夜景と極上の神戸牛ステーキを堪能した私達は、ロープウェイに乗り込みゆっくりと山を降りてまいりました。 希望ちゃんと渚ちゃんは相変わらずブルブル震えていたが、私や麻美ちゃんが話しかけ続けてあげる事で耐えていた。 この2人、今後1人で飛行機やロープウェイに乗ることになったらどうするんだろう?


「旅館に到着ー! なはは!」

「お疲れ様でしたわ。 少し部屋で休みましょ」

「ハムスターにエサやんないと……」

「マロンもお腹空かせてるかな」


 旅館へ戻って最初にやる事が可愛いペット達のお世話となる。 それが終わったら温泉に浸かって寝る。

 昼の間あれだけ温泉三昧したのにまだ浸かるのかと言われるかもしれないけど、浸かるのである。 汗かいたしね。


「マロンー。 キャットフードだよぉ。 お水も入れるねー」

「みゃうぅ」


 用意してあげると勢いよく食べ始めた。 相当お腹減ってるんだね。


「明日は朝に散歩行こうねー」

「みゃ!」


 喜んでる喜んでる。 せっかく旅行に来たんだからマロンだって温泉街の雰囲気を楽しみたいもんね。

 明日はお昼には有馬を発つという事なので、それまでは自由行動です。 とはいえ、昨日今日でこの辺の観光は済ませてしまっているので、見る所はもうそんなにない。 お土産屋さんをみるくらいだろうね。 多分帰る前に最後に温泉に浸かるだろうからその時間は確保しておかないといけない。


「バニラ達にもご飯上げないとー」


 ハムスター達もそれぞれの飼い主からご飯を貰って食べている。 皆飼い主に懐いてるねぇ。 麻美ちゃんのとこや奈々ちゃんのとこはハムスターが増えている。 紗希ちゃんの所も近々お見合いさせるって言ってたね。


「ペットって言えば奈央のとこのトラ達は元気?」

「元気よ。 とはいえ、去勢手術とかさせちゃってるから子孫を残してあげられないのがね……」


 と、ちょっと後悔しているみたい。 でも、近親交配になるリスクを考えれば仕方のない事だったということみたい。

 希望ちゃんもハムスターの近親交配には気を付けているもんね。


「こいつらは旅行に来てるとかそういうの理解してんのかね?」


 と、遥ちゃん。 さすがにハムスターにそこまでの頭は無いと思うけどねぇ。


「ゴン太ー? どうー?」


 と、頭の上に乗せたハムスターに問いかける紗希ちゃん。 紗希ちゃんのゴン太君はかなり躾されているらしく、紗希ちゃんの頭の上で大人しくしている。 頭だけじゃなくて肩や掌の上にのせても大人しくしているという。 可愛いものだ。


「マロンにも何か芸を覚えさせてみようかな?」

「みゃ?」


 この子も頭のいい子だからきっと色々覚えると思うんだよねぇ。 帰ったら早速何か教えてみよう。



 ◆◇◆◇◆◇



 さてさて、あれから時間が経って、お風呂にも浸かり今日はもう就寝なわけだけど、私は深夜にこっそりと起きて部屋を出てきています。 今日は奈々ちゃんもぐっすりなようで、上手く1人になることが出来ました。


「むふふ。 どうして1人で出て来たかというとぉ」

「お前なぁ……こんな時間に呼び出してどうしたんだよ」


 夕ちゃんとこっそり会う為である! この時間は露天風呂が混浴可能ということなので、夕ちゃんとゆっくりと温泉に浸かってお話しする為だよ。


「じゃ、行こうねぇ」

「はいはい」


 夕ちゃんと2人で浴場へと向かう。 ようやく人目を忍んでイチャイチャできるねぇ。

 脱衣所でパパっと服を脱いでまたもや温泉へ。

 良い感じに他のお客さんもいないね。 完全に2人きりである。


「旅行楽しかったねぇ」

「そうだなぁ。 何だかんだ楽しんだな」


 2人で肩を並べて湯に浸かりながら、今回の旅行について思い出しながら語り合う。 


「ちょっとしたら次は海水浴旅行だよ」

「そういえばそうだったな。 今年の夏は2部構成だったなぁ」


 帰って少し休んだら、次は1泊2日の海水浴が予定されている。 そちらはそちらで楽しみです。

 水着もまたまた奈央ちゃんが用意してくれるという事なのでそちらにも期待である。


「ね、夕ちゃん」

「んんー?」

「最近ご無沙汰だよねぇ」

「何がだぁ?」

「夜のほうだよぉ」


 と、言いながら夕ちゃんに抱きついていく。 他にお客さんもいないしやりたい放題である。

 夕ちゃんは「誰か来たらどうすんだ」と少し腰が引けているみたいだけど、私はもうスイッチ入っちゃってるのである! このまま露天風呂で襲っちゃうよ!

 

 結局私に抑え込まれた夕ちゃんは、抵抗虚しく好き放題にされるのでした。



 ◆◇◆◇◆◇



「ふぅ……」

「お前最初から企んでやがったな?」

「まぁねぇ」


 たまにはいいと思うんだよね。 特に最近はあんまりなかったし。 やっぱ家では希望ちゃんがいて中々難しいからねぇ。 こうやってうまく2人になれないと思ったようにイチャつけないのである。


「はぁ、まあいいけどよ。 場所ぐらいはもうちょっと考えようぜ」

「あはは。 私達って結構変なとこでしちゃうもんねぇ。 公園の茂みとか」

「……あれは思い出さないでくれ」


 久しぶりに夕ちゃんとイチャつけて満足だよ。 海水浴の時もちょっと狙ってみようかなぁ? なんてね。

 

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