第768話 混浴岩盤浴

 ☆夕也視点☆


 昼休憩に入った俺達は、フードコートへと走って行った宏太、遥ちゃんを置いて皆で館内のレストランへとやって来ている。

 とはいえ、団体用の席は無いようなので3人ずつに分かれてだが。

 俺は麻美ちゃんと渚ちゃんの2人と一緒に席に着く。


「2人は楽しんでるか?」

「うおおお、楽しんでるよー!」

「ほんま麻美は元気でついてくんが大変です」

「温泉来て疲れてちゃ世話ないねー! なははは!」

「あんたの所為やがな」

「まあ楽しんでるようだな」


 麻美ちゃんのペースについていくのは大変だろうが頑張れよ渚ちゃん。


「夕也兄ぃ達は岩盤浴もう行ったー?」

「いや、まだだな」


 俺達は基本的に湯船に浸かってのんびりしている。 五右衛門風呂で宏太を釜茹でにしてやろうとはしていたが。


「私達、この後行くんだけど、夕也兄にぃ達も一緒に行こーよー」

「岩盤浴は専用着で入るらしいんで男女混浴らしいですねん」

「そうだなぁ、宏太や春人に聞いてみるか」

「中は入ったら連絡取れないから別れる前によろしくー!」

「おうおう」


 じゃあ飯食ったら早速聞いてみるか。


「亜美達は入ったんだろうか?」

「ん-? 亜美姉達はわかんないね。 でもお姉ちゃんが好きだからもう行っちゃってる可能性が高いね」

「そうか。 まあ後で聞いてみるか」

「そうだねー」


 どうせなら皆でわいわいしながら入れればいいな。



 ◆◇◆◇◆◇



 と、思ったわけだが。 昼食後に亜美達に聞いてみると。


「私達はもう岩盤浴行っちゃったわよ」

「お昼前に梯子しちゃったよねぇ」

「色々あって良かったよぅ」


 と、亜美達のグループは麻美ちゃんの予想通りすでに岩盤浴エリアは回り終えているらしい。

 仕方がないな。


「いやね、本当はお昼に男子誘って一緒にって思ったんだけど、混んだりすると入れなくなるかもと思ったら先に消化したくなっちゃって」

「まあそういうことならしょうがないな」

「なはは、じゃあ私達は夕也兄ぃ達と岩盤浴楽しんじゃおう」

「せやな」

「はうぅ……」

「むむぅ、やられたねぇ」


 麻美ちゃんと渚ちゃんはしてやったり顔で言うのであった。 ちなみに男子グループは次は岩盤浴でOKという話でまとまったので、岩盤浴エリアのフロントで麻美ちゃん達と落ち合う事になっている。

 

「おーい、こっちー」

「おう」


 フロントの前ではすでに麻美ちゃんと渚ちゃんが待っていた。 今のとこ待ち時間なしで入れるということで軽く説明を聞いて専用着を借りていざ中へ。

 更衣室だけは男女別になっており、中でまた合流するという形になっている。


「よーし、じゃあ早速イクゾー!」

「元気だなこいつは……」


 宏太も麻美ちゃんの元気っぷりには少々呆れているようだ。 最初の部屋に入ると、春人はさっさと岩盤の上に寝転がり岩盤浴を始める。 マイペースな奴だなぁこいつも。


「よっと」


 というわけで俺達も岩盤浴を開始。 俺の両隣をすかさず確保する麻美ちゃんと渚ちゃん。 俺包囲網である。


「なはは」

「あったまるなぁ……」

「おー……」


 岩盤浴の原理はよくわからんが体がポカポカとして汗をかき始める。 これは好きな人は好きかもしれないな。

 麻美ちゃんもかなりリラックスモードになっているようだ。


「渚ー。 七星落ちたら帰っちゃうのー?」

「縁起でもないこと言うなやー……そやけど、大学落ちたら帰る約束やからなぁ……」

「じゃあ絶対受かってもらわねばだねー」

「言われんでも受かったるー」


 なんだかんだ言っても仲の良い2人だ。 お互い離れるのは寂しいのだろう。 大学に受かってまだまだ一緒に遊びたいという想いが強いようだ。


「ちなみに、こっちで大学受かったらこっちで就職先探すつもりなのか?」


 気になったので聞いてみる。


「うーん……まだそこまでは考えてないですねん。 そやけど、上手くいったらVリーガーにでもとは思っとるんですよ。 東京のお姉ちゃんのいるチームなんかええなぁとか」

「ほう」

「いいですねー……」


 話を聞いていた春人もその話を聞いて少々ふやけた感じに言う。

 中学生の頃は色々あって同じチームでプレーできなかったらしい。 今、日本代表として一緒にプレーできるのがとても楽しみだと語ってくれた。 その夢叶うと良いんだが。


「でも、話によると西條先輩もチームを作るかもって言ってるよ? もしそっちに誘われたらどうするのー?」

「それはそん時考えるで。 移籍とかもあるし1つのチームに拘らんでええし」

「なはは、渚との対戦も楽しみだー」

「ギタギタにしたるわい」


 この2人も良いライバル関係を築いているようだ。 同じチームであった今までは叶わなかったであろう真剣勝負か。

 亜美も大学の大会で、今までチームメイトだった皆との試合が実現してとても楽しかったと以前語っていた。

 

「夕也兄ぃと宏太兄ぃが1on1したらどっちが強いー?」

「比べるなよー。 夕也のが強いに決まってらぁ」


 こっちもしっかりと話を聞いていたらしく、岩盤に寝転びながらそう答える宏太。


「ほー。 佐々木先輩も凄い思うてたんですけど……」

「夕也は高2の冬の時点で全国のトッププレーヤーに名を連ねてたんだ。 凡プレーヤーに毛が生えたレベルの俺じゃ相手にならん。 春人なら夕也と良い勝負しそうだがな」


 そう言えば春人が帰って来てからは真剣勝負をした事が無かったな。 アメリカでバスケを続けていたって話だしレベルも上がってておかしくはない。


「どうですかね? 自信は無いですが」


 謙遜なのか本音なのかはわからないが春人はそう答えた。 今度機会があれば一戦やってみたいものだ。


「はぁ……そやけどあれやね。 受験勉強の疲れが取れていく感じや……遊んでる場合やないんやけど、リフレッシュも大事や言う先輩達の言葉がようわかりましたわ」

「だろ? 俺達も定期的に遊びに行ったりしてリフレッシュしてたからな。 亜美も言ってるが、根の詰め過ぎは良くないぜ」

「亜美先生は凄いんだぞ。 任せておけば大丈夫だ」

「はい」


 麻美ちゃんも渚ちゃんも、受験頑張れ。



 ◆◇◆◇◆◇



 岩盤浴を堪能した俺達は、ロビーで水分補給に入る。

 想像以上に汗をかいたからな……。 岩盤浴恐るべし。


「ぷはーっ! 温泉で飲むフルーツオレは美味しいー!」

「バカめ! 牛乳に決まっているだろ!」


 麻美ちゃんと宏太は腰に手を当てて飲み物を一気に飲んでいる。 まあわからんでもないが。

 ちなみに俺はコーヒー牛乳派だ。


「岩盤浴はこれで終わりだな」

「うむー。 ではまた集合時間にー!」

「ち、ちょっと麻美! 引っ張んなやぁ」

「あはは! あははは!」


 元気娘は渚ちゃんを引っ張って、物凄い勢いで走り去って行った。 まるで台風みたいだな、あの子は。


「麻美さんは凄いですね。 僕はあれにはついていけないですよ」


 と、マイペースな春人。 多分無理だろうなぁ。 タイプが違い過ぎるわな。


「んじゃ、俺達も次行こうぜ次」


 宏太が踵を返して浴場エリアへと向かう。

 集合まで時間もあるし、堪能させてもらうとするか。

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