あみ・だんふぁんす～幼馴染～

第698話 白山VS青葉丘

　☆亜美視点☆

　ついにやって来たよ準決勝戦。

　私達の対戦相手は、希望ちゃんを要する青葉丘教育大学。

　ここまでの試合で見る限りでも、かなり失点が少ないチームです。

　それも大体希望ちゃんの力で、希望ちゃんがコートにいる間に一気に勝負を決めてしまうほどの防御力を誇っている。

　控室でユニフォームに着替えて最後のミーティングです。

「結局ベスト４には元月ノ木のメンバーが散った４チームになったわね」

「あなた達、１人でどんだけチームの底上げするのよ……。　羽山以外は万年予選落ちが当たり前だったチームばかりよ？」

「あ、あはは」

　そのようである。　私達がチームに入っただけでベスト４になれるって、一体どうなってるのだろう？

「さて、コーチ。　今日の作戦どうしましょ？」

「うーん。　ここは今まで通り清水さん主体で攻めていきたいと思うんだけど、どう？」

「うーん……頑張ってみます」

　今日はあくまで試合と勝負を半々の気持ちで挑もうと思う。　希望ちゃんとの勝負には負けたとしても試合には勝っていくのが目標になってくる。

　具体的には、希望ちゃんとの勝負には拘らず、ブロックアウトを狙ったりして点を取っていくことも視野に入れていくという事。　もちろん、希望ちゃんとの勝負もしていくよ。

「とりあえず勝ちに行きましょう。　ここまで来たら優勝よ」

「はい！」

　◆◇◆◇◆◇

　コートへ出てくると、既に青葉丘がベンチに集まってコーチの話を聞いている。　

　あちらも今日は勝つつもりで来ていることだろう。

　よーしやるぞー。　おー！

　コートに入っていよいよ試合開始である。

　サーブは青葉丘の松本さんから。　松本さんのサーブが中々の威力を持ったサーブであるというのは、これまでの試合観戦でわかっている。　場合によっては私が拾いに行ってもいいかもしれないけど。

　パァン！

　さすがにこのコースを私が拾いに行くのは無理だ。　ここは先輩方にお任せして、私は攻撃の準備だ。

「はいっ！」

「ナイスレシーブ！」

　さすが先輩だ。　上手い感じにレシーブを上げてくれた。

　奈央ちゃんがセットアップする。

「よし。　まずは勝負だよ！」

　私は奈央ちゃんの高いトスに合わせて助走を開始する。

　大きくジャンプしてスパイクの体勢に入る。

　視線は希望ちゃんを捉える。　まだ動きはない。

　やっぱりギリギリまで私の動きを見てから動き出すようだ。

　腕を振り始めたところでようやく、希望ちゃんが小さくステップを踏むのが見えた。

　私が左側に打つのを読んできて右足で着地しようとしている。　じゃあ右に打つ！

「はぁっ！」

　パァン！

　ピッ！

「よし！」

「ナイス亜美ちゃん。　上手く行ったわね」

「うん」

　上手く希望ちゃんの動きを見てから逆を突くスパイクが成功した。

　ただ、本当に凄いよ希望ちゃん。　私のスパイクの体勢や腕の振りから完璧にコースを読んでいた。

　私も何とか見抜けたけど、本当に猶予が無い。

「さて、このままいくわよー」

「おー」

　しかし、ここはすぐに点を取られてしまう。

　相手エースの松本さんのバックアタックで、ブロックアウトを取られてしまったよ。

　ということで今度は相手さんのサーブです。

　パァン！

「オーライ！」

　これは私の真正面。　しっかりとレシーブを上げて奈央ちゃんに繋ぎつつ、私は攻撃の準備に入る。

　今度も勝負だよ。

「亜美ちゃん！」

「お任せだよ！」

　大きくジャンプして腕を振り被る。

　希望ちゃんを見ながら腕を振る。　ブロックの腕はボールの３０ｃｍ下で、ブロックの意味を成していない。

　今度はストレートに打つ気で腕を振る。　すると希望ちゃんもステップに入り、左足で着地しようとするのが見えた。

　なので、咄嗟に手首だけを返して無理矢理クロスへと打つ。

「てや！」

　パァンッ！

「はぅうう！」

「うわわっ？！」

　希望ちゃんは左足で着地する瞬間左膝を曲げて、右足で先に着地するように調整、そこから無理矢理左方向に跳んで手を伸ばしてきた。

「ナイス雪村さん！」

「フ、フェイント？！」

　希望ちゃんは左足で着地して右に跳ぶと見せかけて、右で着地して左に跳んできた。

　私がした希望ちゃん対策の更にその対策をしてきたよ。

　早くもこの試合は、お互いの対策が回ってしまい、ここからは化かし合いが始まってしまった。

「まさか、あんな芸当を見せてくるなんて。　思った以上に化け物じみてますわね、希望ちゃん」

「うん……どうしよ。　このまま勝負すれば泥仕合になりかねないけど」

「いいんじゃないの。　勝負しても。　バックは私達先輩に任せなさい」

「せ、先輩」

「別にこの大会に人生かけてるわけじゃないし、負けたら負けたで仕方ないってね」

「それに、次のローテーションで雪村さんはいなくなるわ。　とりあえずここは次で決めましょう。　んで、次の雪村さんとの勝負で負けても雪村さんがローテーションでいなくなれば楽になる」

「わかりました」

　勝負と試合を半々でっていうのは元から決めていたことだし、希望ちゃんをコートから下げて点を取りに行く方針でとりあえず行く。

　なので、ここは希望ちゃんと勝負せずにブロックアウトを取りに行って何とか点を取る。

　さらにその後のラリーでは相手の松本さんに決められて、ここで希望ちゃんがベンチに下がる。

「……」

「亜美ちゃん。　不本意かもしれないけど、ここは切り替えてね」

「うん」

　正直に言うと悔しい。　これは完全に私が希望ちゃんとの勝負から逃げた形になる。

　つまり、序盤のこの攻防は私の完敗という事だ。

　ここで点差をつけて、中盤終盤で絶対に希望ちゃんに挑戦するよ。

　◆◇◆◇◆◇

　そこから５点まで開けて８－３でテクニカルタイムアウトに入る。

「ふぅ……如何に希望ちゃんの壁が厚いかが良くわかるわね。　このまま一気に試合を決めてしまっても良いんじゃないの？」

「それは考えてないよ。　絶対に希望ちゃんにリベンジするんだから」

「ま、そう言うと思ったわ」

「コーチいいですか？」

「構わないわよ。　ただし、勝負するからには絶対に勝つのよ」

「はいっ！」

　コーチも私と希望ちゃんの勝負を承諾してくれた。

　よーし。

　タイムアウトを終えてコートに戻る。　戻ってすぐのプレーでスパイクを決められるも、その後のプレーからまた連続得点を重ねて結局希望ちゃんが帰ってくる頃には１５ー７という点差になっていた。

　これなら希望ちゃんとの勝負に専念できるだけの余裕があるよ。

「よし！」

「いきますわよ、亜美ちゃん」

「うん」

　サーブを先輩が拾い、私が攻撃に移る。　

　最大ジャンプをして希望ちゃんの動きを見て……。

　着地を片足から両足着地のスプリットステップに切り替えてきた？　これじゃあ着地足で跳ぶ方向を読む方法が使えない。

　ええい、じゃあストレート！

「てや！」

　パァン！

「はぅ！」

　私がストレートに打つのを読んで、スパイクの方向へダッシュしてきた希望ちゃん。

　あのタイミングでも追いついて……。

「はぅ！」

「ナイスレシーブ！」

「くっ……」

　希望ちゃん、思っていたよりもレベルアップしてる。　最後の夏大会の時からどれだけパワーアップしてるのよ……。

　バレーボールから離れてたのに謎である。