第681話 4人で

 ☆亜美視点☆


 今日は5月14日の土曜日です。

 大学もお休みだし、夕ちゃんもアルバイトは入れていないとの事。

 なーのーでー!


「夕ちゃん、早く早く」

「急かすな急かすな」


 夕ちゃんとデートをします。 えへへ、久しぶり……なんだけど、今日のデートは残念ながら2人っきりというわけじゃないのです。


「奈々ちゃん達待ってるよ」

「大丈夫だ。 どうせ宏太が寝坊してるからまだ待ち合わせ場所にはいない」

「そんなのわかんないじゃーん」


 今回のデートは奈々ちゃん、宏ちゃんのカップルとのWデートの予定です。

 Wデート自体は結構前に約束をしていたんだけど、受験やなんやで今まで出来ていなかったんだよね。

 で、この間奈々ちゃんが家に泊まって行った時に、今度の休みにでもということで話をして実現したというわけです。

 夕ちゃんはまだ準備中。 待ち合わせは11時で、駅前のレストランでお昼を食べてから本格的にデート開始予定となっている。

 今の時間は10時57分です。

 もう遅刻確定です。


「もう、大人なら10分前行動、5分前集合だよ」

「まぁまぁ、慌てんなって。 よし、行くか」


 ようやく夕ちゃんの準備が完了したということで待ち合わせ場所に急いで向かう事にした。



 ◆◇◆◇◆◇



 11時5分。 待ち合わせ場所のいつも合流している十字路へとやって来たけど。


「な、言っただろ?」

「むぅ……皆ルーズすぎるよ。 宏ちゃんなんかはもう社会人だよ? ぷんぷんだよ」

「ま、気長に待とうぜ」

「しょうがないねぇ」


 そうして待つ事10分。 宏ちゃんの首根っこを掴みながら歩いてきた奈々ちゃんに苦笑しながら、4人でのWデートがスタートするのでした。


「ごめんごめん。 このバカが寝坊してね。 昨日あんだけ言ったのに」

「うるせぇなぁ。 疲れてんだよ俺はよぉ」

「あはは、お仕事お疲れ様だよ」


 宏ちゃんは日々ペットシッターとしてのお仕事を頑張っている。 今日はお休みがという事でWデートが実現したわけです。


「さて、とりあえず先にお昼よね」

「うん。 駅前レストランだね」

「うむ。 起きてから何も食ってないから早く食いたいぜ」

「お前が寝坊するのが悪いんだろ。 自業自得だ」


 まあ、その通りなんだよね。 宏ちゃんもこれには反論できないようです。

 しっかりしてほしいものだよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 駅前のレストランでお昼を食べ終えた私達は、電車に乗り込んで市内へと向かう。

 今日のデートは、まずアミューズメントパークで遊ぶよ。

 ボウリングにビリヤード、卓球と遊べるコーナー盛りだくさん。

 体を動かそうという事である。


「えへへへ」

「嬉しそうだな亜美」

「亜美は大勢で遊ぶのが好きだものね」

「デートでもそうなのか?」

「うん。 楽しいじゃない」


 私は何事も楽しいのが一番だと思っている。 人数が多いと出来る事も増えて楽しみも増えるというものである。


「ほう、俺と2人デートは楽しくないと」

「そんなこと言ってないじゃない……もう意地悪だねぇ。 いちゃいちゃ」


 電車の中でこんな会話をしながら夕ちゃんにいちゃつく。 周りから見ればバカップルにしか見えないと思う。 現に奈々ちゃんと宏ちゃんも他人のフリで知らんふりである。

 むぅ、バカップルでもいいもんねぇ。


「恥ずかしくないのかお前は」

「よく見かけるし別にぃ」

「見てるこっちが恥ずかしいっての」

「だなぁ」


 と、呆れられながらも目的地まで夕ちゃんにくっついたまま離れない私なのでした。



 ◆◇◆◇◆◇



 さてさて、アミューズメントパークに就いた私達は早速スポーツコーナーへとやって来たよ。

 まずはビリヤードで軽く遊ぶことに。


「ナインボールでチーム戦で良い?」

「良いんじゃないか?」

「じゃあ、夕也と亜美チーム、私と宏太チームでまずやってみましょっか」

「了解」

 

 というわけで、ビリヤードを始める。

 チーム内のプレーヤ-は1球ごとに交代して交互に打つ。 後は通常のナインボールと同じという事にしたよ。


「よーし負けないわよ。 ブレイクはどうする?」

「普通にバンキングで決めたら良いと思うよ」

「どっちが打つ?」

「うちは亜美に任せるぜ」

「じゃあこっちも奈々美で」


 というこうとでバンキングは私と奈々ちゃんで行う。

 バンキングっていうのは、2人のプレーヤーが並んで、ヘッドクッション側からボールを弾いてふっとクッションに当て、戻ってきたボールがよりヘッドクッションに近い方がブレイクショット権を得るというものだよ。


「せーの」


 コンッ


 同時にボールを弾く。 強すぎず弱すぎずの威力で打ち出されたボールは、フットクッションに当たり手元へと戻ってくる。

 やがてボールの勢いが完全になくなり止まる。

 より近くまで戻ってきたのは……。


「はい、私達のブレイクからね」

「あぅ、夕ちゃんごめーん」

「構わん構わん。 ブレイクからパーフェクトで決められさえしなきゃ何とでもなる」

「はん。 決めてやるから覚悟しろよ」


 ボールをセットしてゲームスタートだよ。

 ブレイクショットを打つのは奈々ちゃん。 白ボールを置いてキューを構える姿はとても様になっていてかっこいい。 ハスラー姿も似合いそうだよ。


「……」


 コンッ!!


 力強く撞かれた白いボールが、セットされた的球に向かって勢いよく転がっていきぶつかる。

 玉突きの要領でセットされたボールが四方に散らばり転がっていくよ。


「6番と8番ポケットに入ったね」


 ブレイクショットで的球がポケットに入った場合は、ブレイク側が連続してプレーすることが出来る。

 今回はチーム戦ということで、プレーヤーは宏ちゃんに替わるよ。


「1番は何とかなりそうだな。 よっと」


 1番ボールと手球とポケットのラインはほぼ一直線。 ただ次に狙う2番ボールとの位置関係を考えると、手球の位置を調整したいところだろう。

 さて宏ちゃんのショットは?


 コンッ


 打ち出された手球は1番ボールとぶつかり、1番ボールはそのままポケットに吸い込まれるように落ちていく。

 そして手球にはわずかにバックスピンがかけられていたらしく、1番ボールにぶつかった後は手元にゆっくりと戻ってきている。


「おお、ナイスショットだよ宏ちゃん」

「ふん、余裕だぜ。 この位置からなら2番沈められるよな?」

「ま、やってみるわ」


 ということでプレーヤーが奈々ちゃんに替わるよ。


「ふむ……ちょっと薄く擦らないとダメそうね」


 手球と2番ボールの位置、ポケットの位置を見ながらラインを予測する。

 見た目的にもかなり難度の高いショットだと思う。 特にこの後の3番ボールを狙う為にも位置調整したいだろうしね。


「……この辺かしら」


 コンッ


「あぁ、入んないかぁ」

「ぷぷぷ、残念だねぇ。 よーし次は私の番ー」

「むかつくわねぇ」


 さてさて2番はこのまま薄く横に当てればポケットに入るね。 そこから上手くクッション使って3番も沈められそうだよ。

 あ、そうそう、ビリヤードなんだけど、これも昔夕ちゃんに教えてもらったんだよ。

 今じゃ夕ちゃんと変わらないぐらいの腕前です。


「よっ」


 コンッ……


 まずは2番をポケットに沈めてクッションボールで3番のボールも狙う。


「ナイスショットだ亜美」

「えへへ、チューしていいよ」

「あほか」


 と、デコピンされてしまうのでした。 照れちゃって可愛いね。

 Wデートまだ続くよ。

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