第634話 卓球大会in小樽
☆亜美視点☆
私達は、今日の観光を終えて早めに本日宿泊予定の宿へとやって来た。
中々大きな温泉旅館みたいだ。
昨日と同じく、団体用の大部屋を取っているとのことで、フロントで鍵を貰った奈央ちゃんを先頭に、ズラズラと並んで部屋を目指して移動中です。
「おお、すぐそこは海なんだねぇ」
「本当だ」
ちらっと窓の外を見ると、海が見えていた。
さすがに人はいないようである。 砂浜に雪積もってるもんね。
「今日の夕飯も海の幸かしら?」
「その筈よー」
昨日の夕飯はとても美味しい海鮮料理だった。
お昼もお寿司を食べたし、海の幸三昧である。
「ここね」
奈央ちゃんが立ち止まり、部屋番号と鍵の番号を照らし合わせる。
な、なんだか立派な扉だね。
奈央ちゃんが鍵を開けて部屋に入っていくのを、後からついて入る。
「うわわ、凄いオーシャンビューだよ」
部屋に入るとまず目に飛び込んでくるのが、大きな窓一面から覗く海の景色であった。
「凄いー!」
「暗くなると灯台とかの灯りで綺麗に見えるらしいわよ」
荷物を置きながら奈央ちゃんが説明してくれた。
その景色も楽しみだね。
「ここにも大きな液晶テレビあるんだな」
「これマッサージチェアーかしら?」
窓の外の景色に目を奪われがちだけど、部屋内の設備なんかもかなり整えてあるようだ。
奈々ちゃんが座っているマッサージチェアーもだし、カラオケの機械なんかもある。
「こんな旅館あるんだな」
「旅館の一室とは思えないですね」
春くんが言っている事もよくわかる。 ちょっとしたVIPルームである。
◆◇◆◇◆◇
さて、現在の時間は17時。 まだ夕飯の時間でもないし、お風呂の時間でもない。
何もする事がない時間である。
「これでよし」
隣では、麻美ちゃんがノート型パソコンを取り出して、デジカメから写真を取り込んでいるところである。
麻美ちゃんはコンピューターに強いね。
私は小説書くのとゲームするのぐらいにしか使えないよ。
「何してるのよ麻美?」
暇を持て余した奈々ちゃんが、麻美ちゃんの肩に顎を乗せてノートパソコンを覗き込む。
仲良いねぇ。
「渚からさ、北海道旅行の写真を送ってくれーってさっき連絡があったんだよー」
渚ちゃんかぁ、今頃は京都の実家かな?
「本当はついて来たかったみたいだけど、3年生の卒業旅行だから遠慮しちゃったみたいだよー。 京都の実家に帰るのも断れなかったぽいー」
「そうか。 残念だったなー渚ちゃん」
横でボーッとしていた夕ちゃんが急に声を出す。
話聞いてたんだ?
「また皆でどっか行けば良いのよ。 いくらでも企画するわ」
奈央ちゃんはそう言った。 奈央ちゃんには本当に感謝である。
「にしても、遥と佐々木君遅いわねー? ジュース買いに行くのにどこまで行ってるのかしら?」
紗希ちゃんはマッサージチェアーで肩をマッサージしながら何か言ってるね。
現在、宏ちゃんと遥ちゃんの大食いコンビは、ジャンケンに負けて2人でジュースを買いに行っている。
かれこれ15分ぐらい経つけど、本当にどこまで行ってるんだろう?
「案外あの2人で浮気とかしてたりして」
とか紗希ちゃんがまた訳の分からない事を言い始めたよ。 あの2人がそんな関係になるところなんて、カエルがヘビを丸呑みするぐらいあり得ない話だよ。
「無いでしょ」
「無いよぅ」
「ねぇなぁ」
「あり得ないわ」
「ですね」
皆も同じ意見なようだ。 ただ、2人は色々と似たとこもあるし、息は合うと思う。 仲も悪くはないしね。
そんな話しで盛り上がっていると、件の2人がジュースを持って帰って来るのだった。
そして、帰って来るや遥ちゃんが口を開く。
「卓球台があったから卓球大会やろうぜ!」
また急な……とは思いつつも、ちょっと面白そうだなぁと思う私。
しかし、今からだと夕飯の時間が来てしまうので、卓球大会は食後にしようという事になったよ。
参加者は私、奈々美ちゃん、紗希ちゃん、奈央ちゃん、遥ちゃん、麻美ちゃんの6人。
男子3人と希望ちゃんは不参加で、観戦に回るとの事だよ。 やれば良いのにね。
◆◇◆◇◆◇
夕飯は伊勢海老やサザエ、ウニといった海鮮料理、色々なお刺身が盛り付けられた海鮮丼等、今日も大変美味しい物であった。
毎日こんな物ばかり食べていたら、舌が肥えて仕方ないよ。
そして食後は予定通り、卓球大会を行う事になった。
大会は1回戦はトーナメント方式、決勝はリーグ戦という形になったよ。
最初の試合は紗希ちゃんと奈央ちゃん。
11点の1セットマッチ、開始だよ。
「奈央って卓球も強いの?」
「まあ、見てりゃわかるよ」
と、遥ちゃん。
とりあえず見てみよう。
サーブは奈央ちゃんからとなった。
コンッ!
奈央ちゃんお得意、ドライブサーブで試合開始。
紗希ちゃんはそのサーブを難なくリターンする。
スカッ……
コン……コン……
「え?」
紗希ちゃんのリターンした球に対して奈央ちゃんがラケットを振るも、何故か空振りした。
「きゃはははは!」
「むきー! 卓球はやった事が無いのよー!」
「あらら、これは意外ね」
「本当だよ」
奈央ちゃんは何でもこなせると思ってたけど、卓球は初心者という事らしい。
私もそうだけど、基本的にやった事のないスポーツとかはやっぱり出来ないのだ。
奈央ちゃんがバレーボールを始めた頃のように。
だけど、そこはやっぱり天才奈央ちゃん。
バレーボールも短期間でマスターして見せたように、この卓球も試合の中でどんどん上達していく。
「さ、さっきまで初心者同然だったのに、もう普通にラリーしてるわよ?」
「なははー、やっぱり西條先輩は化け物だー」
「人間ですわよ!」
「喰らえー! メテオストライク卓球バージョンー!」
と、紗希ちゃんお得意の必殺技の名前を叫びながら強烈なスマッシュを放つ。 これを奈央ちゃんが拾えずに試合終了。 奈央ちゃんも後半追い上げたが、逆転には至らなかった。
「次やったら絶対勝てるのに!」
「きゃはは、次やったら負けるけど次は無いのよー。 奈央は敗北者ー」
と、珍しく奈央ちゃんに勝負事で勝った紗希ちゃんが煽り倒している。
奈央ちゃんは顔が真っ赤になっていた。
「なははー! じゃあ次の試合は私とお姉ちゃんだー」
「容赦しないわよ麻美ー?」
と、次の試合がもう始まりそうである。
奈々ちゃんと麻美ちゃんの姉妹対決。 実はこの2人、昔はよく旅館に泊まると卓球対決をしていた。
戦績は覚えてないけど、たしか奈々ちゃんの方が少し勝ち越していたはず。
「いくよー! ちょいさー!」
相変わらず掛け声が謎な麻美ちゃんからのサーブ。
経験者顔負けのカットサーブで、奈々ちゃんを揺さぶる。 しかし奈々ちゃんは気にせずにフォアで振り抜き返球。
「良い勝負するなあの2人」
「うん。 奈々ちゃんが勝ち越してるけど、卓球の腕なら多分互角じゃないかな?」
ガンガンパワーで攻める奈々ちゃんと、テクニカルに攻める麻美ちゃんの卓球の試合は中々見応えがある。
最後まで互角の勝負を繰り広げた2人だったけど、最後に勝ったのは姉の奈々ちゃんであった。
「よし」
「ぬわー、負けたー!」
ガッツポーズを見せる奈々ちゃんと、悔しそうな麻美ちゃんなのでした。
さて、次は私と遥ちゃんだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます