第620話 支笏湖観光

 ☆亜美視点☆


 北海道旅行初日、飛行機で北海道へやって来た私達は、観光バスに乗って移動し千歳水族館を観光し終えた。


 支笏湖や千歳川に生息する生き物達を見学した私達は、次に支笏湖を観光する為に再度バスで移動中である。

 移動時間は40分程との事。

 現在は奈央ちゃんがその後の予定を説明してくれているよ。


「こほん! それではスケジュールを話しますわよー。 支笏湖の観光を終えた後は、札幌にある今日宿泊予定の旅館に向かいます。 チェックイン後はまたバスに乗って移動して札幌観光をしますわよ」

「おー、札幌!」

「夕方には旅館に戻って早め夕食を堪能しますわ。 そしてその後ちょっとバスで出かける予定がありまーす。 お風呂は帰ってからね」

「はーい」

「それでは支笏湖に到着するまでゆっくりしててね」


 という事で、今日は札幌で宿泊予定の様だよ。

 どんな旅館なんだろう? 楽しみだねぇ。

 夜に出かけるっていうのも気になるよ。

 まあ、それはそれとしてまずは支笏湖観光だよ。


「亜美ちゃん亜美ちゃん。 支笏湖についての蘊蓄聞かせてー」


 紗希ちゃんが前の席をぐるっと回転させて、私の前に突然姿を現す。

 びっくりしたなぁもう。


「支笏湖の蘊蓄ねぇ。 基本的な情報ぐらいしか知らないよ?」

「良いわよー。 見る前にある程度知識あった方が良いかなーって」

「なははー、私も聞かせてー」


 後ろから麻美ちゃんも顔を出してくる。 


「しょうがないねぇ。 ではでは……」


 一度咳払いをしてから、私は支笏湖についての持ち得る知識を2人に話し始めた。


「支笏湖は北海道は千歳市にある湖で、寒い北海道の真冬でも水面が凍結する事がほとんど無い不凍湖だよ。 その理由は、湖底の方に温かい水が存在してて水面の温度を上昇させるからだって話だね」

「ほうほう」

「火山の噴火や火砕流によって出来たカルデラに水が溜まって出来たカルデラ湖だよ。 摩周湖や洞爺湖と同じだね。 水の透明度も高くて、日本一透明度の高い湖に選ばれた事もあるよ」

「さすが亜美姉! 何でも知ってるー!」

「あはは、知りたがりも度が行き過ぎるとダメだねぇ」

「きゃはは、ありがとう亜美ちゃん! 日本一透明な湖かーきっと綺麗なんでしょうねー」

「ちゃんと見えるかはわかんないけどね。 この時期は観光遊覧船も出てないだろうし」

「ふふふのふー」


 私と紗希ちゃんの話を聞いていたらしい奈央ちゃんが、不敵な笑い声を上げた。


「たしかにこの時期は遊覧船は出ていません……が! 私を誰だと思っているんですの?」

「あぅ?」

「私が無理を言って、特別に貸し切りで遊覧船を出してもらえるように話をつけてありますわ」

「うわわ?!」

「はぅ?!」

「あんたは本当に……」

「きゃはは、やりたい放題ねあんたー」

「なははー!」


 奈央ちゃんは本当に無茶苦茶するねぇ。

 でもまあ、ありがたいね。


「他にも色々見て回るからお楽しみに」

「はーい」

「楽しみだね夕ちゃん」

「そうだな。 せっかく北海道まで来たんだ、目一杯楽しもうぜ」

「うんうん」


 夕ちゃんに久しぶりに頭をくしゃくしゃされて気分も良くなるのであった。



 40分程バスが走った先でバスは停車。

 私達は下車して少し歩く。

 周りの雪は綺麗に除雪されていて、ちゃんと観光客が歩きやすくなっている。

 歩いて行くと、見えて来ました支笏湖!


「おー! これが支笏湖!」


 麻美ちゃんがパタパタと走り出して柵の前に立ち、支笏湖を眺めている。

 私達も遅れてついていく。


「綺麗なエメラルドグリーンに見えるわね」

「透明度の高さと中心部と岸辺りの水深の差が大きいから、見る場所によって色が青く見えたりするらしいよ。


「ほう」

「写真撮りましょう」

「はーい」


 皆で支笏湖の看板を囲む様に立ち記念撮影。


「よし、じゃあ遊覧船の方へ行きましょう。 話はついていますわ」


 という事で、奈央ちゃんについて行き遊覧船乗り場へとやって来ました。

 奈央ちゃんは受付へと進み、話をしている。


「はぁ? 何を言ってますの? 先日ちゃんと話を通してあるはずですよ?」

「しかし、この時期には普段運行していない物を、お客様だけ特別にというわけには……」


 んん? どうも話の雲行きが怪しいようである。

 遊覧船、乗れないのかな?


「はぁ……良いです事? 私の手に掛かればこんな観光組合の一つや二つどうにでも出来ますのよ? 良いから船を出しなさい」

「しかし……」

「しかしもおかしもありません。 こちらは大金を支払って貸し切ったのよ? 責任は私が取るから早くなさい」

「はぁ……上に連絡とってみます。 お待ち下さい」


 奈央ちゃんがどんどん高圧的になっていき、最後には組合の人が上層部の人に電話で聞いてみるという事になった。


「あいつ、バイトか新人ね。 上から話を聞いてなかったみたいだわ。 上に確認したら話は通ってるから乗せてあげなさいだって」

「あ、あはは……」

「奈央ってば、見た目子供なのに怒らせたらマジ社会的に消されるレベルのプレッシャーかけるわね。 怖いわー」


 紗希ちゃんは、出会った頃の奈央ちゃんを思い出したと笑いながら言うのだった。


 私達は、乗り場のお兄さんに頭を下げながら遊覧船に乗せてもらう。

 お兄さんも仕方なしといった感じで遊覧船に乗り込み、船の操舵を請け負ってくれるみたいだ。


「すいません、わざわざありがとうございます」

「いえ。 こちらの報連相も出来ていなかったので……」

「もういいですわよ」


 奈央ちゃんも既にいつも通りに戻っている。

 

 船はゆっくりと進み出す。

 船の上から支笏湖を見ると、なるほど綺麗な水である。

 凄い透明度だよ。


「皆、船底の方は水中の様子が見れるわよ」


 と、奈々ちゃんの声が下の方から聞こえて来た。

 なるほど、そういう構造になってるんだね。


「夕ちゃん、希望ちゃん、下行ってみよ?」

「おう」

「うん」


 2人と一緒に下の方へ降りてみると、既に皆が窓に張り付いて外を見ていた。

 

「綺麗だー……」

「本当にね……」

「写真写真」


 皆、窓の外の水中の景色に見惚れている。

 私も窓から外を眺めてみる事にするよ。


「うわわ」


 そこには想像を遥かに上回る光景が目の前に広がっていた。

 薄いコバルトブルーの世界がそこにあった。 近くには魚の群れや柱状節理と呼ばれる独特の地形が見える。

 本当に幻想的で美しい世界だ。


「こんなの初めて見たねぇ」

「ぅん。 こんなの中々見れないよね」

「だな」


 しばらくの間、船底からの景色を堪能した後は上に上がり、湖面の方を見てみる。

 上から見た支笏湖の景色は支笏ブルーと呼ばれるように、青みがかったように見えている。

 これはこれでまた綺麗な光景である。


「こんなとこで釣りとか出来たら最高なんだがなぁ」


 と、宏ちゃんが言うのもわかる。 それぐらいに綺麗な湖なのだ。

 ただ、残念ながら釣り道具を持って来ていないらしい。


「くそぅ」

「釣り道具貸しましょうかー?」


 と、操舵席の方からお兄さんの声が聞こえて来た。

 どうやら、お兄さんも釣りを嗜むらしく、この船に道具を隠してあるらしい。

 上層部には内密にとの事らしいよ。

 宏ちゃんは有り難く道具を借りて、暫く船を止めてもらい釣りを堪能し始めたのであった。

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