第619話 北の大地観光
☆夕也視点☆
さて、北海道の地へやって来た俺達は、早速バスに乗り最初の目的地となる千歳水族館とやらにやって来ている。
「ここはどういう水族館なのアミペディア?」
「……ぷいっ」
恐らくアミペディアと呼ばれて拗ねているんだろうな。 奈々美は苦笑しながら謝り再度亜美に質問を投げかける。
「千歳水族館はね、日本最大級の淡水水族館なんだよ。 特に何と言ってもサーモンゾーンが見ものだよ。 日本最大級の淡水水槽に稚魚から成魚までのサケが大中小の水槽に分けて入れてあって、サケの成長していく姿を見られるんだよ」
「ほぉ、サケか。 美味いよな」
「食べたらだめですわよ?」
何でも食べ物にしようとする宏太に対して、奈央ちゃんがすぐさま忠告する。
いくら宏太がバカでも、水族館のサケを取って食ったりはしないだろう。
「とりあえずはそのサーモンゾーンとやらに行くの?」
「うん。 エントランス入ってまっすぐだよ」
どうでもいいけど、亜美は何でそんな詳しいんだよ。
そりゃペディア言われるよな。
「ん? どうしたの夕ちゃん?」
「いや、アミペディアさすがだなと思ってな」
「ぷいっ」
やはりペディアと言われるのはあまり好まないらしい。
俺は笑いながら謝って許してもらうのだった。
さて、エントランスから通路を直進して、サーモンゾーンへとやって来た。
亜美が先程言っていた通り、大中小3つの水槽の中にはサケの稚魚から幼魚、成魚と言った風に成長過程ごとに分けて入れられている。
「おー、ちっちゃいの可愛いー!」
「本当ねー!」
「大きいのは怖いよぅ!」
そういえば、希望と紗希ちゃんは高1の時に水族館で大はしゃぎしてたっけな。 そこに麻美ちゃんも加わり更に騒がしさが増している。
「私達が目にするサケって切り身になってるのだから、こうやって泳いでるサケ見るの初めてだわ」
「そうだなー」
「俺もサケを釣り上げたことはねぇな」
「宏ちゃん釣り名人なのに?」
「名人じゃないが。 渓流釣りのサケってのは遡上してくる短い期間でしか釣るチャンスがないんだよ。 しかも場所も限定されてる」
「そなんだ?」
宏太のサケ蘊蓄を聞きながら、色々な種類のサケの仲間を鑑賞。 サケって言っても色んな種類がいるんだな。
一通りサーモンゾーンを堪能した後は、苔の洞門とか呼ばれているジオラマを抜けて次なるゾーンへ。
「ここは何のゾーンなの?」
「ここは支笏湖ゾーンですわよ。 北海道の美しい湖、支笏湖内を再現した水槽よ」
奈央ちゃんが解説を始めてくれた。 ナオペディアもあるらしい。
支笏湖ゾーンの水槽には、支笏湖に生息する色んな生物が遊泳している。
宏太曰く、マスやイトヨ、ハゼの仲間と言った魚や、小さなスジエビが泳いでるのが見えるとのこと。
こいつも詳しいなおい。 バカペディアと名付けよう。
「綺麗な水槽ねー」
「支笏湖は、日本の湖の中でも一二を争う透明度を誇る湖だからね。 再現とはいえこんな綺麗なのはなかなかお目にかかれないよ」
「この水族館を出た後は本物の支笏湖にも行く予定だから楽しみにしててね」
と、奈央ちゃんが言うと、亜美は「やった!」と喜びはしゃぐのだった。
日本有数の湖か。 たしかに楽しみだな。
「私の水槽もこれぐらい綺麗にしたいねぇ」
「難しいだろうなぁ」
「だねぇ」
亜美も海水魚を飼い始めたが、まだまだ初心者の域のためここまでの景観を作り出すことはできないだろう。 徐々に慣れて行けばいいと思う。
「さ、次のゾーンに行きますわよー」
「はーい」
支笏湖ゾーンを後にした俺達は、次なるゾーンへと向かう。
次のゾーンはその名も体験ゾーンというらしい。
タッチプールという水槽で、魚と触れ合えるという事だ。
「この中に手を入れれば良いの? 魚逃げたりしない?」
と、麻美ちゃんが心配そうに訊くと、生き物博士な宏太が心配無いと答えた。
「こういう所の生き物は人間から餌付けされるのに慣れてんだ。 こうやって手を握り締めてゆっくり水に手を入れてやれば……」
そう言って手を水に入れると、あっと言う間に宏太の手の周りに魚が集まって来て、順番に手を突き始めた。
「おおー」
「な? 皆もやってみ? ゆっくりだぞ?」
言われて女子達が一斉に手を水に入れ始める。
すると、先程の様に魚達がわらわらと集まって来て、皆の手を突いたりしだした。
「うわわ! くすぐったい!」
「はぅー! 何か凄いよぅ!」
「へぇ、中々面白いわね」
「きゃはは」
「なるほどなぁ」
「魚達の方から寄ってきますのねー」
「なははー、ちょっとこそばゆいー」
しまいには水面でパシャパシャと魚が跳ね始めて、水が掛かる事も。
「はぅ、濡れた」
「きゃははー」
それでも楽しそうな女子達であった。
タッチプールから程近い場所に、もう一つ水槽がありそこには何やら小さな水鳥が泳いでいるのが見てとれた。
「宏ちゃん、あれは?」
生き物博士の出番だ。
「んー。 こいつはカイツブリか?」
「さすが佐々木君。 その通りよ」
と、看板を指差して奈央ちゃんが言う。
そこにはたしかにカイツブリゾーンと書かれていた。
やるな宏太。
「こいつは主に水上で活動する鳥だな。 ほとんど陸には上がらないんだぜ? 足も歩くことより泳ぐ事に特化したものになってんだ」
「ほう」
「可愛いねぇ」
「あ、水に潜ったよぅ!」
「凄っ! 潜水して泳いでるわよ」
「鳥って飛ぶだけじゃないのねー」
「だなぁ」
「色々な種がいるものねー」
珍しい水鳥を見て、皆また一つ生き物の不思議を知るのだった。
体験ゾーンを抜けて地下へ進むスロープへとやって来た。
「ここは?」
「ここからは千歳川ロードですわよ」
「何それ?」
「その名の通り、千歳川という川を上流から下流にかけて、コンパクトに分けたもの。 ミニチュア千歳川ってところね。 百聞は一見にしかずですわ、行きましょう」
とりあえず見てみろという事らしいので、奈央ちゃんに続き千歳川ロードとやらに足を踏み入れる。
まず最初に現れたのは源流・上流辺りを再現した場所のようだ。
「なるほど、上流には上流にすむ魚達が放されてるのか」
「そういう事ですわよー」
「へぇー、流域によっている魚が違うんだねぇ」
「はぅ、サケさんのお仲間さんかな? 怖い顔してるよ」
「本当にサケの顔って怖いわねー? 怒った時の奈央にそっくりよ」
「紗希? 何か言ったかしら?」
サケの様な顔をして紗希ちゃんの方を振り向く奈央ちゃん。
いや、サケみたいな顔って何だよ……。
「別に何もー」
紗希ちゃんは口笛なんかを吹きながら、シラを切っている。 仲が良いんだなぁ。
上流から中流、下流とゆっくり歩きながら千歳川ロードとやらを見て回った。
コイやらなんかは中流にいるんだなぁ。
魚ばかり見ていて、宏太は釣りがしたくなって来たとウズウズし出すのだった。
千歳川ロードを見終えた俺達は、千歳水族館を後にして次なる目的地である支笏湖へ向かう事になった。
バスへ乗り込みまたもや移動中だ。
広い広い北海道旅行。 この先何が見られるのか楽しみだな。
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