第581話 結論は?
☆奈々美視点☆
昨晩、ちょっと色々あって宏太と仲違いしてしまった。
今はちょっと冷静になってだいぶ落ち着いたけれど。
とはいえ、昨日はあんな事言っちゃったし、どう決断するかはあいつに任せる事にする。
もし万が一あいつが私と別れると言うなら、私はそれに従うつもりでいる。
今朝、とりあえず朝ご飯を食べるために広間へやっては来たが、宏太の姿はそこには無かった。
「佐々木君はどうしたのかしら?」
「あの、『食べるだけが楽しみ』みたいなのが朝ご飯食べに来ないなんて、これは大事件ねー」
「あはは……私、宏ちゃんの部屋に朝ご飯持って行くよ。 先食べてて」
亜美が宏太の分の朝食をお盆に乗せてダイニングを出て行った。
亜美には世話になりっぱなしね。 それを言ったらあの子は「そんな事ない」って言うんでしょうけど。
しばらくして亜美が戻ってくると、心配していた奈央が宏太の様子を聞いた。
「佐々木君はどうだった? 環境変わって体調崩したかしら?」
「あ、ううん。 大丈夫そうだったよ。 さっき起きたとこみたい」
「そう。 それなら良いですけど」
亜美は今起きたとこだって言ってたけど、多分嘘でしょうね。
ただ、私と顔を合わせ辛いって事でしょう。
「あ、奈々ちゃん。 宏ちゃんが後で部屋に来てくれって」
「ん……わかった」
あいつ、もうどうするか決めたのかしら?
案外早かったわね……。
「何々? 朝っぱらからイチャイチャすんの?」
と、紗希がニヤニヤしながらそんな事を言う。 この子はすぐそういう事ばかり言うんだから。
今、私と宏太はそれどころじゃないってのよ。
「部屋は防音構造にはなってるけど、程々にね」
「いや、違うっつーの……」
「違うんだー?」
とりあえず無視して朝食を食べるのだった。
◆◇◆◇◆◇
朝食を食べ終えた私は、亜美に言われた通り宏太の部屋へやって来た。
少し緊張しながらドアをノックすると、すぐにドアの向こうから宏太の声が聞こえてきた。
「奈々美か? 入ってくれ」
「は、入るわよ」
一度深呼吸して宏太の部屋に入る。
「来たか……まあ、そこ座れよ」
「え、えぇ」
宏太に促されてテーブルの前に座る。
うーっ、緊張するわ。
「奈々美」
「はいっ」
緊張しすぎて声が上擦る。
宏太はそんな私を見て「ぷっ」と笑い出した。
こ、こいつー。
「悪い悪い。 さて、話を始めるか」
「そ、そうね」
さて、どういう結論を出したのかしら?
「ゆりりんの事は亜美ちゃんから聞いた」
「私もちゃんと言ったんだけど」
「あれなぁ。 ボソボソ声で肝心なとこが全然聞こえなかったんだよ」
「うっ……そうだった? ごめんなさい……」
「まあ、それは良いとして、俺も悪かった。 さすがにお前と別れてゆりりん選ぶなんてのは、冗談でも言っちゃいけなかったな。 すまなかった」
「いえ、私もちょっとヘラっちゃって……なんかごめんなさい」
「ゆりりんはたしかに可愛いぜ? もちろん俺はゆりりんが大好きだ」
「うぅ……」
それは私なんか、ゆりりんに比べれば可愛いくもないけどさ。
「ゆりりんが俺を好きだって聞いてよ、やっぱり正直嬉しいからな」
「でしょうね。 あんな子に好きだなんて言われたら、大体の男は喜ぶわよ」
それは私も異論はないわ。
ゆりりんや亜美みたいな、可愛いの権化みたいな子には私は敵わない。
「でもな。 やっぱり俺はゆりりんの一ファンなんだよ。 恋人だとかそういうポジションを本気で望んじゃいないんだ」
「そ、そうなの?」
「おう。 だからまあ。 お前と別れてどうのとかそういうつもりはなくてだな……」
「う、うん……」
「まあ、お前だけなんだよ。 俺には」
「そ、そう。 そうよね、当たり前よね」
と、声を上擦らせて応える。
強がって見せたが、内心めっちゃ安心している。
一気に脱力したわ。
「と、いうわけで今まで通りだ。 よろしく頼む」
「し、しょうがないわねぇ。 本当に私がいないとダメなんだから」
「どの口が言ってんだよ。 わんわん泣いてた癖に」
「はぁ? 泣いてないし。 何言ってんのよまったく」
と、ようやくいつもの調子に戻ったわ。
本当に良かったわ……。
「じゃ、勉強しに行きましょ」
「おう」
◆◇◆◇◆◇
☆亜美視点☆
皆で勉強していると、奈々ちゃんと宏ちゃんが広間にやって来た。
どうやら丸く収まったようだよ。 良かった良かった。
「あ、やっと佐々木君降りて来たわねー」
「おう、おはよう神崎。 今日も可愛いな」
「きゃはは、わかってんじゃん。 でも気持ち悪いからやめてねー」
紗希ちゃんは笑いながら何気にひどい事を言う。
他の皆は奈々ちゃんと宏ちゃんの間に起きたことは何も知らないので、広間の雰囲気はいつも通りだ。
「で、2人で何してたのよー? 私に話してみー?」
「何もしてないわよ。 ちょっと話してただけ」
「えぇっ、つまんないわね」
紗希ちゃんってば、いつでも頭の中ピンク色だねぇ。
性欲強すぎるんじゃないだろうか?
「はいはい。 良いから勉強に集中しますわよー」
奈央ちゃんが呆れたように言う。 というか、大体皆は集中している。
特に夕ちゃんと希望ちゃん、遥ちゃん、春くんはこんな中でも集中して勉強している。
さて、私も勉強しなきゃね。 とりあえず心配事は無くなったし、いつも通りだね。
そういえば、夕ちゃんにも訊いてみようかなぁ?
ゆりりんみたいな可愛い子に告白とかされたらどうするか。
もちろん夕ちゃんは迷わず私を選んでくれると思うけどねぇ。
余裕だよ余裕。 よーし、後で夕ちゃんに訊いてみよ。
◆◇◆◇◆◇
勉強、夕飯、入浴を済ませて、何故か紗希ちゃんの身体測定という名の胸揉みもされた後、寝る前に夕ちゃんのお部屋にやってまいりました。
もちろん、先程思い付いた事を訊いてみる為だ。
「ふんふーん♪」
コンコン……
ドアをノックして夕ちゃんが出て来るのを待つ。
少しすると、夕ちゃんがドアを開けて顔を覗かせた。
「ん? 亜美か。 どうした?」
「およ? 亜美ちゃんじゃーん」
「何で紗希ちゃんがいるのかな?」
さっきまで私とお風呂入ってたと思うんだけど?
私がキッチンで牛乳を飲んでいる間に先にやって来たんだろうか?
本当に油断ならないねぇ。
この間は、彼氏君の誕生日プレゼントのデザインを夕ちゃんに決めてもらいたいとかいう理由があったから許したんだけど、今日は特に何も聞いてないんだけど。
「きゃははは、バレてしまいましたかー。 いやいや冗談よ。 2人で数学勉強しようって話ししてたのよね」
「おう。 せっかく来たんなら亜美もどうだ?」
うーん、部屋に来た目的とは違うけども、紗希ちゃんを夕ちゃんの部屋に2人きりで置いておくのはとても危険だからね。
「そだねぇ。 2人とも私が見てあげよう」
「お! 亜美ちゃんが見てくれるなら百人力ってやつね! 何せあの遥の成績まで上げちゃったんだから」
「いやいや。 遥ちゃんが頑張ったからだよ」
「ま、入れよ」
夕ちゃんに訊くのはまた今度にしますか。
「勉強終わったら3人で夜の保健体育の勉強もしようねー」
「しないよ!」
2人にさせておいたら本当に危なかったよ。
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