第572話 皆の手応えは?

 ☆亜美視点☆


 本日はついにやって来ました、大学入学共通テスト当日。

 私達一行は、全員近場の大学である七星大学の試験会場で受ける予定である。

 ただ、私達は受ける教科や科目がバラバラなので、試験部屋はバラバラになる。

 私は奈央ちゃんと同じ部屋だね。


 さて、共通テストで1番心配なのは遥ちゃんだ。

 他の皆も余裕があるわけじゃないけど、慌てず実力を出せばまず問題無いはずだ。

 遥ちゃんも、今は今井家に泊まり込みで猛勉強し、短期間でそこそこ学力アップを果たしている。

 それが自信にも繋がっており、昨日一昨日と勉強をお休みしてリフレッシュした事で、コンディションもバッチリのようだ。

 

「遥ちゃん。 落ち着いてゆっくりだよ」

「うん、わかってるさ。 ありがとう亜美ちゃん」


 親指を立てて前に突き出す遥ちゃん。

 心配は要らなさそうだ。


「では皆、頑張りましょう!」


 奈央ちゃんの一言で、自分達の受験会場となる講義室へ向かって解散した。

 私は奈央ちゃんと同じ講義室。 受験番号も隣だからから席も隣かな?


「いよいよだね」

「たかだか共通テストよ。 本番は2月末の本試験」

「あはは、そうだね。 お互い頑張ろ」

「当然。 亜美ちゃんも将来の私の秘書として恥じない結果を見せてね」

「善処するよ」


 講義室に入り席に着くと、奈央ちゃんは予想通り私の席の隣であった。


「よいしょ。 さてさて頑張るぞっと」

「ですわね」


 席に座ってゆっくりと時間が経つのを待つ。

 ここまで来たらもう足掻いても意味は無いので、落ち着いて待つのみである。



 ◆◇◆◇◆◇



 共通テスト開始の合図があり、私達は問題を解いていく。

 マークシートだから、解答欄がズレないように要注意である。

 皆は大丈夫だろうか?


「……」


 ふむふむ。 順調に解けているよ。

 この分なら私は問題無いだろう。 奈央ちゃんもスラスラと解いている雰囲気だ。


 遥ちゃんはどうだろう?



 ☆遥視点☆


 私は皆とは離れ、1人になっている。

 心細いとは思うが、そんな事を言っても仕方がない。

 亜美ちゃん先生から教わった事を思い出して、落ち着いてゆっくりやるだけだ。


「……」


 カリカリ……


 わかる、わかるぞ。 普通に解ける!

 あれもこれも亜美ちゃんが教えてくれたやつだ。

 スラスラとペンが進むぞ。

 おっと、落ち着いて落ち着いて……。

 マークシート方式の時は、解答欄のズレに注意しろって亜美ちゃんが言ってたな。

 数問事に確認しろって話だったっけ。


「……」


 よし、OKだ。 どんどん解いていこう。



 ◆◇◆◇◆◇



 ☆亜美視点☆


 そうこうして、あっという間に共通テストは過ぎて行った。


 私は特に問題という問題も無かったと思う。

 後日、ネットで試験の解答があるとの事なので、自己採点をしてみようと思う。

 それはさておき、志望大学に願書も提出しないとね。


「奈央ちゃんはどうだった?」

「大丈夫よー。 この私があんな簡単な問題に躓くわけないですわ、おほほほ」

「あはは、さすがだね」


 他の皆はどうだっただろうか? 早く合流したいところである。


「それより、明日からは私の別荘で合同勉強合宿よ。 準備しておいてね」

「うん。 粗方終わってるよ」


 そう。 明日から私達受験組は、奈央ちゃんの別荘に集まって勉強合宿を始める。

 長期に渡り共同生活をしながら猛勉強する事になる。

 本試験の方は大学によって日程が違うけど、卒業式までは皆で過ごすことが決まっている。

 ただし、紗希ちゃんだけは試験前に京都へ移動してしまうのだけど。

 まあ、これ試験が終われば帰ってくるみたいだけど。


「あ、来た来た」


 キャンパスへ出てくると、先に出て来ていた皆が待っていた。

 皆早いねぇ。


「んじゃ、帰りましょうか」

「そだねぇ」


 皆集合したので、ゾロゾロと帰宅を開始する私達。

 とりあえずは一区切りが付いて、肩の荷が少し降りた感じがする。

 とはいえ、この後すぐにまた勉強漬けの日々が始まるんだけどね。


「そだ、遥ちゃんどうだった?」

「おー! めっちゃいい感じだったよ! 亜美ちゃんにマジ感謝だ!」

「あはは。 今度自己採点してみようね」

「おー!」

「遥の癖に手応え良かったなんて生意気よねー」

「ふふ、良いじゃない」

「他の皆は手応えどうだったの?」


 とにかく皆の出来が気になる。

 奈々ちゃんと夕ちゃんも日々の成果は出せたと思うとの事。 これも自己採点待ちだね。

 紗希ちゃんと希望ちゃんも手応えはありということみたいだ。 春くんは英語は余裕だったが国語に少し苦戦したらしい。 ただ、それでも大丈夫だろうということみたい。


 これなら皆大丈夫かな?



 ◆◇◆◇◆◇



 翌日──。


 私達は、予定通りに奈央ちゃんの別荘で勉強合宿する為に、西條家自家用車で移動している。

 明日にはインターネットで解答が出るので、皆で自己採点する事になった。

 なので、今日は1日お休みして試験疲れを癒そうという事になっている。


 さて、今回お世話になる西條家別荘は、割と私達の街の近くにあるらしい。

 駅近なので交通の便も悪くないみたい。

 別荘って言うから、今までみたいな山とか海の近くを想像していたけど、長期滞在するのに適した場所にする為に普通に街中に建っている別荘にしたらしい。

 別荘というよりは別宅といった感じだろうか?

 何件そういう物を持っているのかとかはツッコんじゃいけないんだろうね。


「しかし、俺まで良いのか?」


 今回受験とは関係ない宏ちゃんがそう訊いてきた。


「佐々木君は資格試験の勉強をすれば良いじゃない? そっちの試験も3月にあるんでしょう?」

「まあそうだが」

「それに、何かと男手がある方が助かる事もありますのよー」

「ふむ。 まあ、力仕事ならやるが」

「頼りにしてますわよー。 ということで、着いたら早速買い出しの荷物運びしてもらおうかしら。 9名分おかず、頑張って持ってね」

「お、おう」


 宏ちゃん、上手く使われてるなぁ。 でも、奈央ちゃんの言う通り宏ちゃんも資格試験の勉強があるから、勉強には集中してほしいと思う。


 車は西條邸を出てほんの30分ほど走ったところで、これまた高級住宅街へと入ってきた。

 私達が暮らす街からは少し離れた程度の場所ではあるけど、こんな場所があるんだねぇ。

 そんな高級住宅街の中の一軒の屋敷に、車は入って行った。


 西條邸に比べれば幾分小さいその屋敷も、私達からすればとてつもない大きさである。

 私達9名が約1ヶ月間共同生活することになるお屋敷。

 あ、ちなみに今井家のお掃除等は、西條家別宅と同時にハウスキーパーさんがしてくれることに。

 大事な海水魚さん達は、西條家謎の技術を用いて、水槽ごと後日お屋敷に運ばれてくるみたい。

 本当に謎である。

 マロンや皆のハムちゃんは、一緒に車で移動してきている。

 いやいやとても楽しい1ヶ月になりそうな予感がするよ。

 そうそう。週末には麻美ちゃんや渚ちゃんも遊びに来ると言っていた。

 夕ちゃんに会いに来るんだろうねぇ。

 本試験までの間、ここで頑張って勉強するよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る