第567話 共通テスト目前
☆亜美視点☆
春高が終わり、麻美ちゃんと渚ちゃんが千葉へ戻ってきて、またまた騒がしい日常が始まる。
「おー! これがマロンちゃん!」
「かわええなぁ」
京都から帰って来てすぐに我が家へやって来た2人は、私の愛猫マロンを一目見てデレデレになる。
隣には希望ちゃんのハムスターのケージも置いてあり、ちょっとした癒し空間になっている。
「良いなぁー!」
「やなー」
2人は希望ちゃんからもらったハムスターを飼っているが、猫にも興味があるらしい。
渚ちゃんは実家に犬さんがいるんだっけ。
「猫かー、欲しいなぁー……でもお父さんもお母さんもダメって言うだろうし……いっそ家を出てペット可の部屋を借りて……」
麻美ちゃんはとんでもない事を口走っている。
本当にやりかねないのがこの子の怖いところだよ。
「せやけど、何でまた急に猫を?」
「急っていうか、実はずっと欲しかったんだよね。 でも、実家にいた時は両親がダメって言っててねぇ」
「亜美姉は小さい頃から猫好きだったからねー。 猫見るとキャラが変わるんだよねー」
「あ、あはは……」
皆に言われるんだけどそんなにかなぁ?
「亜美ちゃん。 そろそろ勉強会の時間だよ」
手提げ鞄片手に希望ちゃんがそう言う。
もうそんな時間か。
「マロン、バッグに入ろうねぇ」
私の言葉に反応して、マロン用のバッグに自ら入っていくマロン。
はぁん、可愛いねぇ。
「賢いー!」
「麻美より頭良いんちゃう?」
「それは無いよー!」
2人はそんなやり取りで騒いでいる。
やっぱり騒がしくなるね。
2人も拠点について来るとのこと。
和室でマロンと遊ぶらしい。
◆◇◆◇◆◇
私達は勉強する為に、拠点のリビングに集まり問題集を並べる。
「あれ、マロンは?」
「和室で麻美ちゃん達と遊んでるよ」
「えー、後で見に行こっと」
紗希ちゃんもマロンに夢中になってしまったらしい。
「それは良いですけど、大学入学共通テストはもう目の前ですわよ」
「来週の土日かぁ」
遥ちゃんの言う通り、今年の大学入学共通テストは来週の土日に予定されている。 あと13日だ。
私達は皆受ける予定であり、共通テスト後に各大学へと出願、後にそれぞれが各大学で個別に試験を受ける事になる。
「亜美と奈央は問題無いわよね」
「そんな事ないよー?」
「そうですわよ。 私も亜美ちゃんも、自分の頭の良さはわかってるけど、だからって油断したりはしないですわよ」
その通り。 私も奈央ちゃんも、決して調子に乗って手を緩めるような事はしない。
常に最善を尽くすよ。
「だから問題無いって言ってんのよ……」
と、奈々ちゃんは呆れたように言った。 奈々ちゃんも、私達の事をよく理解した上での発言だったみたい。
「紗希や希望はどうなの?」
2人はそこそこ偏差値の高い大学を受験する。
共通テストでのボーダーもそこそこ高そうだ。
とはいえ、2人も成績はかなり良い方だし……。
「わかんないけど、実力がちゃんと出せれば大丈夫だと思うわ」
「私もぅ」
との事らしい。
奈々ちゃんと夕ちゃんも、受験する大学のレベルと今の成績を考えれば大丈夫だろう。
春くんも私達と同じ大学を受験予定だけど、ギリギリ何とかなるだろうという話だ。
春くんも成績は良いけど、受ける大学が大学だけにねぇ。
となると、やっぱり1番心配なのは……。
「遥ー? どうよ?」
「う、うむー。 皆のおかげでかなり出来ようになったから、緊張してミスらなきゃ多分……」
とは言うものの、少し不安そうな遥ちゃん。
たしかに直近の定期テストや実力テストの結果を見る限りでは、成績は上がってきている。
皆で勉強している成果はあるようだ。
遥ちゃんの受ける体育大学は、そこまで難関ではない為、ボーダーもそこまでは高くはないだろうと思うけど。
「念には念を。 この1週間は遥ちゃんにビシバシ勉強教えていくよ!」
私はどこからともなく、必勝鉢巻を取り出して額に巻き、伊達メガネを取り出してかける。
「出た、かてきょー亜美ちゃん」
「形から入るの好きね」
「ビシバシだよ!」
「ひぃっ!? お手柔らかにお願いします!」
腰が引けてびびっている遥ちゃんに対して、私は熱血指導を開始するのであった。
「さて、私達は私達で勉強勉強」
「だなぁ」
遥ちゃんとマンツーマンで勉強体勢をに入った私を無視して、他の皆は自分達の勉強を始めるのだった。
私は遥ちゃんに、ひたすら問題集を解かせていく。 そうやって、苦手な場所を炙り出して徹底的に叩き込むのである。 ビシバシだよ。
「そこ間違えてる」
「ひぃ」
「やり直し!」
「はいー!」
今日の私はスパルタだよ。 遥ちゃんが大学落ちるとこなんて見たくないからね。
「やり直ーし!」
「うぅ……はい」
ビシバシだよビシバシ!
◆◇◆◇◆◇
時間一杯きっちりマンツーマン指導を終えて、本日の勉強会は終了。
ふむ、中々良い指導が出来たんじゃないかな。
「ぐす、私ゃ疲れたよ……」
頭から煙を噴かせながらテーブルに突っ伏す遥ちゃん。
ちょっとビシバシ行き過ぎたかな?
「亜美さー、恋愛の方もそんぐらい厳しくいけないわけ?」
「え? 頑張ってるつもりではいるけどまだ甘いかな?」
希望ちゃん達が夕ちゃんとデートしたがってるけど、私はダメだと言い、最近は許してない。
とても偉いと思う。
「まあ、マシにはなったんじゃない? ってぐらいね」
「はぅ。 でも今はデートとかしてる時期じゃないし、私もあまり言ってないだけだよぅ」
希望ちゃんがそう言うので思い返してみると、たしかに最近はあまり夕ちゃんとデートがしたいとは言わないね。 受験前だからか。
「ビシバシだよ」
「意味わかんないわよー亜美ちゃん」
「遥、いつまで倒れてるの? というか、亜美ちゃんから教えてもらったこと、ちゃんと覚えてますの?」
「だ、大丈夫……しかし、佐々木は良くこの家庭教師に耐えたな」
「佐々木君はあれで頭良いのよ。 やる気無かっただけ」
の、奈央ちゃんの言う通りで、宏ちゃんはやる気さえ出せば人並みの点数は取れるレベルがあったのだ。
私はそのやる気を出させて上げたまでである。
「共通で躓くわけにはいきませんからね」
と、春くん。
大学には浪人なんてものもあるけど、この地獄の様な1年をまた過ごさない為に、皆揃って目標の大学に受かりたいところだ。
皆、バレーボールの実業団入りを蹴ってまで夢を追っているんだし、結果を出したいところである。
「遥ちゃん、明日もビシバシいくからね」
「頑張る……」
少々疲れ気味に応える遥ちゃん。
ちょっとやり過ぎたかなぁ?
◆◇◆◇◆◇
最後は皆でマロンと戯れてから、それぞれ家に帰った。
私達も、お隣の今井家に帰宅して夕飯中。
「実際、遥ちゃんはどうなんだ?」
遥ちゃんの心配をしているらしい夕ちゃんが、そんな事を聞いてきた。
「んー……実はちょっと危ないかも」
「はぅ?! そうなの?!」
今日一日見た感じだけど、間違えた箇所がいくつか以前に教えた問題だったのだ。
つまり、少し古い知識が抜け落ちているのである。
これを何とかしないと、危ないと私は考えている。
これは付きっきりで教えなきゃいけないかな?
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