第547話 色々なイベント
☆奈々美視点☆
今日は奈央の家で開かれるクリスマスパーティーに参加してるわ。
ドレスに着替え終わった私達は、今まさにパーティー会場となっている大広間へと到着したところ。
「うわわ、相変わらず凄い人が一杯だよ」
「本当だな。 テレビで見たことある人ばっかだぜ」
「ふふふ、皆さまはこちらの友人専用席ですわよ」
と、奈央に案内されて少し離れた場所にあるテーブルへと連れて来られた。 去年と同じ場所ね。
「うおお、ご馳走だな」
「だなー!」
遥と宏太は早くも涎を垂らしている。 この2人は食べる事となったらこれだ。
こんな場で恥ずかしいわね本当に。
「じゃあ、適当に座ってて。 そろそろパーティー始まるから。 私はまだ挨拶済んでない人に挨拶してくるから」
「はーい」
また挨拶回りに向かった奈央を見送って、私達は適当に席に着いた。
ざっと見たところ、去年もいた芸能人や大物演歌歌手が来ているわ。 ゆりりんこと姫百合凛も来ている。
たしか宏太が大ファンなのよね。 まぁ、今をときめくトップアイドルだし可愛いものねぇ。
「今年は音羽奏もいるね」
「麻美ちゃん、それはしーっだよ」
「なはは」
「大変ねー亜美ちゃんも麻美も」
2人とも小説作家として活動しているけど、その正体は編集者の担当さんや一部の信頼できる人にしか話していないそうよ。 大変よねぇ本当。
「2人とも、いつか世間にカミングアウトするのかい?」
「どうだろう? わかんないねぇ」
「だねー。 カミングアウトするにしてもまだまだまだ先の話になりそー」
「騒ぎ大きくなりそうだものね」
音羽奏は今世間でもかなり注目度の高い小説作家となっている。 今月出た新作もかなりの大ヒットのようで、亜美は「これはもうウハウハだよ」と言っていた。
そんな亜美は高校バレー界では知らない人はいないほどのプレイヤーでもある。
二つに世界で名が売れてしまったので、この子が音羽奏だとカミングアウトしてしまった時の騒ぎの大きさは想像もできないものとなるだろう。
それに加えて来年にはワールドカップで日本代表になっている可能性も高いしね。
「俺もとんでもない彼女が出来ちまったもんだな」
「あはは、そだねぇ」
「私もこんなお姉ちゃんがいて誇らしいやら怖いやらだよぅ」
正直言って亜美はもう一般人の枠内には収まっていないような気がするわよね。 やっぱり化け物だわこの子。
「人間だよ」
「何で私の心の声に反応すんのよあんた……」
「読心術だよ」
「嘘でしょ……」
「あははは、うんうん、冗談。 そんなこと出来たら本当に化け物だよ」
と、明るく笑っている幼馴染だけど本当かしらね?
さて、席に座りながら奈央が挨拶回りをしている姿をじーっと見ているわけだけど、小学生かと見間違う様なチンチクリンな女の子の前に頭を垂れる大物たちの姿を見て、ちょっと面白いなぁと思った。
西條グループって凄いのね本当に。
「あれも大変よね。 お偉い様方に挨拶回りとか内心で面倒臭いって思ってるはずよー」
「それを表情に出さずにニコニコとしてんだもんなー。 奈央は良くやってるよ」
「あんた達は付き合い長いものね。 やっぱりそういうのわかるんだ?」
「まあねー」
私達5人もお互いの事は何となくわかったりするし、付き合いの長さって大事ね。
しばらく待っていると、本日の司会であるテレビでもおなじみの大物司会者がマイクを持ち、壇上に上がった。
「えー! あ! あ! これマイク入ってる? あ、そう。 あれ、君髪切った? ははは……じゃあ、そろそろ西條家様主催クリスマスパーティー始めてもよろしいかな?」
「よろしいともー!!」
テレビで良く見るアレを間近で見られるなんてね。
あの司会者も元気よねー。
「さて、私達もいただきますか」
パーティー開始の合図で、私達もテーブルに用意されたご馳走に手をつけていく。
「んぐんぐ。 この肉美味いな。 高級牛か?」
「まあそうでしょうよ」
「奈央ちゃんの家だからねぇ。 全部高級食材に間違いないよ」
普段なら絶対に口に出来ない様な代物だ。 ゆっくり堪能させてもらうとしましょ。
「ふぅ……戻りましたわ。 本当に肩凝りますよ」
「あ、おかえり西條先輩ー」
「先にもろてます」
「はいはい、どうぞ。 私もいただきますかね」
こちらの席に戻ってきた奈央は、挨拶回りをしていた時より肩の力も抜けて幾分リラックスしているみたいだ。
やっぱり社交の場では肩肘張ってるのね。
「ご苦労様」
「本当ですわよ。 後はお父様にお任せして、私はゆっくり楽しむ事にするわ」
「奈央ってばそんなんで家を継げるの?」
「大丈夫ですわよー。 覚悟はとうの昔に出来てますもの。 それに春人君が支えてくれるし」
そういえば何か足りないと思ったら春人がいないわね。
「春人はどうしたんだ?」
そこに夕也がツッコむ。
「ご両親と同じテーブルに着いてますわ。 後でこちらに合流するって」
「ご両親も来てるんだ? 春くんのお父さん凄く若いよね」
どうやら春人の父親とは会った事があるらしい亜美。
聞くと初めて夕也の家に来た時に同席したらしい。
「あれでも40ぐらいですのよ」
「えーっ!? 30前半でも通るよ」
少なくとも高校生の息子がいる様には見えないレベルって事ね。
「西條先輩ー! 今年はどんなイベントあるのー? ビンゴあるー?」
「イベント? そうねー、ビンゴは今年もあるし、ダーツ大会や姫百合凛、Sunriseさんの特別ライブなんかも予定してるわよ」
「んぐっ! マジか?! ゆりりんのライブ間近で見れんのか?!」
ゆりりんの大ファンである宏太はものすごい勢いで食い付いた。
ライブ見に行きてーってよく言ってるものね。
相当喜んでるわこれ。
「おー! Sunriseも! 楽しみー!」
こっちはSunriseの大ファンである麻美。 特にリーダーの浅田君のファンであり、去年はダンスも踊ってもらっていた。 こちらも大喜びね。
「良かったわね2人とも」
「おう。 んぐんぐ」
「何だったらサインもらってあげましょうか?」
「んんぐっ?! マッマジか!? お、お願いします!」
宏太は珍しく頭を下げてめちゃくちゃお願いしている。 本当に大ファンよね。
あれよね、雰囲気がどことなく亜美に似てるとこあるし、多分本来はああいう子がタイプなのよね。
「ふふ、はいはい。 ちょっと待っててね。 ちょっと貴女」
奈央は近くにいた侍女さんに声を掛けて、サイン色紙と油性ペンを持って来るように頼んだ。
少し待つと、それらを持った侍女が戻ってくる。
「麻美はSunriseの皆からで良いの?」
「はいっ!」
「んじゃ、連れて来るわね」
奈央はサラッととんでもない事を言ってのけ、席を立って行ってしまった。
今あの子、日本のトップアイドル達を連れて来るって言ったわよ? どんだけ大物なのよ西條奈央。
そして奈央は本当に姫百合凛とSunriseのメンバーを引き連れて戻ってきた。
「うわわ! 凄い事に!」
「貴女方はたしか去年もいた奈央お嬢様のご友人ですね?」
去年少し一緒に話をした事のあるSunriseのメンバーは、私達の事を覚えていたようだ。
光栄な事ね。
「あははー! 浅田君だー!」
「お、麻美ちゃんだっけ? 相変わらず元気だねー」
こっちは完全に友達感覚じゃない。 浅田君ってテレビでもそうだけど、実物も軽くて結構親しみやすいのね。
「サインが欲しい男の子がいるって聞いたんだけど、どっちかな?」
と、今度は姫百合凛が話しかけてきた。
透き通る様な綺麗な声。 さすがトップアイドル。
私達とそう歳も変わらないのに、圧倒的なオーラを放つその姿には女の私でも一瞬見惚れた程だ。
やっぱりホンモノは違うわ……。
「あ、俺です! あ、あの! デビュー当時からずっとファンでした!」
ガチガチに固くなっている宏太は実に珍しい。
こいつでもこんな風になるのね。
「そちらの男の子だね。 いつも応援してくれてるんだねぇ。 どうもありがとう。 君もそうだけど、ここにいる皆って何処かで見た事がある気がするんだけど……」
「あ、この子達は高校女子バレーボールの頂点になった子達ですよ」
去年説明したのでSunriseの皆様は覚えていたようだ。
「バレーボール……あー! 奈央さんバレーボールやってたもんねぇ。 そかそか! 思い出したよ、そこの青い子とか、世界大会で凄かった子だ?」
「あ、あはは。 そんな凄くないです」
亜美は謙遜してるけど、女子の最高到達点世界一は普通に凄いって。
「そかそかー。 男の子達の方も何だか見覚えあるけど、2人も何かスポーツ?」
「俺知ってる。 去年バスケでウィンターカップ優勝した子達だ」
と、そう言ったのはSunriseでもスポーツが得意な花山君。 意外な事に宏太達の事はずっと知っていたらしい。
「俺もバスケやってたんで、高校バスケは毎年見てるのさ。 会ってみたかったんだよね、特に今井選手」
「お、俺っすか? いや、どうもありがとうございます」
なんか知らないけど、普通に仲良くなってるわね。
別世界の人間だなんて思ってたけど、話してみるとやっぱり皆同じ人間なのね。
しばらくの間、趣味の合うもの同士で会話が弾み、私達はゆりりんやSunriseの皆と一緒に写真撮影までしてもらったりしてとてもいい経験をさせてもらった。
宏太なんかは、夢にまで見たゆりりんとのダンスの約束まで出来て舞い上がっていた。
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