第544話 ジェットコースター
☆奈々美視点☆
エルフカフェとやらから出た私達は、次に麻美が行きたがっているジェットコースターへ移動する為に歩いているわ。
「本当に渚は乗らないのー?」
「あんなん乗ったら私失神してしまうて……」
「私と同じだよぅ」
渚と希望の2人は絶叫系マシンが全然ダメな子達なので、ジェットコースターなんて乗り物は絶対に乗りたがらない。
あー、ボケねこパークのジェットコースターには乗ったって希望が自慢してたことあったわね。
希望ってばあれが絡むとキャラが変わっちゃうのよねぇ。
「じゃあ5人で行くか?」
「そうだね。 じゃあ、私達は並んでるから、希望ちゃん達も何処か行っておいでよ」
「うん、わかったよぅ。 終わったらここ集合ね」
下に残る希望と渚を置いて、私達5人はジェットコースターの列に並ぶ。
こういう所に来たなら乗らないと勿体ないと思うわけ。 絶叫マシンが苦手な人は可哀想ね。
「夕也兄ぃの隣に座るー」
「ん?」
すかさず夕也の隣をキープする麻美。 亜美は仕方ないなぁといった顔で苦笑いしている。
「あんたね?」
「うわわ、良い良いよ。 奈々ちゃん怒んないで」
私が麻美に一言言ってやろうとするも、亜美が慌てて止めに入ってくる。
「でもねぇ」
夕也の恋人である亜美を押し除けて夕也の隣を取るなんて、ちょっと調子に乗りすぎな気がする。
それも今日はずっとこの調子だ。
「私は大丈夫だから」
「はぁ、わかったわよ」
本当に亜美は優しすぎる。 この優しすぎる性格はあまりにも危うい。 下手をすれば今の幸せを壊しかねないわ。
「ありがとう亜美姉! 次のアトラクションは私我慢するー!」
「当たり前でしょバカ」
「となると、俺は1人シートで座るか。 奈々美は亜美ちゃんの隣な」
亜美に気を遣ったのか、宏太が私と亜美で一緒になるようにしてくれた。
「あはは、ありがとう宏ちゃん。 私は別に宏ちゃんの隣でも良いよ?」
「奈々美がうるさいからやめとく」
「別に何も言わないっての」
という事で、私は亜美の隣に座る事にした。
あとは順番が回ってくるのを待つだけ。
◆◇◆◇◆◇
順番が回って来たところで、予定通りに亜美と一緒に乗り込む。
「小学生の頃は身長がまだ足りなくて乗れなかったよねぇ」
「そうだったわね」
亜美もまあよく覚えてるわね。
他のお客さんも全員乗り込んだところで、下半身を固定するバーと、上半身を固定するバーが下りてくる。
「わくわく」
前では麻美が発車のタイミングを楽しみに待っている。
この子は絶叫マシンでも何でも本当に楽しそうに遊ぶから、見てて飽きないのよね。
麻美って怖い物とか無いのかしら?
ピロピロピロピロ
どうやら発車するみたいだわ。
「ゆけーい!」
動き出すと同時に麻美のテンションはマックスに。
いや、元からか。
コースターはカタカタと上昇していき、最高点に到着。
そして一気に急降下を開始する。
「あははははは!」
「うわわわわわ!」
「きゃー!」
「奈々美の癖に一丁前に悲鳴なんか上げやがってー!」
「何ですってー!」
「お前ら何処でもやってること一緒かー!」
ジェットコースターの上でもどつき漫才を披露する私と宏太なのだった。
◆◇◆◇◆◇
「いやはや楽しかったねー!」
「そだねぇ!」
「俺は頭が痛いぞ」
「自業自得よ」
「希望達はまだ帰って来てないのか。 ちょいと待つか」
ジェットコースターから降りてきた私達だけど、居残り組だった希望と渚は何処かへ行ってまだ戻り来ていないようだわ。
近くのベンチに腰を下ろして、戻って来るのを待ちましょう。
「あの2人可愛いからね。 どっかでナンパとかされてなきゃ良いけど」
「何!? それはいかん! すぐに探しに行かなくては!」
多分亜美は冗談のつもりで言ったんだろうけど、夕也は真に受けてしまったらしく、暴走し始める。
そこにタイミングよく戻って来た希望達は、そんな夕也を見てキョトンとしていた。
「おお! 2人とも変な男に声をかけられたりしなかったか?!」
「別にかけられなかったよぅ?」
「ですね」
どうやら大丈夫だったらしい。
そもそも、こんな所でナンパなんかする人はそうはいないでしょう。
「そうか! それなら良かった!」
「夕ちゃん心配し過ぎだよ」
「お前が変なこと言うからだぞ」
希望と渚はよくわからないといった表情で夕也を見ているのだった。
「さて、そんな事より次行きましょう」
「あ、それならさっきウロウロしてる時に売店を見つけたよぅ」
「ほう」
「じゃあそこ行きますか」
「だねぇ」
「こっちです」
ここでアトラクションを一旦休憩するため、売店へと向かう事に。 希望と渚に案内してもらい移動を開始した。
「ね、宏太。 もし私がナンパされたら心配する?」
歩きながら宏太にそんな事を訊いてみた。
さっきの夕也程に心配して欲しいというわけではないけど、多少はね。
「あ? しないだろ」
「はぁーっ?!」
こいつはサラッと返してきた。 いや、何となくわかっていたけど、ちょっとぐらいは心配しなさいよね。
「大体、お前ナンパされても相手を撃退するだろう? ほれ、いつかのプールデートの時がそうだったろうが」
「覚えてないわ」
「さよか。 とにかく、心配なんてしないぞ」
「あっそ」
本当に何でこんな奴に惚れたのかしらね。 これなら夕也の方がいくらか私に気を遣ってくれるわよ。
「夕也はどうなのよ?」
「あ? 何だ?」
「私がナンパされたら心配する?」
「いるのか? そんな命知らずな男」
「あんですって?」
「い、いや、心配します、はい」
ほら、この通りよ。 やっぱり優しいわね夕也は。
「お姉ちゃん、無理矢理言わせてて悲しくならないの?」
隣を歩く麻美がジトーっとした目でこちら見てそう言うのだった。
売店に到着したところで少しバラけて商品を漁る事にした。 さすがに7人は多いから仕方ないわね。
私は麻美と亜美の2人と行動する事にした。
「んーと、言っちゃ悪いけどあんまり欲しいって思う物がないわね」
「なははー! 私はこのエクスカリバー欲しいー!」
「麻美ちゃんは欲しがってるよ?」
麻美は何やらデカイ剣をキラキラとした目で見ている。 あ、あんな物買ってどうするのかしら?
振り回すか部屋に飾るかってとこ?
「おー、このフェアリーウイングっていうのも欲しい」
麻美にとってこの売店は宝物の山に見えるようだ。
あっちこっちを飛び回っていた。
麻美は結局デカイ剣も羽根も買って満足そうにしていた。 他の皆は私や亜美と同じで特に何も買わずに合流してきた。
せめて可愛いぬいぐるみがあれば良いんだけど、変なアメーバのぬいぐるみなんて誰が買うのよ。
「はぅ、お小遣いに余裕があればあのぬいぐるみ買うのに……」
いたわ。 希望の美的感覚がたまに狂ってるような気がするけど大丈夫かしら?
「さてさて、だいぶ日が暮れて来たね?」
「そうね。 そろそろ夕飯食べてツリーのライトアップやパレードに備えましょ」
私達はパーク内のフードエリアを目指し移動を開始した。
にしても、楽しいことしてる時は時間経つの早いわね。
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