第539話 イチャイチャ

 ☆亜美視点☆


 今日明日は奈央ちゃんの家で泊まり込み勉強合宿を行っている。

 というのは、間近に迫っているクリスマスイヴやクリスマスは勉強をお休みして遊ぶためである。

 遊ぶために勉強をするっていうのは私達らしいところだね。


 今は女子グループで入浴タイム。

 仲良し6人で入浴してるんだけど、相変わらず紗希ちゃんは私や希望ちゃんの胸を揉もうとしている。

 

「紗希ちゃんやめてよーぅ」

「きゃははー」

「騒がしいですわねー」

「いつも通りでしょー」

「あはは」

「でも、大学行ったら紗希の顔もしばらくは見れなくなるんだなぁ」


 遥ちゃんがふとそう呟いた。 1人だけ京都の方へ行く事になる紗希ちゃんとは、頻繁には遊べなくなるのだ。


「前も言ったけど、ちょくちょく帰ってくるってば。 そん時遊べば良いじゃん」

「ですわね」


 と、本人がそうやって明るい感じで言うもんだから、私達もそこまで寂しくはない。


「そういえば亜美ちゃん、東京はどうだったのよー? イイ男いたー?」

「ええ? イイ男? 夕ちゃんと宏ちゃんよりイイ男なんていないと思うけど」

「ああ、亜美ちゃんに訊いてもそうなるかー」

「そらそうよ」


 私の中で恋愛対象になりうるイイ男なんてその2人ぐらいである。 その他の男の人は私にとっては眼中にも入らない。


「でもさ、大学行くと大人の男性とかもいるわけでしょう? 目移りしちゃったりしないー?」

「紗希ちゃんはどうなの?」

「私? んー、大人の男にフラフラ~となるかってことー? どだろー?」


 と、腕を組んで「ふむー」と考え込んでしまった。 か、考え込むんだ……。


「でも大人の恋愛って興味ない?」

「はぅ、大人の恋愛?」

「……大人のねぇ」

「大体私達高校生同士の恋愛って子供の恋愛みたいなもんじゃない?」


 と、紗希ちゃんがそんなことを言い出した。

 私達の恋愛が子供の恋愛……そんなことを思ったことも無かったなぁ。 私は私で、夕ちゃんとはそれなりに大人の恋愛をしてるつもりなんだけども。


「ま、大人には大人の恋愛ってのもあると思うのよ。 イイ大人の男にもし出会っちゃったらフラフラとなっちゃうかもしんないじゃん」

「な、ならないよ。 私は夕ちゃん一筋だもん」

「そんなこと言ってるのは紗希だけよ。 それにこいつだって本気で言ってるわけじゃないでしょ。 こいつだってなんだかんだ言って柏原君一筋なんだし」

「まぁね。 もしかしたらぐらいのお話よー」


 と、笑いながら言う紗希ちゃんであった。

 そういえば東京から帰ってきて、まだ夕ちゃんとイチャイチャしてないねぇ。

 んー、今日は夕ちゃんとイチャイチャしようかなぁ。 でも人の家だしねぇ。


「亜美ちゃん、もう上がるよぅ」

「ん、はーい」


 皆がお風呂を出るという事なので、私も一緒に出ることに。 やっぱり人様のお家でイチャイチャはさすがに控えないとダメだよねぇ。 でも明日も皆で勉強だからイチャイチャし辛いし。


「むぅ」

「亜美? どしたのよ?」

「え? うん、ちょっとね

「ちょっと?」


 奈々ちゃんが不思議そうに首を傾げて訊いてきた。


「もしかして、さっき紗希が言ってた事考えてんじゃないでしょうね?」

「大人の恋愛がどうのってやつ? ううん、それは考えてないよ。 実はね、東京から帰って来てからも色々忙しくて、夕ちゃんとイチャつけてないんだよ」

「そうなの?」

「うん。 だから今日ぐらい……って思ったんだけど、ここ奈央ちゃんの家だしねぇって考えてたんだよ」

「あと1日ぐらい我慢しなさいよね……」

「あぅ、やっぱそうだよねぇ」


 奈々ちゃんにもそう言われてしまった事だし今日は我慢するしかないかぁ。

 と、諦めたところで奈央ちゃんの部屋に到着。 女子は奈央ちゃんの部屋で、男子は客室で寝るという事になったいる。

 うーん、やっぱりイチャつくのは難しそうである。


「ね、ねぇ奈央ちゃん。 空いてるお部屋とか無いかなぁ? なんて」

「え? なんでです?」

「え、いや、あははは、あは……何でもありません……」


 やっぱりやめとこう。 明日の夜には家に帰って好きなだけイチャつけるんだし。


「この子、夕也とイチャつきたくて仕方ないらしいのよ」

「奈々ちゃんっ?!」

「はぅ」

「きゃははー」

「亜美ちゃん……」


 奈々ちゃんがあっさりとバラしてしまった。


「何だそういう事ですの。 んー、空き部屋なら一杯あるけど……」

「い、良いよぉ! 今日はその、我慢するし」

「あらそう?」


 ふう。 今日は我慢しよう。



 ◆◇◆◇◆◇



 夜中……。


「うーん……とは言ったものの。 イチャ欲収まんないねぇ」


 私は布団に潜り込んでスマホをポチポチ操作して夕ちゃんにメールを送ってみる。

 寝てるよねぇ多分。

 と、思っていたけど、意外にもすぐに返信があった。 これには私もびっくりである。

 私は布団から少し顔を出して、皆が寝静まっていることを確認。


「部屋の外でお話ししたいなぁ……っと」


 ちょっとだけでいいからイチャイチャしたいので、夕ちゃんを呼び出してみる。

 夕ちゃんは特に何もいう事は無く「いいぞ」と、返してきた。

 私は心の中で小躍りしながら「やったやった」と喜んだ。

 布団からそろーりと出て、部屋からそろーりと出ていく。


 廊下を歩いていると、向こうから夕ちゃんがやって来た。 私は小走りに近付いていく。


「夕ちゃん」

「おっと……」


 東京から帰ってきてずっとイチャイチャできていなかったので、もう我慢できずに抱きついてしまう。


「んー……イチャイチャ」

「急に呼び出してきたかと思ったらこういうことか」

「だって、ずっと東京にいてイチャつけなかったし、帰って来てからも色々忙しくて……」

「まあ、そうだな。 よしよし」


 久しぶりに夕ちゃんになでなでしてもらい、とても幸せな気分になる。 昔からこれが好きで好きで。


「ね、今回はこれで我慢するけど、その……家帰ったらもっとイチャイチャしたいなぁ……なんて」

「希望が起きないぐらいで頼むぞ」

「うん」


 夕ちゃんに約束を取り付けて満足した私は、もう少し夕ちゃんに抱きついてから部屋に戻った。



 ◆◇◆◇◆◇



「ふんふーん♪」

「亜美、妙に機嫌良いわね?」

「んー? そうかな? ふんふーん♪」


 翌日の勉強時間中、私は鼻歌なんかが出るぐらいに機嫌が良かった。

 それはもう、誰が見てもわかるぐらい機嫌が良かった。


「亜美ちゃん、ここなんだけど」

「んー? どれどれー? これはねー」


 遥ちゃんに数学を教える時もご機嫌である。 皆はそんな私を見て首を傾げながら、それでも機嫌が悪いよりは良いかと思ったのか、特に何も訊いてこなくなったのであった。

 この日は夕飯を頂いてから家に戻る。

 家に帰った私達は明日の学校の準備をしてから順番にお風呂に入る。 その頃には私のご機嫌メーターは最高潮に振り切っており、鼻歌から熱唱に切り替わっていた。

 もちろんその夜は、前夜に夕ちゃんと約束した通りに希望ちゃんにバレない程度にイチャイチャとさせていただきました。

 うーん幸せだねぇ。

  

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