第511話 屋内デート

 ☆希望視点☆


 今日は私と夕也くんでデートの予定。

 天気はお世辞にもいいとは言えないものの、今日1日は何とか保つだろうという予報。

 一応傘は持ってきてのおでかけです。


「降らなきゃいいな」

「うん。 屋内デートにしておいて良かったよぅ」


 今日は市内で新たにオープンしたアミューズメントパークへ行き遊び倒す予定です。 他にはもちろんボケねこショップ。 ここは外せません。


「奈央ちゃんからフリーチケットももらったし、一杯遊ぼうね」

「そうだな」


 新たに開店したアミューズメントパークは西條グループの物。

 本当になんでも手を出すグループです。


「受験終わったら皆でパーッと遊びに行きてぇな」

「うんうん。 皆で合格してね」


 私達の中で進路が確定したのは、就職組の宏太くんだけ。 受験組の私達はまだまだ頑張らないとダメなのです。 

 志望大学のレベルは亜美ちゃんと奈央ちゃん、春人くんがこの近所では最難関、その次が柏原君の受ける大学。

 その次に紗希ちゃんと私が受けるとこが同じくらいでそのちょっと下に夕也くんと奈々美ちゃんが受ける七星。 一番下が遥ちゃんの受ける体育大学だよぅ。


「亜美ちゃんと奈央ちゃんは最難関だけど大丈夫かなぁ?」

「あの2人なら余裕だろう」


 あの2人は確かに天才と言って差し支えないけど、本番なにがあるかわからないし楽観は出来ない。

 私も人の心配してる余裕があるわけじゃないけど。


「希望は勉強もだが人見知りとアガリ症を治せよな」

「わかってるよぅ! もう、皆して同じこと言うんだもん。 ぷんぷんだよぅ」


 言われなくてもわかってるし、ちょっとずつ治す努力をしてはいるつもりなのだ。

 成果は出ているかどうか怪しいけど。


「今日は希望に店員さん対応してもらうからな!」

「はぅ、鬼畜だよぅ」

「ははは、亜美に甘やかすなって言われたんだよ」


 全く亜美ちゃんは……。 私の事思っての事だろうけど、心配しすぎだよ。

 そういえば亜美ちゃんと言えば昨日の話……。 夕也くんはどう考えてるんだろう?

 機会があれば聞いてみようかな。


「着いたな」

「ひえー、大きいお店」


 さすがは西條グループのお店。 相変わらず規模の大きい事。

 ボウリング、卓球、ビリヤード、バスケコートやゲームセンター、カラオケやステージまでなんでもあるらしい。

 これは1日時間潰せるよぅ。

 早速入店して受付でフリーチケットを渡すと、一日フリーパスと交換してもらう。

 まずは何をしようかと話し合って、エアーホッケーで勝負する事に。


「負けた方が昼飯奢りな?」

「乗ったよぅ!」


 お昼ご飯をかけての真剣勝負となったエアーホッケー

 対決。 バスケやビリヤードじゃなければ私にだって夕也くんに勝てる可能性がある。


「よし、じゃあ始めるぜ!」


 カンカンカン!


「はぅ! はぅ!」


 私は持ち前の反射神経と動体視力を駆使して、夕也くんのシュートを防いでいく。

 でも、私は私で決定力に欠ける。

 大きな得点の移動は無いけど、とても良い勝負になった。

 そんな中、先にマッチポイントを握ったのは私。

 

「やるなー希望。 まさかこれ程とはな」

「ふふふ、伊達に月学バレー部の守護神なんて呼ばれてなかったよぅ」


 月島さんや宮下さんのスパイクに比べたら、夕也くんの攻撃なんて余裕だよ。


「とりゃー!」


 カーン!



 ◆◇◆◇◆◇



「お昼ご飯は夕也くんの奢りという事で」

「くそー。 鈍臭い希望になら勝てると思ってたんだがな」

「甘いよ夕也くん」


 エアーホッケーでは私の快勝した。 夕也くんにスポーツ系で勝てたのは初めてかも?


「はぁ。 ちょっと休むか」

「はーい」


 熱いバトルを終えた私達は、近くの椅子に座り休憩をする事に。

 ついでにこの後はビリヤードで遊ぶ事に決定。

 やった事が無いから夕也くんから教えてもらう事に。


「ビリヤードなんてやったことないから楽しみだよぅ」

「亜美は教えてすぐにマスターしたぞ」

「亜美ちゃんは普通の人間と一緒にしちゃだめだよ」


 何をやらせてもすぐにマスターするし、あっという間にプロ並みに上達しちゃうんだもんね。

 亜美ちゃんの出来ないことって本当にあるんだろうか?


「ふう……そういや亜美から何か言われたか?」

「え? 何かって?」

「その、俺と希望のデート頻度の話とか何か」

「あー」


 その話かぁ。 つい昨日聞いたばかりの話だ。


「うん、聞いたよぅ。 審査を厳しくするって」

「そうか。 まあ俺の所為でもあるんだが。 何かすまんな」

「何か言ったの?」

「まあちょっと。 俺と他の女の子とのデートをよしとしてるみたいだったから、本当に俺の事が好きなのかって訊いてみたんだ」

「なるほど。 余計な事を……」

「ははは。 そういうだからよ。 次からは亜美が許可出したらってことで」

「はぅ、しょうがないよね。 彼女さんがそういうなら私は何も言えないよぅ」


 こればっかりは負け組の私ではどうしようもない。 亜美ちゃんのさじ加減でどうにでも出来ちゃうのである。


「そういえばね、亜美ちゃんと昨日お風呂で話したんだけどこんなこと言ってたよ」

「ん?」

「えっと、夕也くんとの結婚についてだけど、亜美ちゃんはしなくてもいいかなって言ってたよぅ」

「結婚?」

「うん。 夕也くんはもう亜美ちゃんとの将来って考えてるの?」


 ちょうど昨日の話題が出たのでお風呂でした話の内容と、夕也くんの考えを聞いてみる事に。

 何だかんだ言って私も亜美ちゃんのサポート的な立ち回りをしちゃってるね。


「俺か? 俺はまだ結婚なんてのは考えてないな。 何よりも大学出てまずは働き口を見つけるところからだ。 そうでないと結婚も何もできねぇし」

「なるほど。 結構ちゃんと考えてるんだ」


 夕也くんは亜美ちゃんとの結婚自体はいまのところ考えてはいないらしい。

 ただ、今の言い方だとちゃんと自分の事が軌道に乗ったら結婚しても良いと思っているって感じに聞こえる。


「まぁ、でもあいつは結婚は望んでねぇのか」

「うん」

「ふうむ。 んじゃあ、希望と結婚するのもありかぁ」

「はぅっ?!」


 不意打ちでそんなことを言う夕也くんに、私は驚いた。

 夕也くんは笑いながら「まぁ、まだ何も考えてないけどぁ」と誤魔化していたが。


「も、もう! 夕也くんったら……でも、私はいつでもOKだよぅ」

「ははは、お前もなんだかんだ諦め悪いよな」

「そりゃ好きだもん。 まだまだ諦めないよぅ」


 亜美ちゃんが夕也くんとの結婚を考えてないというなら、夕也くんのお嫁さんになるチャンスはまだあるんだし、そのポジションを狙っていくのも悪くない。

 夕也くんだって満更じゃないみたいだし。


「さて、ビリヤード行くか。 手取り足取り教えてやるぜ」

「変なとこ触っちゃダメだよぅ?」

「何を今更。 俺は希望の全身触ったことあるんだぞ」

「夕也くんおっさんみたいだよ」

「失礼な……。  ほれ始めるぞ」

「はーい」


 その後は夕也くんとビリヤードや卓球を楽しんだり、ゲームセンターで遊んだりしてデートを楽しんだ。

 どうやら私にはまだ何かしらチャンスが残されている可能性があるようだ。

 これから私達3人はどういうふうになっていくのだろうか?

 

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