第490話 ミス月ノ木は?
☆夕也視点☆
時間は夕方となり、後夜祭前のイベントであるミス&ミスター月ノ木を見るべく、第一体育館に、集合している俺達。
今年は俺達の友人グループから紗希ちゃんが参加するようだ。
多分、優勝候補だろうなぁ。
「あの子、彼氏どうするんだ?」
「優勝したら辞退するってサラッと言ってたわよ」
俺の質問に、奈々美がサラッと答えた。
去年も麻美ちゃんが優勝したが、俺と踊りたいがために優勝を辞退した。
今年紗希ちゃんが優勝したら2年連続で優勝者辞退か。
「他にめぼしい参加者は、あのマリアっちゅう金髪はんだけかいな?」
「まあ、まだわかりませんが。 今のところ紗希と張り合えそうなのはあの子ぐらいですわね」
「柏原君よ。 彼氏としてはやっぱり彼女が優勝してほしいもんか?」
宏太の質問に対して柏原君は……。
「恥ずかしい事しなきゃ良いかな……」
そう言った。
それを聞いた俺達は乾いた笑いを浮かべた。
「にしてもさ、どうして清水さんとか藍沢さんは出ないの?」
「私は1年の時に出たしもう良いかなって」
「まあ、私もね。 それに他の男子と踊るのもねー。 優勝しといて辞退するのも何か嫌だし」
と、それぞれ理由があるようだ。
「見たかったなー、2人の戦い」
「あはは、結構僅差だったよ」
「2点差よ2点差。 まあ、あの時は色々あって亜美を勝たせなきゃいけなかったし……うん、負けてないわ」
「うわわ、無かった事にした?!」
「2人とも、始まりますわよ」
奈央ちゃんがそう言うと同時に、司会である月ノ木祭実行委員が舞台に姿を現した。
「皆さん、こんばんはー! さてさて、今年もやってまいりましたミス&ミスター月ノ木決定戦!
今年は女子8名、男子5名が参加してくれています!」
パチパチパチパチー
「男子は少ないんやな」
「ねー」
たしかに今年は少なめかもしれん。
「さて、ミス&ミスター月ノ木といえば、毎年気になる衣装ですがー?」
ミス&ミスター月ノ木は、参加者の衣装による差を無くすために、参加者全員同じ衣装を着るのがルールとなっている。
俺達の時は旅館の浴衣だったが。
「今年はなんとチャイナ服だーっ!」
チャイナ服か。
「チャイナ服を神崎先輩が着るんですか……」
「なんか僕は嫌な予感がするよ……」
柏原君は早くも不安そうである。
紗希ちゃんの事だ、太ももチラチラぐらいは余裕でやりそうだ。
「ほぉ、こら目の保養やな」
「弥生っちおっさんみたいよ?」
「やかましわい!」
まあ、心配しても仕方がない。
紗希ちゃんに少しでも恥じらいがある事を願うしかないだろう。
「では早速、ミス月ノ木の方から進めていきましょう! エントリーナンバー1 1-A女子代表! 金髪碧眼の美少女! 廣瀬マリアさん!」
パチパチパチパチー
この子が確か、亜美達バレー部の後輩の子だよな。
確かに凄く綺麗な子である。
「あらま、またチャイナが似合うこと……」
宮下さんも認める容姿。 男の票を集めそうな生徒だな。
「んー、これは紗希も思ったより苦戦するかもしれないわね」
「自己紹介とアピールが始まりますわよ」
舞台に注目する。
話によると嫌々の出場ということだが、意外に堂々としている。
「1-A組 廣瀬マリアです。 今日はクラスの推薦を受けて、代表して参加する事になりました。 正直柄じゃないとは思いますが、出るからには優勝を狙います」
ぺこりと頭を下げて、とても礼儀正しい子である。
亜美曰く「私には素っ気ないけど、素はとてもいい子」だそうだ。
「それではアピールタイムをどうぞ!」
「はい。 ギターの弾き語りをやります」
ん? どこかで見たようなアピールだぞ?
「私と同じだねぇ」
「あの子はあんたがギター弾けるの知ってるの?」
「見せたこともないし、偶然だと思うよ」
「お手並み拝見やな」
ギターを肩に掛けて演奏が始まる。
亜美の優しいギターとは違い、力強さを感じる演奏だ。
歌は英語の歌詞でさっぱりわからない。
「良い歌だねぇ」
「そうねー」
「あんた達は英語の歌詞わかるの?」
聴き入っている亜美と奈央ちゃんに、奈々美が訊くと……。
「うん」
「この歌は、尊敬する人に向けた歌ですわ。 一体誰に向けた歌なのかは知りませんが」
「案外亜美ちゃんだったりして?」
「いやいや、無いと思うけど」
亜美はあのマリアちゃんという子にかなり邪険にされているようだな。
マリアちゃんは一曲歌い切った後、小さくお辞儀をして舞台を後にした。
「あの子中々やるやん?」
「そうねー。 バレーボール選手としても期待度高いし、楽しみな子よねー」
お客さんである月島さん、宮下さんも認めるマリアちゃんという子。 世の中には凄い人間が山ほどいるもんだな……。
その後も数名の女子が舞台でアピール等を行っていき、次はいよいよ……。
「エントリーナンバー8! 本日の優勝候補筆頭にもなっている3-Aの神崎紗希さんです! どうぞ!」
司会が後ろに下がると同時に舞台に上がるのは、チャイナ服に身を包み、髪も左右シニョンに纏めたチャイナ紗希ちゃんだ。
「やべー!」
「なんつーエロス!」
「でかい! 何がとは言わないがでかい!」
出てくるだけで健全な男子の視線を釘付けにしてしまう、圧倒的なプロポーション。
恐るべし神崎紗希。
予想通り、チャイナ服の太もものスリットをチラチラさせている。
下着ちょっと見えてんぞ。
「はぁ……」
「柏原君も中々苦労人だな」
「まあ、うん……」
もう諦めたらしい。
「では自己紹介とアピールをどうぞ」
「りょ! こほん、あーあー、よし! 3-Aの神崎紗希でぇす! サイズは上から96、60、90」
何を公開してるんだあの子は……つか96もあんのかあれ。
亜美で90超えくらいって言ってたが、それよりも更にでかい。
「はぁ……」
柏原君はさっきから溜息しか出ていない。
頑張れ。
「やほー! 裕樹見てるー? 今井君も見てるー?」
にこにこしながら手を振って名前を呼んでくる紗希ちゃん。 柏原君はわかるが何故俺も呼ぶ?
「神崎さん……ウチが思うてたより数倍ぶっ飛んどるな」
「んだね……」
月島さん宮下さんも呆気に取られている。
「えーと、アピールタイムだっけ? ポールダンスでもやる?」
「いや、それはまずいのでは?」
「んー、そっか。 んじゃあれやるかー。 マリアー! ちょいと来てー」
舞台袖に引っ込んだマリアちゃんという子を呼び出す紗希ちゃん。
何か嫌な予感がするぞ。
「何でしょう?」
何も知らないマリアちゃんは、ノコノコと舞台へ出てくる。
マリアちゃんを自分の前に立たせたかと思うと……。
「ほいっ!」
さわさわ……
「ひぃっ?!」
やりやがった! 紗希ちゃんの必殺、神の手だ。
触っただけでスリーサイズがわかるという謎の特技。
何も知らない1年生が今、その餌食となった。
「な、なな、何をするんですか先輩?! ひ、人が大勢いるんですよ?!」
可愛い顔を真っ赤にして紗希ちゃんに大声を上げるマリアちゃん。
「ありゃ恥ずいわ……」
「紗希ちゃん、さすがに時と場合と人を選ぶべきだよ……」
皆マリアちゃんに同情している。
そして、泣き出しそうなマリアちゃんにトドメの一撃が。
「マリアのサイズは上から83、57、87ね!」
「……何でわかるんですかー?! うわーん」
と、泣きながら舞台袖に引っ込んでしまうマリアちゃんだった。
紗希ちゃんは紗希ちゃんで「あれ? ま、いっか」と気にした様子もなく、小さく頭を下げて舞台から引っ込んだのであった。
ちなみに女子の部は、紗希ちゃんに泣かされたのが可愛かった等の理由で、3点差の僅差でマリアちゃんが優勝した。
紗希ちゃんやりたい放題やっただけじゃねぇか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます