第480話 月ノ木祭前日
☆亜美視点☆
今日は月ノ木祭の前日である。
ライブの練習は昨日の時点で打ち切っている。 照明関係の打ち合わせや各機器の操作などの打ち合わせも各々終わっている。
つまり、前日の今日は英気を養ってのんびりすることになっている。
のだけど。
「こうか?」
「そうそう。 良い感じじゃん遥」
ダンスに少しの不安が残る遥ちゃんは、自主的に練習中。
初期に比べれば振りのミスもなくなったしダンスのキレもある。
問題なさそうだ。
「これなら問題ないわよ遥。 彼氏も大喜びね」
「おー、そっか! 彼も来るんだっけ?」
「う、うん」
「ふふふ、楽しみだねぇ。 あ、そうそう。 招待と言えば、もうすぐ弥生ちゃんと宮下さんがこっちに来るよ」
「今年も来るのね、あの2人」
「うん」
2人から招待よろしくって言われてたからね。 今日、明日は奈央ちゃんの別宅でお泊りしてもらう事になっている。 お話で盛り上がるよぉ。
「あの子達もまあ、はしゃぐの好きよね。 弥生なんて中学の時はもっとバレー一筋のクールな奴だって思ってたのに」
「ただの面白くて煩い奴でしたわねー」
「うーん……たしかに」
中学生の頃から大会中にコソコソ会って買い物に行ったりしてたけど、今みたいな感じではなかったんだよね。 いや、少しは騒がしいとこあったけど今ほどじゃなかったというのが本当のところである。
「まあ、今の弥生ちゃんが素だと思うよ。 仲良くならないと自分出せないのかも」
「あぁ、かもー」
宮下さんはあれが素だよね。
などと2人の話で盛り上がっていると、ちょうどいいタイミングで弥生ちゃんから連絡が入った。
どうやらもうすぐ到着するらしい。
「じゃ、迎えに行きますか」
今日はもう練習も無いので、これから皆で迎えに行こうという事になった。
男子グループは先に帰っちゃてるので、私達女子だけで行くよ。
さっと学校を後にして、駅前へと移動するのであった。
◆◇◆◇◆◇
駅前へ行くと、既に弥生ちゃんが改札を出たところで待っていた。 渚ちゃんとお話をしているらしい。 2人とも泊まり用の荷物をっていることから、渚ちゃんもお泊りしていくつもりのようだ。
「お、来た来た。 こっちやー」
私達に気付いた弥生ちゃんが手を振って呼ぶ。 やっぱり元気だ。
「いらっしゃいだよ」
「よく来たわね」
「年1回の楽しみやでほんま。 せや、宮下さんも来とるんやけどそこのコンビニ入って行きよったんよ。 ちょっと待ったてんか」
「あ、うん。 らじゃだよ」
「お、足治ったんやな? 良かったやん」
「うん、ありがと」
どうやら宮下さんも既に来ているらしい。 コンビニから宮下さんが出てくるのを待って少し談笑していると。
「おおー皆来てるじゃーん! やっほー!」
と、これまた元気な声を上げてダッシュで近付いてくる宮下さん。
相変わらずである。
「いらっしゃいだよ」
「あれれ、夕ちゃん君と宏ちゃん君は? 麻美ちゃんもいないじゃーん」
「夕ちゃんと宏ちゃんはもう帰っちゃたよ。 麻美ちゃんは今日はお泊りしないかな?」
「むうそうかー」
「明日は私と麻美も泊まりに行くわよ」
「おー、楽しみ」
宮下さんは本当に麻美ちゃんと馬が合うらしい。 全国大会でも熱い戦いをしていた2人だし、友情が芽生えたようだ。
「んじゃじゃ、行こ」
「せやなー」
「お世話になりまーす」
途中で別方向となる奈央ちゃん、紗希ちゃん、遥ちゃんと別れ、更にいつもの十字路で奈々ちゃんとも別れて5人となり、今井家へと戻ってきた。
「ただいまー」
「おじゃまするやでー」
「おじゃましまーす」
「お世話になります」
「お、いらっしゃい」
夕ちゃんがリビングでくつろぎながら2人に挨拶をする。 お客さんの3人はゆっくりしてもらって、私と希望ちゃんで夕飯の準備を──。
「手伝うで」
「そうそう。 この人数分準備するの大変っしょ」
「ですね。 皆でやりましょう」
お客さんである3人も夕飯作りを手伝うと言い出した。 うーん、言い出したら聞かなさそうだし大人しく手伝ってもらいますか。
「じゃあお願いしようかな」
「任せろやー」
ちょっと賑やかなキッチンになりそうだ。
女子5人でキッチンへ向かい、夕飯の準備を開始。
弥生ちゃんも宮下さんも料理の腕はかなりの物。 弥生ちゃんは寮生でありながら基本的に自炊してるみたいだよ。
「ウチらはなにしたらええの?」
「じゃあ具材切ってくれる?」
「了解や。 宮下さん、ほい」
「任せろー」
トントントン……
おお、手際良いね。 この分ならサクッっと完成しそうだよ。
ちなみに今日の夕飯は豚汁と炊き込みご飯にする予定である。 美味しいんだよねぇ。
「渚ちゃんは米研いでおいてくれる? 私と希望ちゃんで豚汁の方進めちゃうね」
「了解です」
んー、こんな美少女達の料理を美少女達に囲まれて食べられる夕ちゃんは幸せ者だねぇ。
味付けの方は私と希望ちゃんに任せてもらう事にして、とにかく下準備を進めてもらう。
皆、驚くほど手際が良い。 渚ちゃんもかなり料理の腕が上がってきたようだ。
1人暮らしで日々自炊しているのが効いているものと思われる。
今日の夕飯はとても美味しいものが出来る気がするよ。
◆◇◆◇◆◇
19時過ぎには夕飯の準備が整い、ダイニングに集まる。
豪勢とは言えないものの、実に美味しそうな炊き込みご飯と豚汁である。
「せや、さっきリビング入った時にチラッと見えたんやけど、熱帯魚飼ってるん?」
夕飯を食べながら弥生ちゃんが質問してきた。
渚ちゃんも「こないだまであんなん無かったですよね?」と話に加わってきた。
そう言えば渚ちゃんも知らなかったんだっけ。
「あれなぁ、ついのこの前に亜美が飼いたいって言って買ってきた海水魚なんだよ」
「へー、海水魚なんだー。 後でちょっと見よーっと」
「ウチも見ていこ」
「そやね」
私のアクアリウムに興味があるようで、夕食後に海水魚を眺めてから、お隣の家に移動する事にしたようである。
「にしても美味いな。 野菜の大きさも完璧だ」
「せやろ? それはウチが切ったんよ。 ウチ、ええ嫁になるよ夕ちゃん」
と、何故か夕ちゃんに言い寄る弥生ちゃん。
どうも夕ちゃんがお気に入りのようである。 紗希ちゃんといい弥生ちゃんといい、どうして皆夕ちゃんなんだろう。
「お姉ちゃん……」
「あはは……夕也くんモテるね」
「そりゃ夕ちゃん君イケメンだもん」
「せやね。 優しいみたいやし、モテんのはしゃーないで。 そや、今年のダンスも一緒に踊ってくれるか?」
「俺は別に良いが……」
「私も構わないよ。 今の私は余裕があるからねぇ。 ちゃんと私と一杯踊ってくれればそれで良いよ」
「じゃあ、今年は私もお願いしようかなー」
「わ、私もええですか?」
「お、おう」
夕ちゃんはモテモテである。
彼女として誇らしいけど、少々心配にもなるのである。
まあ、今年の月ノ木祭は皆にも楽しんでもらいたいし、ここは私も我慢してあげよう。
「よしゃ、明日は夕ちゃんをウチの美貌で骨抜きやー」
「弥生ちゃん!」
油断ならない人である。
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