第459話 今年もお祭り
☆亜美視点☆
今日も今日とて受験勉強。
本日は8月28日。 夏休み中は受験勉強を集中的に進めている。
「今年の夏休みはほとんど遊んでないわねー」
「言っても2、3回は勉強お休みして遊びに行ったでしょ?」
「まあそうだけどー」
紗希ちゃんの言う通り、今年の夏休みはほとんど遊びに行っていない。 行ってもたまの息抜き程度である。
「ねーねー、夏祭りはさすがに行くわよね?」
紗希ちゃんがそう訊くと、奈央ちゃんは。
「まあ……そうねぇ」
「まあ、夏祭りは行きたいよねぇ」
他の皆も夏祭りの日ぐらいは遊びたいぞという事で、夏祭りへは皆で行く事になった。
ただ、そのためにも今日は泊まり込みで勉強することになったわけだけど。
泊まり込みと言っても、私達は寝る時は夕ちゃんの家に帰るけどねぇ。
他の皆はリビングで雑魚寝するらしい。 この季節だからできる事だよ。
「うおー頑張るぞ」
「おお、夕ちゃん気合入ってるねぇ!」
「気合いだけ一人前よね」
「成績も悪くないよぅ?」
そうそう、夕ちゃんはもともと成績も平均以上。 最近は皆での勉強会の成果が出ているのか、順位も上がってきている。
私達の中で一番成績が心配なのは遥ちゃんである。
留年こそ免れているが、割といつもギリギリであったりする。
志望大学がそこまで難関ではないとはいえ、今のままではギリギリそうなので、遥ちゃんは少し頑張らせないといけない。
家庭教師の亜美ちゃんが必要になるかもしれないねぇ。
「もしもし、奈央ですわ。 明日の夕方までに別宅へ届けて欲しいものがありますの。 えぇ、車椅子1台ですわ」
奈央ちゃんは隣で急に電話を始めたかと思うと、車椅子を持ってこいと指示を出している。
もしかして、私用の車椅子を用意してくれるのだろうか?
「では、お願いしますね」
「な、奈央ちゃん」
「人混みを松葉杖で歩くのは危ないもの。 車椅子を使った方が良いわよ」
「あ、ありがとう奈央ちゃんっ!」
何て友達思いなお嬢様なんだろう。 たしかに松葉杖でお祭りの人混みを歩くのは大変だもんね。
「今井君、ちゃんと車椅子押してあげてね」
「おう」
「お願いね、夕ちゃん」
「あぁ」
「亜美、今年はどうする? また5人で一緒に回る?」
「そだねぇ。 どうせなら皆一緒が良いかなぁ?」
「さすがに大所帯過ぎないか?」
私は頭の中で人数を数えてみる。
麻美ちゃん、渚ちゃん、遥ちゃんの彼氏さんまで入れるとなると……。
うわわ、13人?!
たしかに多いね。
「残念だけどやっぱり分かれて行動しよう」
「ま、それが賢明ね」
ということで、今年も奈々ちゃん、宏ちゃんと一緒に回る事に。
麻美ちゃん、渚ちゃんはどうするんだろ?
「はいはい、お祭りの話はそれぐらいにして勉強しますわよー」
と、受験勉強再開を促す奈央ちゃん。
皆も夏祭りを楽しむ為に、今日は頑張って勉強を進めるのであった。
◆◇◆◇◆◇
勉強会を終えて、私達は今井家へと帰ってきた。
他の皆は、奈央ちゃんの別宅で夕飯を食べて、勉強再開のようだ。
たまに賑やかな笑い声が、隣の家から聞こえてくる。
「近所迷惑じゃないか?」
「大丈夫でしょ。 そこまで騒がしくはないよ」
「楽しそうだねー、あっちは」
希望ちゃんが羨ましそうに言う。
あれだけ人数がいれば楽しいだろうねぇ。
私もお泊まりすれば良かったかもしれない。
◆◇◆◇◆◇
翌日──
午前中は病院へ行き、足の状態を診てもらう。
剥離骨折している為、治りは遅いようである。 あまり無理はしないようにと言われたが、バレーボールもしばらくはしないし、無理はしないだろう。
お昼からは、やはり受験勉強会。 遥ちゃんはうんざりしていた。
スポーツインストラクターになる為に頑張って欲しいものである。
受験勉強の最中に、昨日奈央ちゃんが頼んでくれていた車椅子が届いた。
「おお……これ借りていいの?」
「その為に用意させたのよ。 我がグループが設計した最新の車椅子よ」
車椅子に造詣が深いわけではないので、普通の物と何が違うかはよくわからないけど、ありがたく使わせてもらうことにする。
「んしょ……おお、座り心地良いねぇ」
「今井君、ちょっと押してみて」
「うむ」
夕ちゃんが私の後ろに立って、車椅子を押し始める。
「おお、軽いな」
「ふふふー! 超軽量素材を使ってますのよ。 丈夫で軽い! そんな車椅子ですわ
「夕ちゃんが押してくれるから楽ちんだよ」
今日はこの感じでお祭りを回るんだね。 ちょっと目立ちそうだけど、そこは仕方ないかな。
「ま、これで安心して回れるわね」
「逆に、他の人の邪魔にならなきゃ良いけど……」
「何か言われたら私が言い返してやるわよ」
と、奈々ちゃん。
ヒートアップして手が出なけりゃ良いけど……。
「そだ! 麻美ちゃんと渚ちゃんはどうするって?」
「あー、麻美は今年は私達と回るってさ。 渚も一緒して良いかって訊かれたからOKしといたわよ」
と、奈々ちゃんが教えてくれた。 ナイス判断である。
今年は更に賑やかになりそうだね。
ということで、車椅子は一旦置いて勉強の続きをする事に。
お祭りが始まる夕方が楽しみである。
◆◇◆◇◆◇
良い時間になったので、私達は勉強を切り上げて夏祭りへと出かける。
私は車椅子に乗り、夕ちゃんに押してもらいながらの移動。
途中で麻美ちゃんと合流して、駅前へと向かう。
元々駅前のマンションに住んでいる渚ちゃんとは現地集合である。
遥ちゃんの彼氏さんも現地で待っているらしい。 2人で行動するのかな?
「車椅子は目立つわね」
「あははは……仕方ないよ」
「治るのにどれくらいかかりそう?」
「一月半ぐらいは見ておけって」
今日病院でそう言われた。 治ったらリハビリもしっかりやらないと駄目らしい。 元々走り回ったりするタイプの人間じゃないしゆっくり治すのは良いんだけど、やっぱりいろいろ不便である。
特に、今井家はバリアフリーではないので移動が大変だ。 階段の上り下りは夕ちゃんにおんぶしてもらっている始末である。
皆でゆっくりと駅前へやって来ると、ベンチに座って待っていた渚ちゃんが走り寄ってきた。
「こんばんはです。 清水先輩、車椅子ですか」
「うん。 奈央ちゃんが貸してくれたんだよ」
「西條先輩の……空飛んだりせぇへんですよね?」
いくら西條グループの力が凄くても、空飛ぶ車椅子はさすがに作らないだろう……。
「大丈夫だよね?」
「その機能ちょっと考えてはいたんだけど、開発チームの人から『それはちょっとどうなんでしょう?』 みたいに言われたからやめたわよ」
奈央ちゃんの意見が通らなくてよかったと、心底そう思う私であった。
というか、奈央ちゃんの意見に反対できる人がいるなんて凄いねぇ。
さて、少しすると遥ちゃんの彼氏さんもやって来てこれで全員集合。
とりあえず予定通りに数グループに分かれて行動を開始することにした。
「さぁ、夕ちゃん押したまえー!」
「へいへい」
「はぅ、夕也くんが馬車馬のように……」
「ははは! 夕也にお似合いだな!」
「あんたは私を乗せて走ってもらっても良いのよ?」
「あはははー! 宏太兄ぃも馬ー」
「なんや今井先輩も佐々木先輩も扱いが可哀想やなぁ……」
と、私達は7名で行動することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます