第435話 4強出揃う
☆宮下視点☆
第1セット終盤で私達都姫女子がリードしている。
ここまで千沙っち……新田さんが
ここまで月島さんを止められるとは、私も正直思ってなかったわ。
いや、もちろん千沙っちの実力は信用してるんだけど。
さて、まずはこのセットをこのまま取ってしまいたいわね。
「千沙っち、こっからも頼むわよ」
「頑張ってみます……」
ありゃ、どうやら想像以上にキツいみたいね。
もう息も上がってるし……。
「こりゃ早めに決めないとまずいわねー」
やっぱり、並の攻撃力じゃないってことか。
化け物は化け物ってことね。
「ここも取るわよ!」
「OK!」
私達側からのサーブで試合再開。
「よっ!」
「月島さん、頼んだで!」
エースの月島さんにトスが上がり、月島さんのスパイクが飛んでくる。
ブロックを物ともせずに、強烈なスパイクを見舞ってくれる。
ボールはコート外に飛んでいく、途中まで追いかけていた千沙っちも諦めてしまった。
「どんまい、仕方ない仕方ない。 切り替えてこー!」
「まだリードしてるよー!」
やっぱりありゃ凄いわ。 月島さんも清水さんも藍沢さんも、相手すると本当に疲れるのよね。
もうちょっと楽させて欲しいわ。
「どんどん私に上げてよー永瀬っち!」
「はいはい」
立華サイドのサーブを千沙っちが軽く拾い、永瀬っちがセットアップする。
足立さんがクイックの助走に入り、私はその少し後に私も助走を開始する。
思い切り跳んで、ボールを……。
「あるぇ?」
どうやらトスは私じゃなくて足立さんに上がったらしく、しっかりクイックを決めていた。
「私に上がると思ったのに」
「だから上げなかったんだって。 あんたにブロック2枚付いてたし」
「2枚ぐらい楽勝だってば」
「リスキー過ぎるでしょうがー」
まあ、結果的にはクイックが決まったわけだし、永瀬っちの判断は正解だったわけね。
「わ、私にも上げてよね」
「わかってるわよ。 ちゃんと考えてトス上げてるから、しっかりあんたにも上げるわよ」
「よろしくー」
去年までは私にトスが集まって、ほぼ私が決めてたんだけど、その所為で試合終盤にガス欠を起こして負けてしまうという悔しい試合があった。
だから今年は、皆で点が取れるチーム作りを続けてきたわけで、その成果はしっかり出ている。
「勝つ為とはいえ、ちょっと寂しいかも」
◆◇◆◇◆◇
「っりゃ!」
ピッ!
「っし!」
25点目を自身のスパイクで決めて、第1セットをキープ。
立華相手に有利に試合を運べている。
「よーし、良いわよ。 以前はセットも取れなかった相手にこれだけやれるんだから、貴女達の練習方針は間違えてなかったのよ。 自信持って次のセットも取ってきなさい!」
「はい!」
コーチの言う通り、私達のやってきた事は間違いじゃなかった。
練習試合でも月ノ木に勝てたし、私達は強くなってるわ。
絶対女王だか何だか知らないけど、今年は優勝させてもらうわよ。
◆◇◆◇◆◇
☆亜美視点☆
「うーん。 完全に都姫女子ペースだねぇ」
「ですわね。 このままセット連取して決めてもおかしくないですわ」
「まあでも、まだまだわからないわね。 月島さんがこのままで終わるとは思えないし」
「そうですよ。 お姉ちゃんはまだまだこっからです」
渚ちゃんは本当にお姉ちゃん贔屓だねぇ。
それにしても、本当に強いねぇ今年の都姫女子。
私達も今年は危ないかもしれないよ。
「あ、2セット目始まるよー!」
麻美ちゃんの声を聞いて、コートに視線をむける。
立華サイドのサーブで2セット目がスタートする。
「新田さん、結構消耗してるわね」
奈々ちゃんが注目したのは新田さんの動き。
たしかに少し動きが重い。
「トップクラスのアタッカーを相手にすると、やっぱりプレッシャーが凄いし、集中力も凄くいるから思った以上に疲労が貯まるんだよぅ」
希望ちゃんがリベロ視点での話をしてくれる。
なるほど、そういうのがあるんだね。
ピッ!
「宮下さんはキレキレね。 他の
「大丈夫だよー! 今回はしっかりブロック決める!」
麻美ちゃん、何故か自信満々である。
というか、あれだけやりたい放題に決められて、ブロッカーとしてのプライドが相当傷付けられているんだろう。
遥ちゃんも麻美ちゃんも、かなりブロック練習を頑張ってたし成果が出ると良いけど。
試合の方は、2ー2の同点。
サーブは立華。 このローテーションは新田さんがコートから出るタイミングで、防御力が下がる。
そんな中でサーブを拾うのは宮下さん。
珍しいねぇ。 オポジットってわけじゃないらしいけど、あまりレセプションしてるシーンは見ない。
レセプションした後は、すぐに体勢を整えて助走準備に入る。 エースとしての意識が高いね。
そんな宮下さんに高いトスが上がり、宮下さんはそのままサードテンポの助走に入る。
当然ブロックが3枚付いてくる。
「あのブロックはキツいわよ」
「私なら上を抜くよ」
「そんな事出来るの亜美ちゃんだけだよぅ」
宮下さんはボールに向かい跳び上がり、大きなバックスイングを取る。
「打ち抜く気だわ」
スパァン!
快音を響かせたスパイクは、ブロックに引っかかって、ギリギリライン外に落ちる。
ブロックアウトで都姫女子の得点となる。
「うわわ」
「あれを狙ってやってるんならヤバいわ」
宮下さんなら十分にあり得るんだよねぇ。
それぐらい上手いOHだ。
「これは立華サイドかなり辛いですわね」
「うん。 流れが完全に都姫女子側に向いてるよ」
「まあ、ここ勝ったとしても準決勝を勝つとは限らないし」
「そうだけど、まずこの2校のどっちかでしょ」
「だねぇ……」
◆◇◆◇◆◇
試合は終始都姫女子ペースで進み、新田さんも最後まで頑張ってボールを拾っていた。
弥生ちゃんもキャミィさんもきっちり決めていたが、新田さんが踏ん張ってとったブレイクの差を埋めるには至らず。
都姫女子の勝利で準々決勝第3試合は終了した。
「都姫女子か。 決勝の相手として濃厚だなぁ」
「ですわね」
「私達も準決勝勝たないだよ」
まずは私達だ。 相手だってここまで勝ち上がるぐらいのチームだし、油断はできないよ。
「さて、戻るよ!」
試合を見届けたので、私達はホテルへ戻る為に席を立ち上がり、その場を後にする。
体育館の出口まで来た所で、他の皆を先に行かせて私だけ残る。
弥生ちゃんから連絡があったからである。
少し待っていると、京都立華が出てきた。
その中から弥生ちゃんが顔を出して私の前へ。
「亜美ちゃん、悪いなぁ。 負けてもうたわ」
「うん……」
「なはは、あんさんにリベンジ出来る最後のチャンスやったんやけどなぁ」
「そだね。 私はこの大会で引退だから」
「ま、しゃあないわ……。 また、なんか機会があれば一緒にバレーボールしよや」
「うん」
「負けんなやー」
「わかってるよ。 見ててね」
「見といたるわ。 ほなな」
「またね」
最後まで明るい感じだったなぁ。
たしか、宮下さんとは社会人チームで同じチームになるって言ってたっけ?
2人の対戦もこれが最後になるかもしれないね。
「……さて、私も帰ろうかな」
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