第387話 沖縄へ行こう
☆亜美視点☆
ゴールデンウィーク中に奈央ちゃんの企画する沖縄旅行へ行くことになっている。
沖縄に行くのは初めてだし楽しみだ。
5月ではまだ海で泳ぐことはできないらしいけど、別荘の近くには室内プールなどの施設が完備されている為、そこでなら泳ぐこともできるとの事。
希望ちゃんがバニラとパフェ……特にパフェは育児中の為、連れていけないことを不安がっている。
そこは奈々ちゃんの家が預かってくれるらしく、何とかなりそうである。
現在、希望ちゃんは藍沢家で、バニラとパフェの世話の仕方を藍沢母に説明中である。
パフェと子ハムスター達の扱いには特に注意してほしいと伝えている。
「バニラ、パフェ。 少しだけ我慢してね。 帰ってきたらすぐ迎えに来るからね」
希望ちゃんがそう声を掛けると、2匹は応えるように希望ちゃんの眼前へやって来るのだった。
「はぅ……パフェ、子供放ったらかしはダメだよぅ」
「あはは」
「それじゃ母さん、少しの間、希望のハムスターお願いね」
「わかってるわよ」
「お願いします」
希望ちゃんは深々と頭を下げるのであった。
◆◇◆◇◆◇
ハムちゃん達を預けたその足で、直接西條邸へ向かう私達。
「夕ちゃんも宏ちゃんも、ちゃんと勉強道具持ってきた?」
「あぁ。 遊んでられないからな」
「俺……就職希望なんだが……」
「就職試験にだって簡単な座学はあるわよ?」
「俺ニートでいい……」
宏ちゃんは、本当に勉強嫌いなんだから……。
ちゃんと就職して安定したお給金貰わないと、将来大変だよ。
「じゃあ宏太兄ぃは専業主夫やるしかないねー! お姉ちゃんが稼ごう!」
「Vリーガーってそんな稼げるのかな?」
希望ちゃんの疑問に奈々ちゃんが答える。
「色々調べてみたんだけど、契約内容によるらしいのよ。 大企業チームのプロ選手として契約すれば、かなりの年収が期待できるみたいだけど、普通の企業に会社員として契約すると、その辺のOLと変わらないみたい」
更に言うと、バレーボールに集中して活躍し続けられれば大丈夫なプロに比べて、日中はお仕事して夜から練習みたいな、ハードな日程を要求される社員契約はかなり辛そうとの事。
選手として活躍すれば、テレビやバレーボールの解説なんかに呼ばれたり、果てはバラエティ番組に出演したり、俳優さん女優さんになる人もいるとか。
「じゃあ、狙ってるのはプロ契約か?」
「Vリーガーになるなら、ね。 まだ決めてないのよ。 大学出てからでも良いし」
とはいえ、早い人は高校卒業後に即Vリーガーになる人も多い。
宮下さん、弥生ちゃんはそのクチだ。
「ちなみに今はどうなんだ? 亜美なんかはもう全部シャットアウトしてるから電話とかかかってこないけど、奈々美には企業チームから勧誘とか来てんのか?」
「えぇ、来てるわよ。 大きいとこからプロ契約の話もね」
さすが奈々ちゃんである。
そんな将来の話をしながら、西條邸へとやって来た私達は、もう乗り慣れてしまった西條邸私用バスに乗り込み、そこから空港へと向かう。
「空の旅が初めての子いる?」
「はーい!」
「俺も無いな」
「私はあります」
私達世界選手権参加組は飛行機に乗ったことがあるので注意事項は特に問題無し。
夕ちゃん、宏太ちゃん、麻美ちゃん、遥ちゃんは初飛行機らしい。
紗希ちゃんは意外にも、子供の頃に奈央ちゃんの旅行についていったことがあるらしい。
「はいはい、把握。 えーっと、今回の旅行は西條家自家用ジェット機を使用して……」
「じ、じじじ、自家用ジェットォォッ?!」
紗希ちゃんと奈央ちゃん意外の全員が、驚きの声を上げる。 紗希ちゃんはその存在を知っていたらしい。 さすが奈央ちゃんの親友……。
「いや……あんたならそれぐらい持っててもおかしくないわね……」
「そ、そうだね……」
何て恐ろしい。
「完全に貸し切りとなってますが、機内ではあまり暴れたりしないように。 昼食も機内食となります」
「おー、機内食!」
何だかお昼から豪勢なものが食べられそうである。
「あ、座席は自由に座っていただいていいわよ」
「夕ちゃん、一緒に座ろうね」
「私もっ」
私と希望ちゃんが、夕ちゃんを挟むように座ることになりそうだ。 麻美ちゃんと渚ちゃんも夕ちゃんの近くに座りたいと申し出てきたので、夕ちゃんの周囲は賑やかになりそうである。
「じゃあ、空港まではまだ時間があるしゆっくりしててね」
私有バスでの旅にはもう慣れたものであり、それぞれがテレビを見たり音楽を聴いたり、はたまた仮眠を取ったりと自由に過ごすのであった。
◆◇◆◇◆◇
2時間半ほど走ってバスは空港へとやって来た。
奈央ちゃんは1人で歩いていきフロントに話をつけに行った。
数分で帰って来た奈央ちゃんは、西條家専用通路を通って、飛行機搭乗口へと案内してくれた。
「おおー、あれ奈央ちゃんの自家用ジェット機!」
「かっけー!」
「ふふふ、少し待っててね。 すぐ乗れるから」
「はーい」
という事で、搭乗可能になるまでしばし椅子に座って休憩。
「亜美姉、亜美姉」
「んん?」
椅子に座って待っていると、麻美ちゃんが話しかけてきた。
「沖縄旅行は良い取材旅行になるねー」
「おお、たしかにそだね!」
小説の良い材料に出来るよぉ。 沖縄を舞台にした作品を描くときになんかは役に立ちそうだ。
麻美ちゃん偉いなぁ。 ちゃんとお仕事のことも考えてるんだ。
そういえば、次回作の構想……ちゃんと練るだけでも練っておかないとね。 将来は小説家として生きてくんだもん、ちゃんとしなきゃ。
「皆ー、搭乗できるようになったわよー」
奈央ちゃんが私達を呼びに来てくれたので、各自荷物を持って飛行機に搭乗する。
自家用とは思えない大型ジェット機で、一体誰を乗せるつもりで買ったのか謎である。
そして、私達夕ちゃん大好きグループは、夕ちゃんを中心に前後左右の席に着席。
希望ちゃん、麻美ちゃん、渚ちゃんの他に、紗希ちゃんもついてきた。
そういえば、今回の旅行も紗希ちゃんと遥ちゃんの彼氏はついてこれなかった。 うーん、残念。
「向こうのプール楽しみねー。 今井君、私の水着で悩殺したげるね」
「紗希ちゃーん……」
まったくこの子は、夕ちゃんに色目ばっかり使うんだから……。
「ほ、程々にな、紗希ちゃん」
「あ、でも、今更水着じゃ喜ばないか? もう私の恥ずかしいとこ全部見たもんねー?」
「ちょっ!?」
「……何それ? どういう意味なの紗希ちゃん?」
今のは聞き流せないよ。 紗希ちゃんは何故か顔を赤くさせてもじもじしながら。
「いやぁ……今井君と一晩の熱い時間を……」
「それ本当っ?!」
「本当も本当よー……気持ち良かったよねー今井君?」
「ノーコメントで……」
「むううううう……いつの間に……」
「なははは! バレずにやれば良いって言ったのは亜美ちゃんだぞー」
言ったは言ったけど、本当に実行してくるなんて思わなかったよ……。
本当に油断も隙も無いなぁ、紗希ちゃんってば……。
「はーい、そろそろ滑走入りますわよー」
「あ、はーい」
私達はベルトを締めて、離陸に備えるのであった。
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