第345話 ホワイトデー前日
☆夕也視点☆
今日はホワイトデーの前日なわけだが、親しくしている友人達から貰った友チョコの分ぐらいは皆にお返しをしたいと思っている。
それと亜美、希望には別のお返しも用意したい。 あの2人に頼りたいところではあるが、ここは俺1人で何とかしないとな。 男として。
「1人で何とかするんじゃなかったのかよ?」
「お前は数には入らねーから」
土曜日を利用して皆へのお返しを買いに行くのに、宏太を連れてきた。
こいつも皆から貰ったはずだから、お返しを用意するだろう。 つまりこいつを参考に俺もお返しを決めようという作戦だ。
「お前、何でそれでモテるんだよ……」
「見た目かね?」
「おうおう、俺のがイケメンだけどな」
まあ、それは否定しないが。 友人達の間でこそあんな扱いではあるが、一般的な女子受けは俺よりも良い。
「まあ俺は無難にクッキーを返すよ」
「クッキー? それでいいのか?」
「それで十分だろうが……あいつらだって、友チョコごときに大層なお返しなんて期待してねぇよ」
「そ、そういうものか……」
「お前、毎年どうしてたんだよ……」
「実は今までろくにお返ししたことが無くてな……我ながらひでぇ男だぜ」
「それでも何も言われてないんだろ? そういうことだよ」
「むぅん……」
「ま、どんなお返しでも、あいつらなら喜んでくれるだろうし気にするな」
宏太は気楽にそう言うのだった。
「ただまあ、俺も奈々美と麻美には日頃世話になってるし、そいつらにだけはちゃんとしたお返しするけどな。 お前も亜美ちゃんと希望にはそうなんだろ?」
「そのつもりだ」
その辺はこの男も同じなようである。
2人で駅前までやって来たわけだが、さてここからどうしようか。
「俺はクッキー買うだけだからこの辺の店でも良いんだが?」
「むぅん……俺は隣町にでも足を延ばしてみようと思う」
「そうか。 んじゃなー」
「うおい! ついてきてくれねぇのかよ!」
「黙れ! 何で男2人でショッピングせにゃならんのだ!」
「友達甲斐のない奴め!」
「ふん! 知るか、さっさと行け!」
宏太はその辺のスーパーに入っていってしまった。
「むぅ、頼りにならん奴め」
とはいえ、きっちりとアドバイスはしてくれたことには感謝している。
「どんなお返しでも喜んでくれる……ねぇ」
多分あいつの言う通りだろう。 だから、ちゃんとしたお返しを……なんていうのは、俺の自己満足でしかないのかもしれない。
「しゃあねぇ。 何か探しに行くか……」
俺は1人で隣町へ向かう為、電車へと乗り込むのであった。
◆◇◆◇◆◇
隣町へとやって来た俺は、まず奈々美と麻美ちゃんへのお返しを選ぶ。
あの2人へのお返しならある程度は見当がついている。
奈々美に関しては、あいつ自身がチョコをくれた時に「あ、これ一応本命ね。 まあ、お返しは別にいらないんだけどね? そういえば、今度新しい香水が出るのよねぇ。 あ、別にお返しはいらないけど」と、あからさまに新発売の香水を要求してきていた。
麻美ちゃんは「お返しはなんでも良いけどねー。 そういえば来月には新色のリップが発売するなー。 あ、お返しはなんでも良いけど」と、これまたわかりやすく要求してきていた。
さすが姉妹である。
というわけで、コスメショップと呼ばれる場所へやってきたわけだが。
「は、入り辛くないかこれ……」
男が1人で入るのはかなり勇気がいるのではないだろうか?
入ったら不審者扱いされないだろうな?
「ヒソヒソ……」
すでにされていた。
えーい……仕方があるまい。
ここは恥を捨てて突撃だ。
「いらっしゃいませー」
店員さんは、別に変わった様子は見せていないようだ。
入店して来た者は、性別問わずお客さんという事なんだろうか?
「すいません、香水を探してるんですが……」
「香水ですか? こちらになります」
親切な店員さんが、香水コーナーへと案内してくれた。
「ふ、ふむ……色々あるんですな」
「彼女さんへの贈り物ですかー?」
「はい、まあ……」
「それではこちらなんてどうでしょう? 今一番人気ですよ」
と、お試し品を手に取り、一振りして香りを嗅がせてもらう。
なんだろうなこの香り……。
「桜の香りですね」
「あー、言われてみれば……」
「こちら先月入った新商品で、一足早く春を感じられる香水となっています」
桜の香りか……奈々美のイメージには合わない気がするが、一番人気なら外しはしないだろ。
「これにします。 ついでなんですが、春の新色のリップとかってあります?」
「ありますよ。 ……おモテになるんですね?」
「あ、いや……皆、幼馴染なんで」
と、説明しながらリップコーナーへ案内してもらう。
これまた色んな色のリップがあるもんだな。
「贈る女性はどんな方ですかー?」
「え? あぁ、とにかく元気で可愛らしい女の子ですね」
「それでしたら、こちらはどうでしょうか?」
と、これまた1つを手に取って見せてくれる。
ふむ……明るくて薄いピンクっぽい色だな。
麻美ちゃんに似合うだろう。
「じゃあ、それとこの香水でお願いします」
「ありがとうございます」
店に入る前はどうなる事かと思ったが、親切な店員さんで助かったぜ。
無事、奈々美と麻美ちゃんへのお返しを購入した俺は、難関である奈央ちゃん、紗希ちゃん、遥ちゃん、渚ちゃんへのプレゼント選びを開始した。
数時間後……。
「ふむ! これなら問題あるまい。 問題あるのは俺の財布の中身だけだな!」
皆へのお返しを買った結果、財布の中身はすっからかん。 帰りの電車賃が無くなったので、歩いて帰る事にした。
奈央ちゃんには桜色のリボン……あの子は金持ちだから、こんなんで喜ぶかはわからないが。
「ふうむ……まあ、大丈夫だよな」
紗希ちゃんにはデザイン本。
たしか、将来はデザイナーになりたいって言ってたよな。
「あの子はまあ、何でも喜ぶだろう……」
遥ちゃんは、明日デートがあるらしいから、それに着けて行ける髪飾りを買った。
先週、物凄いイメチェンをしてきてびっくりしたものだ。
渚ちゃんには、ハンカチ。
正直あの子の好みがわからないので、当たり障りの無いものにした。
「あとは明日皆に渡すだけだな」
それと、一番大事な2人には……。
◆◇◆◇◆◇
「ん? 明日暇かって? 暇かって聞かれると暇ではないんだけど」
「用事でもあるのか?」
「ううん? 家事とか買い出しぐらいだけど」
亜美に明日の予定を聞いてみたら、こんな返事が返ってきた。
家事か……。
「どうしたの? ははーん、さてはデートのお誘いだねぇ?」
「まあ、そんなとこだ」
亜美は「うふふー、良いよぉ」と、笑顔で応えた。 しかし、亜美と2人だけではなくてだな。
「希望も良いか?」
「希望ちゃんも?」
亜美は目を丸くして首を傾げる。
「ほら、去年のホワイトデーは3人でデートする約束してたのに、お前熱出して結局別々だっただろ?」
「あぁ……たしかにそだね! うん、3人でお出掛けしよ!」
亜美は納得したらしく、こくこく頷いて賛成してくれた。
本当は恋人同士2人の方が良いだろうに……。
◆◇◆◇◆◇
「はぅ? 私も良いの?」
「うん。 3人でお出掛けしよ!」
「亜美ちゃんが良いなら、うん。 3人でお出掛けっ!」
こっちはあっさりOKが出た。
明日の予定は少し早めに出て、友人達にバレンタインのお返しを渡した後にデートという流れになった。
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