第321話 奈々美無双
☆奈々美視点☆
さてさて2セット目が始まるわけだけど、ここは当初の予定通り私が限界まで暴れまくるわよ。
京都立華サイドも、1セット目に私が大人しかったことを、不気味に思ってるでしょうね。
もしかしたら、昨日の試合の疲れでまともに動けないのかも、とか思ってるかもしれない。
それは半分は当たっているんだけど。 でもそれは2セット以上フル稼働した場合の話。
1セット目にだいぶ温存できたから、2セット目はフル稼働できるはず。
ここで2セット連取出来れば、この試合大幅に有利になる。
さっきのセットも終始良い流れだったし、このまま一気に持っていきたいところね。
「奈央ー初っ端から良いのよろしくー」
「了解」
奈央のサーブから始まる第2セット。
奈央のドライブサーブが良いところに落ちる。
でも上野さんがそれをうまく拾う。 これも世界レベルの実力よね。
「キャミィッ!」
キャミィにボールが上がる。 オープン攻撃とはまた随分自信があるみたいね。
たしかにこの子のパワーは大したもんだけど……。
「ハイ!」
パァン!
「っ!」
いやいや、やっぱ凄いわこのパワーは……。
ブロックお構い無しにぶち抜いてきた。
「くー……あれは相変わらずだなー」
「むしろパワーアップしてるよ」
まったく……。
「でも、パワーなら?」
「ええ、任せなさい」
さて私の番ね……。
立華サイドのサーブを希望がしっかり拾ってくれる。
そして私もオープン攻撃の準備をする。
遥がクイック、紗希がセミオープンに跳ぶ。
「奈々美っ!」
「はいよ!」
「そっちかい!」
ふふん、1セット目大人しくしてたのが功を奏したわね。 それでも慌ててブロックが2枚やって来る。
さすがに速い。
「関係ないけどね!」
必殺の捻りを入れたスパイクで、ブロックを打ち抜いて見せる。
「よっし!」
「いいよぉ奈々ちゃん最高!」
「イエーイ!」
亜美とハイタッチを交わしてローテーション。 次は亜美のサーブね。
亜美は任せておけば勝手に良いサーブを打ってくれるわ。
「よっ!」
今回はジャンプフローターサーブを選択したようね。 これまた良い感じにセッターの頭上に落としていく。
眞鍋さんは慌ててオーバーハンドトスで上げている。 良い判断ね。
それを上野さんがアタックライン外からジャンプトスで上げている。
「うらぁ!」
「止める!」
弥生のスパイクに合わせて、紗希とブロックを作る。
パァン。
高さ十分のブロックで下に叩き落すことに成功した。
「くっ!」
「よっし。 ブレイク!」
「良いよ奈々ちゃん」
「……調子ええみたいやん。 1セット目のあれは三味線弾いとったんか?」
「ま、そんなとこね」
「やってくれるわ……」
まぁ、亜美のサーブが良いってのもあるんだけどね。
「ホント、凄いメンバーが揃っちゃったもんね……うちも」
「亜美ちゃんナイサー」
「はーい」
亜美は両手でボールをクルクルと回しながら、助走準備に入る。
次は、ジャンプドライブサーブ。 亜美は本当に多才なサーブを使い分ける。
亜美の次のサーブはネットを越えると急激に落ちて、弥生のに向かっていく。
「とんでもない変化しよってからに!」
一瞬慌てた様子だった弥生だけど、なんとかレセプションしている。
何だかんだ言っても、弥生もかなりオールラウンダーよね。 トスも上げられるのよねこの子。
レセプションした弥生は、すぐさま助走距離取ってすぐさま助走に入る。
「すぐにセミクイックに跳べる辺り、半端ないわね」
さすがは亜美のライバルにして、全国No2のOHね。 2番目なんて言ったら怒るかもだけど。
「奈々美! ブロック跳ぶよ!」
「えぇ!」
遥の指示でブロックの準備。 弥生のジャンプに合わせてブロックに跳ぶ……。
「残念やな! うちは囮や!」
「キャミィ!」
「ぐっ……」
弥生のエースに圧力に釣られたわね。
「ハイ!」
「無理ー!」
紗希が1枚でブロックに跳ぶも止められず。 希望もディグを試みるが止められずに後逸。
キャミィもかなり厄介ね。 ただ、空中戦はあまり上手くないし、そのうち何とかなるでしょう……。
問題はやっぱ、弥生よね。
「ナイスやでキャミィ」
「マイド!」
京都立華の攻撃力も都姫に負けず劣らず……。 本当疲れるわ、全国大会。
◆◇◆◇◆◇
その後、中盤までブレイクしたりされたりをしながら点差がつかない状況になっていた。
私もまだスパイク出来るけど、何とか点差をもっとつけたいわね。
ただ、 このチーム……特に弥生とキャミィを止めつつブレイクするってのはかなり至難の業。
「希望姉、交替ー」
「お願いね、麻美ちゃん」
「あいあい」
ここで希望が下がって麻美が入ってくる。 天才ブロッカーとか言われてるけど、私から言わせれば奇才ブロッカー。 だけど、インターハイでの実績もあるし実力は本物。
「麻美、頼むわよ」
「うん! 任せてー!」
頼りになるんだかならないんだか……。
んで、サーブは遥。 1年の頃はサーブミスも目立ってたけど、今は改善されている。
「ぁっ!」
これまた良いサーブが飛んでいくも、上野さんがレセプションする。 さすがに崩れてはくれないわね。 上がったボールの下へ眞鍋さんが移動する。
その間に各選手がポジションを移動して、ブロックフォローに回るプレーヤー、攻撃に回るプレーヤーに分かれる。
今の立華のローテは最大火力と言っても差し支えない状態。 前衛に弥生とキャミィが揃っている時間帯である。
弥生がレフトからのセミクイックに跳び、キャミィは相変わらずオープン攻撃の準備。
パワーによっぽど自信が無いと、そこまでオープン攻撃ばかり打てないものだけど、あの子のパワーならまあ納得。
「お姉ちゃんは渚のお姉さんをお願いねー! 神崎先輩、私とキャミィさんのブロック-!」
「OK」
正直言って、セミクイックとオープン同時だと中々絞り辛いのよね。
「キャミィ! 吹っ飛ばしたりや!」
ここはキャミィにトスが上がる。 麻美と紗希がキャミィのジャンプに合わせてジャンプ。
「神崎先輩、手は前じゃなくてむしろ後ろ気味にー! 止めるんじゃなくて、手に当てて威力を弱めるつもりでー」
「あいよー!」
麻美の指示が飛ぶ。 ブロックの基本は前に手を出して、相手コートにはじき返すというもの。
それを麻美は、手をほぼ垂直よりちょっと後ろに構えている。
あれだと吸い込んじゃいそうだけど大丈夫かしら。
「っと……私はフォローね」
クロスを警戒したポジションを取る。 ただ、キャミィってコースの打ち分けってできるの?
割と適当に力任せに打ってるだけの気もする。
「テヤ!」
「うぇーい!」
麻美と紗希は、2人して謎の声を上げながらブロックする。
パァン!
強烈な音を上げながら撃ち込まれるスパイクを受け、麻美の腕が大きく後方に弾かれる。 しかしその分スパイクの威力は落ちていて、これは麻美の作戦勝ちと言える。
「亜美姉!」
「はいっ!」
幾分威力の減衰したキャミィのスパイクを、ブロックの後方で待機していた亜美が拾う。 軌道が変わったのによく反応するわね、あの子も。
「チャーンスボール!」
ブレイクチャンス。 私は助走距離を取って、即座にセミクイックを要求し助走に入る。
他にも、ブロックから着地した麻美と紗希は、それぞれAクイックとDクイックに跳んでいる。
前衛3人のコンビネーション。
「奈々美!」
「っし!」
体を大きく逸らして腰を捻り、上半身を戻す勢いで腕を振り抜く。
レフトからのクロスを打ち、上野さんのディグをものともせずに飛んでいく。
「よっし! 完璧!」
「奈々ちゃん! 2セット目、予定通り大活躍の大暴れだね」
「まぁね」
このまま2セット目を連取するわよ。
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