第170話 マジカルマジカル

 ☆亜美視点☆


 私達3人はフラワーパークを後にして、昼食を食べた後でマジカルランドへやってきた。

 そして今はその中のアトラクション、マジカルアドベンチャーへやって来ている。

 このアトラクションは2人1組でしか入れないので、私は希望ちゃんと一緒に入る事にした。

 入り口では、例によって魔法のステッキを貰い、アトラクションの中へ入る。

 私は内容を知っているので、何も言わずに希望ちゃんにお任せして進む。


 まずは、入ってすぐの扉である。

 これは、扉を開ける前にトラップを解除しないと、電流が流れて痛い思いをするギミックだ。


 バチィッ!


「はぅっ?! ビリビリした!」

「あははは」


 引っかかってる引っかかってる。

 希望ちゃんは、涙目になりながら私を振り返って──。


「亜美ちゃん、知ってたね?」

「そりゃ、去年夕ちゃんと来たもん。 夕ちゃんも引っかかってたよ。 お似合いだねぇ」

「むー」


 希望ちゃんは膨れっ面をしながらも、魔法のステッキでトラップを解除して扉を開ける。


 次の部屋は謎解き。

 部屋にある7個の燭台に、順番にステッキをかざして明かりを灯すのだけど、順番通りにやらないと最初からやり直しになる。

 ヒントは壁にあるんだけど、これもステッキを使わないと見えない。


「んー? 順番があるのかな?」


 希望ちゃんは適当に明かりを灯してみるが、すぐに消えてやり直しになってしまう。


「あ、壁に何かある」


 おー、気付くの早い。

 希望ちゃんはスタスタと壁の方へ歩いていく。


「んん? こうかな?」


 希望ちゃんが壁に向かってステッキを振ると、ヒントが浮かび上がる。

 希望ちゃんは「ふむふむ」と頷きながら、ヒントを読んで燭台の前に戻ってきた。


「ここが最初で、ここが2番目……」


 という風に全部で7箇所の燭台に明かりを灯した。

 すると、ガチャッと鍵が開く音がした。


「あ、開いた! 亜美ちゃん、次の部屋行こう」

「はーい」


 希望ちゃん、結構優秀だね。

 あっさりと謎解き終わらせちゃったよ。

 

 次の部屋は、敵の魔女さんとのシューティングバトルだ。

 魔女さんの魔法は、ステッキを横に持ってバリアを出して防ぎ、攻撃する時はステッキを縦に振る。

 2人で協力して、魔女さんを追い払うよ。


「えい!」

「やぁ!」


 2人して気の抜けるような声を上げながら、悪い魔女さんを追い払う事に成功した。


「やった!」

「うんうん」


 更に奥へ進むと、左右に魔法陣が描かれた床のある部屋に着いた。

 ここは、2人が左右の魔法陣に乗って、息を合わせてステッキを振らないと次に進めないギミックになっている。

 私達は、ヒント映像を頼りにステッキを振る。


 ピロリロリン!


「うわわ、一発成功しちゃったよ!」

「私達、息ぴったりって事だね」


 姉妹としては当然だね。

 血が繋がってなかろうが、私達の絆は本当の姉妹にだって負けていないのだ。

 ちなみに、夕ちゃんとは2回目で成功した。


 次が最後の部屋である。

 2本のステッキを台座の上に置く事で、宝箱の鍵が開きその宝箱に入っている鍵を使えば、出口の扉が開いて外に出られるのだ。


「開けるよ?」

「うん」


 希望ちゃんが扉を開けて、先に外に出る。

 私は後に続く。


「お、出てきたな。 早かったじゃないか」

「まあね。 私と希望ちゃんにかかればこんなもんだよ」

「最初の扉は痛かったよ……」

「あ、やっぱり引っかかったのか」

「亜美ちゃんってば、知ってて黙ってるんだもん。 ひどいよね?」

「ネタばらしたら楽しくないじゃん」

「そうだけど、痛いのは教えてよー」


 希望ちゃんが、ちょっとだけ怒ったように口を尖らせている。

 ふふ、可愛いなー。


「じゃじゃ、次は約束通り魔女の館へレッツゴー!」

「はぅ……ホラーハウスだよね?」

「まあ大丈夫だろ」


 不安そうな希望ちゃんをよそに、私と夕ちゃんはズカズカと目的のアトラクションを目指す。

 口コミを見たところ、怖い感じじゃないらしいけどどうなのだろう?

 案内図を見ながら。魔女の館というアトラクションへとやってきた。

 何ともおどろおどろしい建物である。

 希望ちゃんはもう、ガクガクブルブルと震えている。

 私達はその列に並び、順番を待つ。


「ゆ、夕也くん、中入ったら手握って良いかな?」

「ん? 良いけど?」

「む、私も良い?」


 希望ちゃんだけズルいと思うわけ。

 夕ちゃんは「お前は別に恐くないだろ?」と言ってきたけど、そういう問題じゃないんだよ。

 何とか食らいついて、OKを貰うことに成功した。

 私達は順番が回って来るまで雑談を始める。


「そういえば、今年のGWなんだけどどうする?」

「どうするって?」


 今年は奈央ちゃんから旅行に誘われてはいないのだ。

 というのも、奈央ちゃんはGWを利用してアメリカの春くんに会いに行くようなのだ。

 また皆で旅行に……と、楽しみにしていたのだけど……。


「別に奈央ちゃんがいなくても、皆で旅行には行けるだろ?」

「そうだけど、奈央ちゃんだけ除け者みたいになるじゃない?」

「でも、アメリカ行っちゃってるんじゃ仕方ないような?」


 希望ちゃんも、そんな事を言う。

 うー……。


「ダメだよぉ……やっぱり皆一緒じゃないと」


 今度、奈央ちゃんに訊いてみよう。

 日帰りでも良いから、何とか皆で遊びたいものである。

 そんなこんなを話していると、ようやく順番が回ってきた。

 私達は3人で館の中へ入っていく。

 私と希望ちゃんは、夕ちゃんの手を握りながら館内を歩き始めた。


「はぅー、暗いよぉ……この館、何で電気点けないのぉ? 電気代とか節約しなくていいよぅ」


 この子はまた何か言ってる……。

 そういうアトラクションなんだから仕方ないよ。

 まずは玄関エリアを抜けて、広間エリアという場所に入る。


「イッヒヒヒヒ……」

「はぅぅーっ!? こ、声がするよぉ!?」


 明らかに、プレーヤーで再生したような音声に対して、これでもかという程の悲鳴を上げて、夕ちゃんにしがみつく希望ちゃん。

 相変わらず怖がりだなぁ。


「魔女の館に入ってくるなんて……命知らずな人間もいるもんだねぇ。 あんた達は生きて帰さないよ、イーヒヒヒ」

「い、生きて帰れないのぉ?」

「希望は本当に、アトラクション楽しんでるよな……」

「そうだね、スタッフさんもやりがいあるよねこれは」


 希望ちゃんは既に涙目になり、夕ちゃんにがっちりとしがみついている。

 まあ、今回ばかりは大目に見るとしよう。

 広間エリアを出ると、狭い通路を歩いて行く。

 通路の左右の壁には、なんだか良く分からない絵画が飾られている。


 ガタッ!


「はぅぅっ?!」


 そのうちの1つが、音を立ててズレ落ちる。

 希望ちゃんはもう、物音だけでも飛び跳ねる程に怖がっている。

 通路を抜けると、小部屋に到着した。

 客室みたいな感じかな?

 ベッドにテーブル、壁には大きな鏡がある。

 にしても、この部屋で行き止まり?

 戻ろうにも、入り口の扉は開かなくなっている。

 多分この部屋の中に、先に進む道が隠されているのだろう。


「この鏡、私達の姿が映らないよぅ?」

「本当だな」

「鏡じゃないのかなこれ?」


 と、3人で鏡の前に立つと、急に鏡の中に人の姿が映り込む。

 それは、私達ではなく魔女の姿である。


「はぅぅっ!」

「あー、マジックミラーになってるのかな?」


 多分向こうからはこっちの姿が見えないようになっているのだろう、魔女はすぐに何処かへ去って行った。

 しばらくして、もう魔女が戻ってこないのを確認してから鏡を調べてみる。


「これ、横にずらせそうだな」

「あ、本当だ」


 鏡の下をよく見ると。小さなキャスターとレールが見える。

 夕ちゃんがその鏡をずらすと、予想通り部屋があった。

 良くできてるねー。


「ま、まだ続くのぉ……」

「あはは、頑張って希望ちゃん」


 鏡の先の部屋は、先程の部屋とは左右対称になっているだけの同じ間取りであった。

 扉を開けて、また通路を歩いて行く。

 通路の先の扉を潜ると、次は厨房かな?


 トントントン……


「うぅ、包丁が一人でに動いてるよぉ?」

「本当だねぇ」

「これどうなってんだ?」


 んー、よく見ると細ーいワイヤーのようなものが見える。

 おそらく上に何か機構があって、包丁を上下に動かしているのだろう。

 厨房をゆっくりと散策する。

 特に何も無さそう……?


「今日はお前を調理してやるよぉ!」

「はーぅーっ!?」


 急に声が聞こえてきたと思ったら、希望ちゃんが悲鳴を上げる。

 ここでは、誰か一人が魔女に連れていかれなければならないらしい。

 希望ちゃんを1人にするのは絶対ダメだし、ここは私が連れていかれるしかないね。


「じゃあ、私が魔女に捕まるから、早く助けに来てね」

「あ、亜美ちゃーん! 絶対助けるよぉぉぉ……死なないでねぇぇ」


 希望ちゃんは大袈裟だなぁ。

 私は「待ってるからねー」と手を振りながら魔女に連れて行かれた。

 

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