第165話 女だらけのショッピング

 ☆奈々美視点☆


 今日は夕也への誕生日プレゼントを買いに、市内まで出てきている。

 といっても、皆目的の物を購入したのでとりあえずはノルマ達成。

 ここからはただのショッピングよ。

 まあ、希望は先程洋服を買っていたけど。 おかげでお金無くなちゃったみたい。


「とりあえず、何か食べに行かない?」

「私もお腹空いたー」


 時間は昼前、人が増える前にレストランに入ってしまいたいところね。

 亜美達もそれに賛成して、近場のレストランへと入った。

 予想通り、少しずつ客が増えてきているようだ。

 

「希望ちゃんの分は私が出しておくね」

「ごめん、ありがとうね」


 亜美も夕也へのプレゼントを買って、だいぶお金使ってたと思うけどまだ余裕あるみたいね。

 私達はメニューを開いて、食べたいものを注文をする。


「亜美姉、お金大丈夫なの?」

「うん、おじさんちょっとまけてくれたから。 思ったよりも貯金できてたし」

「で、夕也の誕生日はどうするの? 日曜日だけど」

「んー、夕ちゃんはあまりパーティーとかしてほしいって言うタイプじゃないからねー」


 そうよね。 毎年亜美の誕生日と合同でやってたけど、今年は奈央主催で亜美の誕生日パーティーだけやったし……。


「私達だけでやる?」


 つまり幼馴染5人と麻美だけでということである。

 あの3人がいないと、ちょっと賑やかさには欠けるけれど。


「夕ちゃんに提案してみるよ」

「そうしてくれる?」


 結局はあいつ次第という事になる。

 この話はこれで終わりね。

 

「ねぇねぇ、バレー部1年の大会っていつ?」

「インターハイの後ぐらいに千葉1年生大会だっけ?」

「多分? 私達は人数少なかったからパスしたけど、今年の1年は多いから参加できそうね」

「夏かー! 楽しみだなー」


 今年の1年は練習見てても良く動けていると思う。

 月ノ木中以外からも来ていたりするし、レベルは凄く高い。

 だから、新人戦だけじゃなくて──。


「その前にインターハイでしょ? 部長も言ってたけど、うちは実力主義だから、あんたら1年だってレギュラーで出れる可能性もあるのよ?」

「そうだよ麻美ちゃん」

「インターハイでレギュラー!」

「うんうん、麻美ちゃんなら狙えると思うし」

「頑張る!」


 この子のブロックの素質を見出したのは、意外にも遥だったわね。

 なんか「ブロッカーの匂いがする」のだとか。

 確かに、この子の攻撃に対する嗅覚はかなりのものだと思う。


「今年は1年も優秀だし、夏が楽しみだよね」


 亜美の言う通りである。

 私達も、少しぐらいは楽させてもらいたいものである。

 

「お待たせいたしました。 オムライスの方」

「はーい」


 と、注文した昼食が運ばれてきた。

 私達はそれらを食べながら、会話を続ける。


「んぐんぐ」

「この後どうする?」

「まあ、適当にウインドウショッピングかしらね」

「そだね、誰かさんの財布はもうカラカラみたいだし」

「はぅ」


 この子、今月はまだまだ残ってるんだけど大丈夫なのかしら?

 それとも、貯金は貯金でちゃんと崩さずにあるのかしらね。


 という事で、私達は昼食を食べ終えて少し休憩してから街へ繰り出した。

 まあ見慣れたショッピングモールだから、そんなに見る物があるわけでもないんだけど。

 

「あ、この店新商品入ってるね」

「あら本当」


 私達御用達のコスメショップ。

 どうやら春の新色なんかも出ている様である。

 ウインドウショッピングのつもりではあったけど、気に入ったものがあれば買っても良いでしょう。


「おお、桜色のリップだって」

「へぇ、どれどれ」


 お試しの品を塗ってみる。

 んー、どうかしら? 私にはちょっと似合わないような気がするわねぇ。


「奈々ちゃんいいんじゃない?」

「そうかしら?」


 亜美はそう言ってくれるけど……。


「奈々美ちゃんはもうちょっと大人っぽい色の方が良いよね」

「そうよね」


 希望はわかっているようだ。 私は桜色のリップを置いて、少しそれより暗い感じのピンクのリップ手に取り塗ってみる。

 うん、しっくりくるわね。 私的にはこっちかな。

 この桜色の方はどっちかっていうと、亜美とか希望とか麻美に似合うわね。

 その亜美も桜色を試してる。


「どう?」

「可愛いじゃない」

「そう? んー、でももう、あんまりお金使えないしなぁ」

「結構使っちゃってるもんね」

「うん。 また貯めないと」


 どうでもいいけど、この子はどうやってお金貯めてるのかしら?

 お小遣いはもらってるでしょうけど、日々それなりに使ってるわよね?

 どこかから収入でもあるのかしら? この子ならあり得るわ。


「我慢かなー」

「ありゃ、私はどうしようかな?」


 麻美も迷っているようね。

 この子も小遣いは持ってる方だけど。


「んーんー! 買う!」


 この子、決断早いわね。

 まあ、麻美のいいとこではあるんだけど。

 悪くいえば、何も考えていないとも言えるけど。

 麻美はそのリップを持って会計へ向かった。

 私もこのリップ買おうかしら?

 うーん……。


「奈々美ちゃん迷ってる?」

「えぇ」

「買っちゃいなよぉ」


 亜美に言われて決めた。


「よーし! 私も買う!」


 そんなに高い物でもないし、ここで買わないと後悔しそうだし。

 そうと決めたら私も会計へ一直線よ。

 今度早速このリップ使って、宏太とデートでもしようかしらね。


 コスメショップをあとにして、次の店を物色する。

 もう全員完全にウインドウショッピングである。


「いやー、女子で集まると出費嵩むわね」

「そうだねぇ」

「すっからかんだよぅ……」

「私はまだ大丈夫」


 麻美の奴、意外と貯めこんでるのね。

 あんまり無駄遣いしてるの見ないし当然か。

 遊んでるように見えて、しっかりしてんのよね。

 

 次は電化製品のお店を物色。

 液晶テレビコーナーだとか、空気清浄機コーナーだとかを冷やかして回る。


「ヘアアイロン、色々あるんだねぇ」

「そうねー」


 私はたまに使う程度だけど、亜美とか希望は1回も使った事ないらしい。

 服とかには気を遣うのに、そこまでは頭が回らないらしいわね。

 まぁ、2人とも素材が良いから関係無いんだけど。


「そういえば、亜美姉も希望姉も髪伸ばさないの?」


 麻美が純粋な疑問を2人に投げかけた。

 2人は小さな頃からショートだものね。

 私も昔はショートだったけど、宏太が好きなアイドルがロングだって知って伸ばし始めたのよねー。

 これは内緒よ。


「うーん、あまり長いと手入れ大変そうで」

「そうそう」

「あっははは! わかる! お姉ちゃん櫛で梳かすの大変そうだもん」

「確かにねぇ」


 結構時間かかるのよね、シャンプーとか髪を乾かすのでも。

 だからと言って、短くする気もないけれど。


 次はパソコンのコーナー。


「んー、やっぱ買うなら自作かなー」

「じ、自作?!」


 麻美の言葉に、亜美が驚く。

 麻美は、パソコンについては少々うるさい。

 というのも、いわゆるネットゲームにどっぷりハマっているらしい。

 MMO? とかいうやつとかFPS? とかいうやつ。

 一度見せてもらったけど良く分かんなかったわ。

 麻美は亜美に、自作パソコンについて熱く語っている。


「そだ、亜美姉ってパソコン持ってないよね?」

「え、うん」

「今の時代、やっぱあった方が良いよ? お仕事とかでも使える前提なとこ多いよ?」

「そ、そうかな?」


 とかなんとか言って、何かゲームに勧誘する気じゃないでしょうね?

 この子ならあり得る。


「よーし、今度古くなったパソコン上げよう!」

「ええっ?! そ、そんな、いいよぉ」


 亜美が両手をぶんぶん振りながら遠慮しているが、麻美は構わずに「いいの! もう使ってないやつだから」と、強引に勧めていく。

 亜美はあまりの勢いに折れて「わ、わかったよぅ」とパソコンを貰う約束をしていた。

 でも実際、将来就職するなら使えるようになっておくには越したことないわね。


 私達は、家電量販店を出て、時計を確認する。


「結構いい時間になったね。 もうお金も無いしそろそろ戻ろうか?」

「そうねぇ。 ウインドウショッピングしてると、ついつい欲しくなっちゃうし」


 買おうと思えば、まだ財布の中身は残っているのだ。

 あまり使いたくないし、ここいらで退散するのがいいでしょう。

 私達は駅へ向かい、家路につくことにした。

 帰りは、夕也の誕生日パーティーについて話し合いながら帰るのであった。

 あいつ、パーティーするって言って快諾するかしら?


「楽しかったー!また皆で来ようね」

「うん、そうだね」


 麻美とは去年はあまりツルんでなかったけど、高校になって同じ部活に所属するようになったから、こうやってまた遊ぶ機会も増えるでしょう。

 あとは渚ね。

 あの子も麻美と仲良くなったみたいだし、近々一緒に遊ぶ機会もありそうだわ。

 私達は、いつも合流する十字路で、手を振り別れるのだった。

 

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