第145話 模様変え
☆亜美視点☆
奈央ちゃんにも、部屋の事を言われてさすがに気になり始めたわけだけど。
「んー……これでいいと思うんだけどなぁ?」
無駄な物一つ無い、自分の部屋を見てそう呟く。
そうしていると、廊下を通りかかった希望ちゃんが声を掛けてきた。
「どしたの亜美ちゃん?」
「んー? この部屋、そんなにダメかなーって思って」
「うんと、部屋としては別に普通だけど、女子の部屋としてはダメダメだね。 0点」
「0点なんだ……」
100点しか取ったことない私が、初めて取った0点である。
しかし、そこまで言われるとなんだか嫌になってくるね。
むー。
「よし、模様替えをしよう!」
「おお?! いいねいいね! お手伝いするよ!」
希望ちゃんも乗り気になって、手伝ってくれるらしい。
しかし、模様替えするにも色々と物が足りない。
まずはお買い物からだけど……。
「まずはホームセンターだよね」
「そうだね。 色々物が欲しいね」
私は通帳の貯金額を確認する。
うんと、使える金額は……まぁまぁあるね。
去年の6月にすっからかんになっていた貯金だけど、毎月のお小遣いを貯めておいて随分復活していた。
でも、ある程度は残しておかないと、夕ちゃんの誕生日プレゼント代を使うわけにはいかない。
「よし、じゃあ行こう!」
「おー!」
私と希望ちゃんは、2人で仲良くホームセンターへと向かう。
ホームセンターは駅から数分歩いた場所にあり、何でも揃う便利なお店だ。
◆◇◆◇◆◇
ホームセンターに着いた私達は、まず小物を見ていく。
「うーん」
「このドアノブカバー可愛い」
「ん?」
ドアノブカバー? そんなもの無くても別に……。
ということを希望ちゃんに言うと「そんなんだから0点なんだよ」と怒られてしまった。
「わかったよぅ」
私は希望ちゃんが選んだドアノブカバーを購入。
さらに希望ちゃんは、ピンクのテーブルクロスや小さな花瓶と造花なんかもどんどんカゴに入れていく。
わ、私に選択権は無いのかしら?
「次はカーペットとかカーテン見に行くよ」
「はーい」
もはや私の方が、希望ちゃんの買い物に付き合っているみたいになっていた。
カーテンコーナーへ移動してカーテンを選ぶ。
寸法は測っているので、あとは柄を選ぶだけ。
「んー、この青い水玉のカーテンでいいかなぁ」
「うんうん。 亜美ちゃんは青のイメージだもんね」
髪の色が青だもんねぇ。
イメージカラー青なんだねやっぱ。
私はそのカーテンを手に取って、希望ちゃんが持ってくれているカゴに入れる。
さて、次はカーペットだ。
「んーと、あ、この猫ちゃんのやつ可愛い!」
私はそのカーペットをみて一目惚れしてしまったので、それを手に取った。
「亜美ちゃんは猫好きだね」
「うんー大好きー」
「ボケねこは?」
「あれは猫さんじゃないよ」
希望ちゃんは。むっとした顔になって文句を言い始めた。
可愛くないんだもんあれ。
私は、ボケねこさんの良い所をひたすらに述べ続ける希望ちゃんに、適当に相槌を打ちながらカーペットを抱える。
「で、あの目がね?」
「わかったからー。 重いんだから早く会計済ませて帰るよぉ」
「むぅ」
私は話を切上げさせて、会計に向かう。
後は可愛らしいぬいぐるみの1つもあれば、それなりに良い感じの部屋になるのではないだろうか。
「よし、帰って早速模様替えするよ」
「うんうん」
私達は、大量の荷物を抱えて家へ戻る。
「帰ったら、可愛い猫のぬいぐるみ1つあげるね」
「え、いいの? ありがとー!」
買わなくて助かるならありがたい。
ちょっと貯金使っちゃったけど、予算内で収まったので良かったよ。
これで、私の部屋もちょっとは女の子の部屋っぽくなるよね。
◆◇◆◇◆◇
家に戻って早速模様替えを実施。 インテリアを買ってきた物に替えただけなのに、全然違う。
猫さんのカーペットを敷き、テーブルには買ってきたピンクのテーブルクロスを掛ける。
カーテンも、青と白の水玉の物に付け替えて、布団のシーツも買ってきた猫さんの物に替えた。
机に造花を飾って彩も加える。
最後に、希望ちゃんが部屋から持ってきてくれた、猫さんのぬいぐるみを置いた。
だいぶ女の子の部屋になったのではないだろうか。
「できた!」
「うんうん」
私は、誰かに見てもらうために奈々ちゃんを呼んでみた。
「へぇ、変わるもんね。 だいぶ女子っぽい部屋になったわね」
「えへへ」
「猫好きねぇ。 カーテンも猫にして統一感出すともっと良かったかも」
「あぅ、それは確かに」
そこは思い付かなかった。
確かに猫さんカーテンにして猫に埋め尽くされるのも悪くない。
まあ、でも買っちゃったし、しばらくはこのままでいくしかないね。
「夕也にも見せたら?」
「そうだね」
私は、スマホで夕ちゃんに連絡をすると、ベランダからやってきた。
「お? なんだなんだ、模様替えか?」
「うん」
「夕也くん、どう?」
希望ちゃんが夕也くんに訊くと。
「可愛いんじゃねーか? 少なくとも前よりはいい」
「そうよね。 前が殺風景過ぎたのよ」
「あ、あはは」
でも、部屋の雰囲気も変わって、なんていうか新鮮な気持ちだよ。
これで私の勉強効率もアップだね。
勉強で思い出した。
「宏ちゃん、期末大丈夫かな?」
「あー、そういやもうじきだな」
そう、もう来週なのだ。
宏ちゃんは期末試験でも赤点なしをクリアしないといけないのだ。
「大丈夫みたいよ? たまに見に行ってるけど1人でもちゃんとやってるわ」
奈々ちゃんが言う。
「そっか、じゃあ大丈夫そうだね」
宏ちゃんはやる気さえ出せば、ちゃんと出来るのだ。
期末が終われば春休み。 春休みに入ってすぐに、私達は全日本U-18の合宿に参加する。
この春も予定は目白押しだよ。
「もう高校生になって1年経つんだね」
「早いもんだな」
「そうだよね」
「年寄みたいなこと言ってるわねぇ……」
奈々ちゃんは冷静にツッコんでくるけど、でも本当に1年早かったなぁ。
この1年で色々あった。
希望ちゃんは夕ちゃんと付き合い始めたと思ったら、つい最近別れた。
私も希望ちゃんと恋敵になった。
奈々ちゃんと宏ちゃんもつき合い始めたし、奈央ちゃんにも、つい先日恋人が出来た。
周りを取り巻く環境が一気に変わったね。
「何を遠い目してるのよ?」
「んー? 色々あったなーって」
「まあそうね」
「4月からはどうなるんだろうねぇ」
「そだね。 特に私達3人の恋の行方」
「うっ」
夕ちゃんが、言葉を詰まらせる。
まだまだ、夕ちゃんの中では結論が出ないようだ。
私も希望ちゃんも気長に待つし、焦らなくてもいいよ。
「そういえば、ホワイトデーなんだけどな」
「ん? お返しくれるの?」
私のは、あんな小さいチョコだったし期待してないんだけど。
希望ちゃんへのお返しは、かなりの物を用意しないとダメだろうねぇ。
「3人でどっか行かないか?」
「……へ?」
「いいねぇ」
「あら、私もチョコ上げたのに誘ってくれないの?」
奈々ちゃんが、残念そうに言うと夕ちゃんは「お前は宏太と出掛けてろ」と返していた。
まぁそうだよね。
奈々ちゃんは「誘ってくれるかしらねぇ」と、あまり宏ちゃんには期待していないようだ。
それにしても、また3人でお出かけかぁ。 私まで本当に良いのだろうか?
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