第137話 絆

 ☆亜美視点☆


 私達は、市内に遊びに来てボウリングを楽しんでいます。

 私は、夕ちゃんと奈々ちゃんのチームに入って活躍中。

 少し他のチームの偵察をする事にした。


「やほー、希望ちゃん達はどう?」


 まずは希望ちゃんのいるチーム。

 メンバーは春くんと奈央ちゃん。

 

「あ、亜美ちゃん。 私が足引っ張りまくりで……」


 スコアを見ると、奈央ちゃんは5投目までパーフェクトできている。

 春くんもなんだかんだですでに90を出しているし侮れない。

 希望ちゃんは、3つぐらいGが並んでる。


「希望ちゃん頑張って!」

「頑張ります……」


 次は宏ちゃんのいるチーム。

 紗希ちゃんと遥ちゃんもいて、中々に強敵チームだ。


「宏ちゃんのとこはどんな感じ?」

「おう? あぁ、皆調子良くスコア稼いでるぞ」


 スコアを見てみると、紗希ちゃんと遥ちゃんはさすがに凄い。

 最終的には軽く200を超えそうだよ。

 宏ちゃんも同じくらい稼いでいる。

 やっぱり3人はどんなスポーツもこなすなぁ。


「頑張ってね」

「そっちもねー」


 偵察を終えて、自チームのレーンに戻って来ると、夕ちゃんが投球を終えて、座ったところだった。

 またストライクを出したみたい。

 今日は夕ちゃんも調子良さそう。

 なんて思って見ていると、奈々ちゃんが夕ちゃんのほっぺにチューするのが見えた。


「何してるのかなー?」

「びくっ」

「あら、おかえり。 何ってほっぺにキスしただけじゃない」


 ストライク出したらチューしてあげるとか言ってたけど、油断も隙もないね奈々ちゃん。


「宏ちゃんに言いつけるよ!」

「ほっぺぐらい良いでしょ別に」

「むぅ……」


 夕ちゃんを睨むと、夕ちゃんはそっぽを向いてしまう。

 私にはダメだって言ったのに!


「私がストライク取ったら、ほっぺにチューして!」


 私はそれだけ言って、返答も聞かずに、ボールを持って投球に向かう。


「えいっ!」


 私の投げたボールは綺麗にコースを転がり、完璧にポケットに入ると、見事にストライク。

 これで6連続だよ。

 私は笑顔で振り返る。


「あ、あれ?」


 夕ちゃんがいなくなっていると思ったら、私みたいに偵察しに行ってしまったようだ。

 ストライク取ったのに。


「むぅ」

「おかえり亜美」

「次、奈々ちゃんだよ」

「そう不機嫌にならないの」

「あぅ」


 奈々ちゃんの優しいチョップが、私の頭を叩く。

 私の事を無視されたのだ。 不機嫌にもなるというものである。


「大丈夫よ。 あいつはちゃんと、真剣に考えてるわ」

「え?」


 そう言って、奈々ちゃんは投球に向かった。

 

 ◆◇◆◇◆◇


 1ゲーム終えて、各チームの得点を確認する。


 夕ちゃんチーム 私300 夕ちゃん207 奈々ちゃん200の計707点。


「んー、夕也に負けた」

「亜美には何も言うまい……」


 希望ちゃんチーム 希望ちゃん118 春人くん189 奈央ちゃん298プラス110の初期点で計715点


 んー、負けた!


 最後は宏ちゃんチーム 宏太ちゃん205 紗希ちゃん238 遥ちゃん229プラス初期点50の計722点


 宏ちゃんチームが優勝だ。


「ふふん、遊びなら任せなさい」

「最近は勉強ばかりだったから、ストレス発散になったぜ」

「たまには良いな、ボウリング」


 3人とも上機嫌である。


「しかし、亜美コンすげーな。 ほとんど横一線じゃねーか」

「ふふ、人間だけどね」


 このままでは、本当に人間扱いされなくなりそうだ。

 いや、既にされていないまであるよ。


 ◆◇◆◇◆◇


 私達はボウリングを1ゲームで切り上げて、ショッピングモールへやってきた。

 何もいらないという宏ちゃんに対して、無理矢理にでも何かプレゼントしたいという皆。

 宏ちゃんは悩んだ末に、新しいスニーカーが欲しいと折れたので、靴屋さんでスニーカーを買う。

 皆からのプレゼントという事で、代金は皆で割り勘。

 奈々ちゃんが代表して、宏ちゃんに手渡した。


「悪いな、皆」

「気にしない気にしない。 友達っしょー?」


 申し訳無さそうにする宏ちゃんに、紗希ちゃんがそう言って、皆も「そうそう」と頷く。

 いつもは雑に扱われる宏ちゃんだけど、皆からはちゃんと愛されているのだ。


 靴屋を出た後は、例の絆ブレスレットを見に行くために、この間も行ったアクセサリーショップへ入る。


「これ?」

「うん」


 お店にはまだ、それが並んでいた。

 皆は迷わず手に取って、会計に並んだ。

 店を出てすぐに、皆してブレスレットを着ける。


「私達はいつまでも仲間だー!」

「おー」


 円陣を組んで、皆でブレスレットを着けた手を出し重ねるのだった。


 ショッピングモールを練り歩いた後はカラオケに入る。

 カラオケは久し振りだよ。


「1番 藍沢奈々美! 歌います」


 歌が大好きな奈々ちゃんがトップバッターで歌う。

 テンションアゲアゲになる曲セレクトだ。


「春くんはカラオケ初めて?

「はい、歌もあんまり得意では……」

「北上君は遊び慣れてないんだねー」


 紗希ちゃんの言うように、あまり遊び慣れていないのだろう。

 強引にマイクを渡して、春くんに歌わせようとする。

 困ったような表情を見せる春くんに、奈央ちゃんが助け舟を出す。


「デュエットしましょう」


 助け舟……なのかなぁ?

 春くんは諦めてマイクを受け取り、奈央ちゃんとデュエットすることにしたらしい。

 

 奈央ちゃんもさることながら、春くんも綺麗な歌声を持っていた。

 勿体ないなぁ。

 2人が歌い終わると、皆で拍手する。

 

「ありがと」

「あんたじゃないわよ!」

「えー……」


 奈央ちゃんがぶーぶー文句を言う。

 可愛いなぁ。


「んじゃ次は亜美ちゃんどうぞ」


 奈央ちゃんからマイクを受け取る。

 んー、どうせなら私も夕ちゃんとデュエットしたいなぁ。


「亜美ちゃん、私と歌お」


 と、希望ちゃんがマイクを握って言う。


「うん」


 希望ちゃんとも歌いたいしいいね。

 2人が好きな曲を入れて、立ち上がって踊りながら歌う。

 希望ちゃんこういうのは恥ずかしくないんだね。


「私はー夕ちゃんを愛してるー」

「おー! 歌詞変えいいねー」

「いやいや……恥いからやめろ」


 私は勝手に歌詞を変えて、夕ちゃんに愛の告白をするも、やめろと言われてしまった。

 その後も順番にマイクを回して歌っていく。

 皆、歌上手いなぁ。


 2時間ほどみっちり歌った私達は、カラオケを後にして帰途につく。


「いやー、楽しかったわねー」


 奈々ちゃんが歩きながらそう言うと、皆も「そうだねー」と、頷く。

 春くんも「楽しかったです」と言ってくれた。

 私も久々に目いっぱい遊んだ気がするよ。


「来週はテスト結果が帰ってくるね?」

「忘れてたんだから言うなよー」


 私は宏ちゃんに向かって話しかける。

 テストのことは忘れていたらしい。 まあ、遊んでる時はそうだよね。


「佐々木くん頑張ったんだし、大丈夫だよ」


 希望ちゃんが両手をぐっとしてそう言う。

 本当に頑張ったし、大丈夫だよね。


 ◆◇◆◇◆◇


 翌週、テスト結果が返ってきた。

 宏ちゃんはなんと人生初の平均70点という結果を出し、赤点も無し。

 まずは第一関門の実力試験を乗り越えた。

 後は、期末試験をクリアすれば留年回避できるということなので、その時にまた家庭教師してあげよう。

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