第12話 さあ、準備だ!

朝日が街を照らし始めた早朝、三人の姿は定宿の酒場兼用の食堂にあった。


グレイハウンド討伐後、彼らはいつものリオノーラとの訓練を行いつつ、討伐依頼をこなす日々。

その訓練の成果だが、少しずつだが着実に成果に表れてきている。


個人技の向上しかり三人の連携プレーしかりと、それは依頼達成の時間短縮という形で表れ始めている。

そんなパーティにある話が持ち掛けられた。


それは、意外なところからであった・・・・・ギルドからである。


「アル様~、ちょっと良いですか?」


朝早くから、俺達はギルドに依頼を探しに来ていた。

その際、いつもの顔馴染みの受付嬢シーナさんより話を貰ったのだ。


「アル様達は、隣の街デボネアで魔物暴走スタンピードが発生しそうという噂は聞かれています?」


「ええ、宿屋の酒場でそんな噂を耳にしたことはありますが、本当だったんですね・・・」


俺はその街の名前を聞いて、再びアイツを思い出した。


「どうしました、アル様?」


「い、いえ、なにも・・・」


「そうですか?。それでもし、皆さんが良ければなんですが~・・・」


「・・・まさか、うちらも協力して欲しい、とか?」


「はい、そのまさかで・・・・・・」


「ちょ、ちょっと待ってください!。うちらのパーティですが、やっとEランクになったようなとこですよ?。さすがに、荷が重すぎると思います!」


「すみません・・・、ですがギルドの方針で力があるパーティには参加して欲しい、と言われていまして。アル様のパーティはCランクのリオノーラ様もいらっしゃいますし、最近ではだいぶ力を付けている様ですし・・・。依頼の内容としては、討伐は勿論ですが、偵察や調査だけでも大丈夫なんですよ!」


シーナは、上目遣いにアルを見やる。

アルとて出来る事なら困ってる人達を助けたいと思っている。それは冒険者なら誰でも考える事だろう。


しかし、いかんせん自分達は到底力になれるとは思えなかった。少し前まで最底辺ランクだったのだから。

今行っても、返り討ちにあるのが関の山だろう。


「う~ん・・・とにかく話は分かりました。ですが、自分だけでは決められない事なので、仲間と相談しますので少し待って下さい」


「その通りですね。でも、検討して頂けるのですね!。ありがとうございます!。良いお返事を期待致します!!」


シーナは、キラキラした目でアルを見つめ返してくる。

それにドギマギしながら、アルはお辞儀をして仲間の元に戻ってきた。





俺達は、ギルド内の酒場でテーブルを囲んでいる。

さっきシーナさんから聞いた・・・お願いされた話を、二人に正直に話してみた。


「・・・という事だが、二人はどうだ?。今の話、受けるか受けないか・・・」


「あたしはちょっとな~・・・、だって強そうなモンスターに出会ったらどうするの?」


「ふむ、私はこれはチャンスだと思うがな。このパーティがもっと強くなる為の」


「なるほどな。エメルダが言うように、確かに自分達より強いモンスターが出る可能性はある。だけどさ、このままこの街の依頼を受け続けても、たかが知れているじゃないか?」


「そりゃ~~そうだけど・・・。報酬だって知れてる金額し・・・」


「もし強い敵が来たら、私が相手になるさ。私だって本気でやれば、そこそこ強いぞ?」


「そうだな、一度リオノーラが魔法でモンスターを倒すところをみてみたいしな」


「ま、このパーティのリーダーはアルさんだし、リーダーが決めればあたしはついていくよ」


「じゃあ、依頼受けてみるか。実はさ、隣町のデボネアって俺の幼馴染の嫁ぎ先なんだ。その街に危険が迫ってるって思うとな・・・」


「そうだったの?。なんで、それ先に言ってくれないのよー!」


「それなら、尚更依頼を受けた方が良いんじゃないのか?」


「先にそんな事言って先入観与えたら、二人ともよく考えもせずに受けるって言うんじゃないかと思ってさ・・・」


俺は、なるべく余計な情報を与えずに、自分たちの意見を言って欲しかったから、そんな余計な情報は入れなかったのだ。


だがこれで、三人の気持ちが一緒になったので、俺はこの依頼を受けることにしたので、改めてシーナさんの所に行くことにした。




「シーナさん、さっきの話ですけど・・・」


ちょうど誰も並んでなかったので、俺はさっきの依頼を受ける旨を話した。


「ありがとうございます!、アル様!!。本当に助かります!。でも、こんなお願いして今更ですが、くれぐれも無理はしないでくださいね!。アル様に何かあったら、私は・・・」


急に顔を俯いて、呟くシーナさんの顔は申し訳なさそうにしている。


「気にしないで下さい!。これは俺達が決めた決定です。シーナさんが気にする事ないですから!。それに偵察ぐらいなら、俺らにも出来ると思いますし」


俺は無理やり笑顔を作って、シーナさんを安心させようとした。

彼女は、それが俺の作り笑顔と分かっていても、その気持ちが嬉しかったので


「はい!。では、依頼書を作成しますので、少々お待ちください」


と笑顔で書類を作り出した。

やっぱり、シーナさんは笑顔の方がいい!。うん、絶対!。そう思いながら、彼女を眺めていた。


「では、これが依頼書です。これはギルドマスター限定依頼ですので、報酬は少し色がついております。頑張ってくださいね!」


「ありがとうございます!。それでは準備が出来次第、向かうようにしますね。必ず戻ってきますから安心して下さい!」


「はい!、きっとですよ!?。お待ちしてますから!!」



俺はシーナさんと別れて、仲間の元に戻ってきた。

これから色々と準備をしなくちゃいけないんで、俺達はギルドを足早に出た

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