第一章

第6話 始まり

「あたしと一緒に・・・パーティ組んでくれないかな~?」


「えぇ、俺とパーティを・・・?」


「うん、アルもソロでやってるんでしょ?。だったら、二人でやれば効率は2倍よ?。それに、アルは強いからモンスター出てきても安心だし」


「まぁ効率が良くなるのは魅力だけど、俺そんなに強くないよ。ゴブリンぐらいなら何とかなるけど、それより強いのは正直自信ないし・・・」


「だいじょーぶ!、この辺りなら出てもゴブリンかコボルドぐらいじゃない?。だったら平気平気!。ちなみにあたし、盗賊シーフだから敵の居場所も少しなら分かるし!」


「じゃあ、なんであんな所で襲われてたのさ?」


「あ、あれは・・・、急に催して我慢できなくなって、そっちに意識しちゃったから・・・」


「そんな事だから、今日みたいなことになるんでしょ!。どこで何が起こるかわからないから、気をつけなきゃ駄目だよ!」


「はーーい、以後気をつけます・・・・・シュン」


だがしかし、確かにパーティを組みたいと思ったことはあるし、パーティに入れて貰おうとした事もあるが、見ず知らずの他人とコミュニケーションを取るのが少し苦手である為、なかなか自分からパーティに進んで声を掛けることは出来なかった。


「ホントに俺でいいのか?」


「アルが良いんだよ。アル以外には考えられないよ~」


ここまで言ってくれる人は今までいなかったし、正直嬉しく思う。でも・・・、自分には自信がなかった。何か失敗したり、相手の気分を悪くしたらどうしよう・・・そういう事ばっかり考えてしまう。


エメルダは好感触を得たのか、ダメ押しをしてきた。


「アルゥ~~~、パーティ組んでくれたらぁ~~~・・・」


「な、何だよ――?」


「語尾に”にゃ”って付けて話してあげるにゃ~~~」


「それかよ!!ってか、もう付いてるんですけど!?。ホントはこっちの方が普通なんじゃないの!?」


「嫌かにゃ?」


「いえ、むしろ・・・ある意味ご褒美です」


「ほほぅ~、アルはそういう趣味があったんだにゃ~」


「そ、それは違うぞ!。あくまで一般的な猫獣人のイメージに即して、”にゃ”を付けた方が可愛いと思うだけで・・・。断じて俺のしゅ、趣味ではないので間違えるなよ」


「そ、そうなんだ・・・ね」


「な、なんだよ、その遠くを見るような目で俺を見るな!。そ、そんな事よりパーティの件だけど、俺としては魅力的な話だよ。やってみたいと思う・・・、よ、よろしく頼むよ」


「ホント?ホントに!?、ヤッタ――――!」


エメルダはホントに嬉しそうに喜んでくれた。それを見たら、何故か自分も嬉しくなって・・・

これがパーティなのか・・・。共に喜び共に悲しみ共に戦う・・・


俺達のパーティは、今ここから始まるんだ!

そう思うと、体の芯から熱いものが湧いて来る気がする。


そして二人は、とてもいい気分で酒場を後にするのだった。


      ◇



「ふぅ~~~・・・、少し酔ったな。でも、いつもより何倍も良い気分だ!・・・・・・お前がいなければ、な!」


「ふえ??」


「なんでお前が、俺の部屋にいるんだ!?」


「え~?、忘れたの?。ここに来る前に言ったじゃないー、お礼がしたいって!」


「だーかーらーー!、それは報酬の半分でいいってい言っただろー!?。何度言わすんだよー!」


「あれはあれ、これはこれ。私はちゃんとお礼がしたいの!」


「わかったわかったよ。で?、どんなお礼がしたいんだ?。俺は疲れてるし酔ってるから、早く寝たいんだが・・・?」


ジト目でエメルダを睨むと、彼女はさっきとは違う妖しい目つきでこちらを見つめてきた。アルはその瞬間、頭の中を支配したのは邪な想いだった。目の前にいるこの女を、抱きたい・・・


な、なんだこれは?。体が熱くなって、どうしようもなくなる・・・

しまった、薬でも盛られたか・・・?


「お、おい!、俺に何をした・・・?」


「勘違いしないで、アル。私は何もしていないわ。ただ・・・私達獣人の女は気に入った男を見つけると、自然と体からフェロモンみたいなのが出てしまうのよ」


「フェロモン・・・?。じゃあ今、俺がこんな状態になってるのは、そのフェロモンって奴のせいなのか?」


「そう、多分ね。私も初めての経験で確証はないのよ。でも、多分間違いない。私は貴方の事を気に入ってしまったもの。それにお酒を飲んだのも影響してるのかしら。自制で抑えられなくなってるみたい・・・」


「気に入ったって言われても・・・、今日初めて会ったばかりだぞ?」


「あら?、かわいい事言うのね。男と女がそういう関係になるのに、時間なんて関係ある?」


「・・・だけど、それにしても早くないか?。よく考えた方がいい、絶対!」


「ふふ、そうね。よく考えてみようかしら・・・・・・多分、今以上に気に入ってしまうのは間違いないと思うけど・・・」


ま、まずい!。このままでは、間違いなく間違いが起きる、賭けてもいい。どうする?どうする??。


ってか。言葉遣いが年上お姉さん系みたいになってるけど・・・。

とか考えているうちに、ベッドに座っている俺の傍にエメルダがすすすっと近づいてきた。


エメルダの目は、既にトロ~ンとしており最早、何を言っても聞きそうにない。

そして、彼女は俺に覆いかぶさってきた。俺はエメルダを抱えたまま仰向けにベッドに倒れこんだ。


エメルダからは、女の甘い香りが鼻孔を刺激する。

彼女の豊満な胸に顔をうずめて、ムチャクチャにしてみたい願望に襲われる。


もう我慢が出来ずに、彼女のほほを両手で挟んでキスをしようとした・・・・・・が、彼女の体は力が既に抜けており、なんと目もしっかりと閉じていた・・・


「へ?、・・・・・・寝ちゃったの??。くっ・・・、ここまで盛り上げておいて!」


アルは、ぶつけようの無いこの感情を持て余してしまった。


「俺はどうすりゃいいんだよ~~・・・」


そう思いつつも、安心したような少し残念なような顔をして、彼女をベッドに寝かせて自分はソファーに体を預けたのだった。


そして、明日はギルドでパーティ申請して依頼を受けて・・・と思いを馳せながら眠りに落ちていった。

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