第5話 パーティ結成?

「何か・・・キモイですね・・・オェ」


「良いよ、俺が剥ぎ取るからそっとしといて」


戦闘の後、街に帰るまでに一応ゴブリンの素材を剥ぎ取る。といっても、大して使える部分は少ないので、討伐した際に証として持っていく左耳を剥いでいるのだ。


獣人娘は、素材を剥ぎ取る俺の手元から目を逸らしている。かくいう俺も、殆ど狩った事がないので覚束ない手で剥ぎ取っている。


冒険者になったからには、これぐらい普通にできるのだろう。だが俺は、以前にフィオナの前で一度ゴブリンを討伐した際に、彼女に泣かれてしまったのだ。怖いし危ないし気持ち悪いから、もう止めて!と。


それ以来、ギルドの依頼は採取やお手伝い系をメインにして討伐物は避けてきた。どうしても討伐物しかない場合、一人で行っていたのだが片手で数えられる程度だ。


「さて、剥ぎ取り終わったから行こうか」


「このモンスター、このままにしておいていいんですか?」


「うん、大丈夫だよ。残りは動物か魔物が処理してくれるから。魔石でも出るなら、ちゃんと回収するけど」


「はぁ、そういうもんなんですね・・・」


魔石は、ダンジョンと呼ばれる場所に出るモンスターを倒した後、モンスターが霧のように消える際に石を残していくのだ。その石が魔石と呼ばれるもので、魔法具の素材になったり魔術師が魔法を唱える際に補助として使われたりする貴重な石だ。モンスターを倒した証明にもなるのだ。ギルドで魔石の買取もしている。


ただ、ダンジョン以外に出没するモンスターにはこれが適用されない。倒したらそのままなのだ。その為に倒したモンスターの体の一部を持ち帰る。ゴブリンは大して使えるところがないが、その他のモンスターだと皮膚や鱗、角などを持ち帰れば高額で買い取ってもらえるのだ。


(俺、誰に向かって説明してるんだろ?)

俺達は街道に戻り、街へ向かって歩き出した。


「ところでさ~、あんな所で何してたの?」


「え?・・・あ、あの・・・それは・・・分かりませんか?」


獣人娘は少し赤くなりながら、上目使いに言ってきた・・・

俺は最初分からなかったが、あぁ~と納得した。そりゃ、女の子の口からオシッコしてた~なんて言いづらいわな。


「あ、なるほどね・・・、それでゴブリンが寄ってきたのか」


「はい、多分・・・そうだと思います」


俗説ではゴブリンは婦女子を攫った後に襲って、子を孕ませると言われている。

ただ、実際はそんな事はないらしいが、人族の排泄物の匂いにモンスターが引き寄せられる事は実際あるようなのだ。それが女の物であれば、尚更であろう・・・

俺は、訳知った顔で頷いたが、獣人娘は・・・


「あ!、勘違いしてるかもしれないけど、小っちゃい方だからね!」


と訂正してきた。

いや、別に大きくても小さくてもどっちでもいいよ!、俺そっちの方の趣味無いからね!。ホントだからね!!


「まあ、今度からは用を足すときは気を付けなよ?」


「は、はい―――」


「一人でうろついてたの?。廻りには他に見当たらなかったけど」


「はい、今日は一人で薬草の採取をしてて。いつも行くパーティがあったんですが・・・・・・」


「今日はそのパーティ、休みか何かだった?」


「いえ・・・、あたし・・・パーティから追い出されちゃって・・・・・・グズッ」


最後の方は鼻声になっていた。

俺は掛ける言葉がなくて、何故か頭を撫でてやっていた。


「ウウッ・・・・・・ふみゅ~~~」


泣き声が途中から、気持ち良さげが声に変った。

最初、嫌がるかな?と思ったが、意外と気持ち良さそうだ。良かった・・・

そして俺も、モフモフした耳を触るのが気持ち良いと思ってるのは内緒だ。




暫くしてようやく街に到着したが、離れる気配が無い・・・


「着いたけど・・・?」


「はい、ありがとうございました・・・」


・・・

・・・・

・・・・・


「あ、あの、どうしたの?。もう好きなとこに行っていいんだよ?」


「・・・・・・あたし・・・行くところがないんです」


「え?、だって街に行きたいって―――。泊ってるとこは?」


「お金、全然無いんです。だから、泊る所も無いんです。それで薬草採取の依頼を」


「あぁなるほど、それでね。じゃあ、これ良かったら持ってって」


そう言って、俺はさっき採取したばかりアサギリ草を布袋から出して渡してあげた。多分、量的には問題無いはずだ。


「え!?、それは悪いです!。助けてもらった上に、薬草まで頂くなんて・・・」


「気にしないで。俺は依頼受けていたわけじゃないからさ。それ持ってけば、2日ぐらいの宿代にはなるだろ?」


「うぐぅ・・・、欲しい、欲しいけど。やっぱ、それまでして貰った冒険者として終わってしまうので、受け取れません」


「君、意外と頑固だね・・・」


「あたしはキミではありません。私の名前はエメルダといいます!」


「いや、まあいいけど・・・俺はアルだ。ん~じゃあ、こうしよう。俺がこのアサギリ草を渡してエメルダが依頼達成をする」


「いや、だから・・・」


「最後まで聞いて!。君が依頼達成した報酬を折半する。君は依頼が達成して報酬とギルドの功績が上がる。俺は薬草を普通に売るだけより、貰える金が多くなる。悪くないだろ、どうだ?」


「た、確かに・・・。お互いウィンウィンってやつですね!」


「よし、契約成立だ。あはは」


「では、早速ギルドに行って報告してきます。だから、絶対にここで待っててくださいね!。逃げないで下さいよ!」


「あ、待って!。ゴブリンの耳も持ってって!。少しはお金になるはずだから」


エメルダは最初気持ち悪そうにしていたが、諦めたのかそれも持ってピューーッとギルド内に入って行った。俺は、さっさと逃げようと思ったのだが、先に釘を刺されてしまった。気付かれてたかな?。


まあ、仕方ない。戻ってくるまで待ってるか・・・。暫くギルドの外で待っていると、ニコニコしながらエメルダが戻ってきた。


「只今、戻りました!。じゃ、行きましょ―!」


「おかえり・・・って、どこ行くつもりなのさ?」


「アルさんの宿屋ですけど?、どこ行くと思ってたんですか?」


「何で俺の泊ってる宿に来るんだよ?、他にもまだあるだろ?」


「何でって言っても、そりゃお礼がしたいからです」


「お礼なら報酬の半分を貰うだけだろ?。他に何があるんだよ?」


「いいから付いて来てください!」




そうこうしてる内に、俺の宿に着いた。しかし、ここって何で知ってるんだ?。

どうして知ってるんだ?って聞いたら、「女の感です!」って・・・。


この子、ちょっと色んな意味でヤバい娘かもしれない、気をつけなきゃ。

気を取り直して、俺達は取り敢えず宿屋の1階にある食堂兼酒場で夕食を取ることにした。


まず、最初の飲み物を注文したのだが、ここで新たな真実を知ったのだ。彼女は猫人族であり、何と俺より一つ歳が上だったのである。


「ええ!?、エメルダって俺の1こ上なの!?」


「そうみたいね~。でも呼び捨てで構わないわよ。だって命の恩人だもの」


「見た目俺より年下かと思ってたが・・・」


確かに見た目は、どう見ても年下だ。髪は金色に近い柚子色のショートヘアで、頭にはフサフサの三角の耳、そして良く見ると胸には立派な双丘が見てとれる。

す、素晴らしい・・・眼福であります。

そして、猫にしては珍しいモフモフな尻尾がある。あぁ、触りたいモフりたい。


「でもまあ、歳には驚いたがもっと驚いたことがあるよ・・・」


「他に何があるのよ・・・?」


「言葉尻に『~にゃ』って付けないのな」


「そんなん言うかーーーーーーーー!!」


「声、でけーーーよ!」


突然大声出した俺達を、酒場内の酔客が胡散臭そうに見る。慌てて、下を向いた時に飲み物が届いた。

俺は麦酒にしたが、エメルダはエールを頼んだのだ。年上だから何を飲んでもいいのだが、見た目子供なので違和感が半端ない。


「取り敢えず、乾杯しよ!」


「ですね、それでは~~」


「「乾杯ーーーー!」」


ウグッウグッウグッ・・・・ップハーーーーー!。

かぁ~、この一杯の為に生きてるな~~・・・・・・


あ、これ俺が言ってるんじゃないよ。オヤジ化した彼女だからね。

エメルダ・・・酔うの早過ぎやしないかい?

俺はチビチビ飲んでるのだが、エメルダって酒弱いのかな・・・


「ねぇ~、ところでアル~~」


ん?、なんだ?さっきまでさん付けだったのに、今は呼び捨て?

いや、まあ全然構わないんだけど~年上だし・・・でも、なんか違うな・・・


「あたしと一緒に・・・パーティ組んでくれないかな~?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る