第2話 冒険者ギルド


ギーー カランカラン・・・


観音開きのドアを開けると、そこには多くの冒険者達がたむろしていた。

この冒険者ギルドには酒場が併設されており昼間っから一杯引っ掛けている者や、依頼掲示板を見ながら仲間とあーだこーだと相談してる姿もある。


さすがに泥酔している者はいないが、夜になるとここは初心者には入りずらい場所になる。だから、俺はいつも夕方までに依頼を終えるよう心掛けている。すると、ここの常連の冒険者から声が掛かる。


「おう、アルか~~。一杯飲むか?」


「ありがとう!。でもいつも奢ってもらってばかりじゃ悪いから・・・」


「気にするな!、今日は割の良い仕事で儲けたからさ~」


「そ、そうなんだ・・・。と、とにかく依頼だけ完了してこなきゃ・・・。またあとで!」


「ったく~~、つれね~なぁ~・・・」


と常連の冒険者から誘いを受けたが、最後には必ず絡まれるからやんわりと断りを入れて、受付まで来た。ちなみに、お酒は18歳になると飲むことが出来るのだ。


受付の少し手前で止まり、何ヶ所かある受付窓を見ると、いつも担当してくれてる受付嬢さんがまだいてくれたので、安心してその場所に行く。


「あ、アル様。依頼完了の報告ですか?」


「はい、シーナさん。無事完了しました!」


「いつもありがとうございます!。最近は、なかなか採取の依頼を受けてくれる人が少なくて・・・。だからアル様には本当に助かっているのです」


「い、いえ・・・。俺はランクFですから、これぐらいしかお手伝い出来なくて・・・。なんか恥ずかしいです」


「そんな事ありません!。これも立派な依頼ですし、ポーションを作ることはこのギルドを助けることにもなるのです。ですから、もっと自信をお持ち下さい!」


「は、はい。ありがとうございます!。これからも頑張ります!」


「ふふ、それでこそアル様ですわ」


シーナさんはそういうと、可愛らしく微笑んだ。彼女は、スレンダーな体に耳の下ぐらいまで伸ばした美しい銀髪であり、誰もが見惚れるクォーターのエルフさんだ。

勿論、このギルドの中でも1,2を争う美人であり彼女を慕う者も数多くいる。


自分もその一人なのだが、好きというより憧れているという方が近いかもしれない。

見た目は自分より2~3つ上ぐらいじゃないだろうか・・・。さすがに女性に歳を聞くのは憚れるので、あくまで想像だが・・・。おっと、後ろに並び始めたからとっとと依頼完了をしておこう。


「それでは、これが依頼のアサギリ草。少し余計に取ってきてあります。」


「はい、それでは鑑定してきますので少しお待ちを・・・」


「あ、それではついでにコレも・・・。近くに生えていましたので、一緒に採取してきました」


「え!?、コレ・・・、月夜草じゃないですか!」


「ええ、そうですね。自分でもビックリしています、ははは」


「助かります!。じゃ、一緒に鑑定してきますね!」


「はい、お願いします」


そう言って、シーナさんはパタパタと奥に消えていった。

なんか、子犬みたいな感じで、可愛いなぁ~・・・と思い、つい頬が緩んでしまう。


容姿も仕草も可愛いのに、いざとなると大人の女性な芯の通った部分を見せてくれる彼女が自分の彼女になってくれたなら、どんなに幸せか・・・


ふぅ・・・、ついこの前フィオナに振られたばかりで、もうこれだもんな・・・

俺、フィオナの事どう思っていたんだろう、ホントに好きだったんだろうか・・・


単に小さい頃から一緒だったから好きだ、と思っていただけなのか・・・

いや・・・、確かにフィオナの事は好きだった。でもそれは・・・


「お待たせしました!。確かに、両方とも間違いありませんでした。あ、あの、アル様・・・?」


「へ?、あ、あぁ、そうですか。良かったですね~、はは」


「あの~・・・、良かったのはアル様の方ですよ?。おかしな、アル様。ふふふ」


「あ、あぁそうでした。失礼しました」


焦った!、こんなところで考える事じゃないな・・・。とりあえず、集中しなきゃ!。


「では、生薬草が10本一束で20束あるので、こちらが銅貨40枚。月夜草が根付きで3本、こちらは銅貨30枚になります」


ちなみに、貨幣の価値としては

銅貨10枚 → 銀貨1枚

銀貨10枚 → 金貨1枚

金貨100枚 → 白金貨1枚


銀貨一枚あれば、冒険者用の安宿なら朝夜の食事無しで2日は泊まれる。

ただ、今回はアサギリ草が纏まって採取できたからだが、いつもなら大体半分だ。

今回、月夜草分の銀貨3枚分でフィオナへの結婚祝いでも買って、渡そうと思っている。


「いつもより多いので、ちょっと嬉しいですね」


「これも、アル様の日頃の行いが良いからですよ。神様は、ちゃんと見ていてくれているんです」


ニコッと微笑むとえくぼが出来て、それもまた可愛い。

まだ女性の耐性が少ないアルにとっては、破壊力抜群である。


(何だよ何だよ、この笑顔!。俺を殺す気か!?。思わず、勘違いしちゃうよ・・・)


心の中の葛藤などおくびにも出さず、俺も微笑み返す。

一つ深呼吸してから、報酬を貰う。


「では、こちらが報酬になります。銅貨70枚なので、銀貨7枚になります」


「1,2,3・・・7枚、確かにありました。では、今日はこれで・・・」


俺は、そそくさと帰ろうとするとシーナさんが止めた。

何だ?、と思いつつ彼女に聞いてみると、彼女は小声で・・・


『今日はもう終わりですよね?。この後予定あります?』


『あ、えっと・・・、ちょっと買い物があるので店が閉まらないうちの行こうかと・・・』


『あ・・・、そうですか・・・・・・シュン』


『で、でも、買い物後なら何も予定はないですが・・・』


『で、では、7時にギルドの横にある時計台の横に・・・』


『わ、分かりました。では、後程ーーーー!・・・』


『あ、あの、アル様ーーー!?』


あ、焦った・・・、まだドキドキしてるわ・・・

これは走ってきたからか、それともシーナさんとの会話のせいなのか・・・


自分ではよくわからなかったが、この後に起こるであろうイベント発生に、心臓の鼓動が早くなるアルであった・・・

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