世間知らず少女の旅物語
もめん
第一章 旅の始まりと原住民の島
一話 最悪な旅の始まり
カー、カーと何かの鳥の鳴き声を聞きました。
空を見上げると白い鳥が群れをなしていました。
あんなふうに、わたしも空を飛べたなら。
こんな思いをすることも無かったのに。
視線を戻して前を向きます。
目の前にはどこまでも続くとしれない大海原が広がっていました。
島の影など一つも見えません。
あぁ、もう無理。早く着いてくれ。どこでもいい。どんなに危険なところだっていい。どこでもいいから___。
トイレのある所に____。
「………うぶっ」
あ、やばい。もう無理です。我慢できません。
もういい。こうなったら思いっきりやってしまいましょう。
どうせ周りは海。誰も見てる人なんていない。
はしたないとか汚いとかこのわたしがそんなことするわけにはとかそういう小さいプライドなんて捨ててしまいましょう。
さぁ、思いっきり____
「おえええええぇぇぇぇぇ」
海に思いっきり、吐きました。
吐瀉物が大海原にぽつんと広がっています。
あ、これ昨日食べたトウモロコシだとぼんやりとそれを眺めていると、第2波が襲ってきました。
1回吐いているのだから、2回目からはなんの躊躇もありません。
「おえええええぇぇぇぇ」
吐瀉物がどんどん広がっていきます。
海に住む生き物達には申し訳ない限りです。
どうしましょう。ここの海域はまだわたしの故郷の領海だったはずです。もしここでわたしの吐瀉物を含んだ魚が漁で水揚げされて市場に出荷されたら。
………申し訳なさすぎる。
いくら故郷を捨てたわたしでもそれは流石に申し訳なさすぎる。
いや、でも大丈夫ですよね。魚もわたしの吐瀉物なんて食べないでしょうしね。さすがに。きっと暫くしたら自然に還ってますよ。自然の循環って素晴らしい。
いやー、しかし、わたしって船酔いしやすい体質だったんですね。まさか旅に出て1時間もしないうちに2回も嘔吐するとは。
船に初めて乗ったことで得られた知識ですね。船に乗らずにあのまま一生故郷で過ごしていたらこんなこと知り得なかったでしょうから。
それだけでも吐いた意義がありますよね。たぶん。
自分の吐いた吐瀉物をぼんやりと見ながらそんなことを考えました。
さあ、いつまでも吐瀉物を眺めてなどいられません。むしろ眺めてたくないです。
船酔いも吐いてスッキリしたことですし、スピード上げて出発しましょう。
このボートは祖父の形見のひとつ、異国製の最上級ボートですからね。スピード上げればめちゃくちゃ速いんです。
大丈夫。2回も吐いたのでもう船酔いはしませんよ。だからスピード上げても問題ナシです。むしろスピード上げないとやばいんですから。夜が来るまでにはどこかに着きたいのでね。
さぁ、行きましょう!
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