第46話 暗部
「手紙、届いたかなあ」
「さあね。住所には行ったと思うけど、届いているかまではわからないよ」
夜11時過ぎ、香耶は小次郎の部屋で転がっていた。手紙を書いたころから、訓練終わりに小次郎の部屋でだらけるのが習慣化したようだった。
「にしても、どういうつもり? 今日は泊ってけって。おなじ寮内だよ?」
「まあまあ。それに見たところ、立ち上がる気力があるかどうかあやしいけど?」
「・・・・・寝る」
「そっか。でも、早くない?」
「いいの! 誰かさんのせいで体バキバキなんだから」
そっぽを向いてしまった香耶に苦笑しながら小次郎はスマホを開き、ついさっき届いたメールに目を落として、そっと安堵のため息を吐いた。
(なんで俺が香耶を泊めなきゃいけないんだよ。学園長さん?)
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「アーチャー、状況報告」
その頃、学園の塀の外で、黒服に身を包んだ男たちが息をひそめていた。その中の一人が無線に向かって話している。
『こちらアーチャー。どちらの部屋もカーテンが引いてある』
「了解。・・・・・アサシン、状況報告」
『内通者から連絡がありました。対象は2つとも男の部屋にいるようです』
「了解。各自、セカンドフェイズ開始」
『了解』
様々なところに散らばっている男たちが動き出そうとした、その時だった。のんびりとした低い声が聞こえてきた。
「困りますねえ」
「っ⁉」
男たちは必死に視線を巡らす。すると、学園の門に背を預けた着物姿の学園長が、優雅に葉巻を吸っていた。
「あなた方が誰かなど、私にとってはどうでもいいことですが、」
無線を使っていた男は、目の前の相手がやばいことに気づいていた。今までくぐってきた修羅場の経験が、
「私の学園に侵入されるのは、とても不愉快ですね」
突如として膨れ上がった学園長の殺気に合わせて、男たちは飛び掛かった。ナイフなどの刃物を突き出したその攻撃は、まったく同じタイミングで避けようもないはずだった。
「ぐほっ⁉」
が、その攻撃が彼に届くことはなかった。男たちはピン止めでもされたように、空中で静止している。
いつの間にか彼らの体からは、数本の黒い細槍が生えていた。
「安心したまえ。私の異能は絶対に急所をつかない。それが特性だからね」
葉巻を地面に落とした学園長は右手を高々と上げ、つぶやくように口を開いた。
「
さらに現れた細槍が男たちを貫き、激痛とともに後悔の念を与えていた。
※次回更新 6月2日 火曜日 0:00
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