第10話 実力1


 「うっ! そ、それは関係ないだろう!」


 そう言って、志保は乱暴に腰かける。


 「ええ~、そうかな~?」


 「そ、それより仕事の話だ」


 「も~、しほりん真面目だなあ~」


 「んん、私が体術担当で、識が狙撃担当だ。君はその補佐についてもらう」


 「わかりました」


 「君のデスクとパソコンはそこだ。使い方はわかるか?」


 「ええ、大丈夫です。軍でもやっていたので」


 「ねえ、ねえ」

 

 小次郎がデスクに座ると、識が話しかけてきた。


 「なんですか?」


 「君はどこの軍にいたの?」


 「僕は中東にいました」


 「ええっ! 最前線じゃん!」


 「まあ、そうでしたね」


 「まあって・・。じゃ、じゃあさ、flow sniperフロウ・スナイパーって知ってる?」


 「まあ、一応は」


 「やっぱりすごい人だった⁉」


 識は食い気味に聞いてきた。前のめりになって頬が紅潮している。


 「さ、さあ? そんなに有名な人なんですか?」


 「それは、もう! 狙撃手の中では超有名人だよ。まだ若いアジア人らしいんだけど、流れるような体術、流れるような狙撃、流れるような殺し。一切の無駄がないその戦いぶりは、一種の舞だとも言われてるんだよ!」


 「ああ、だから、流れるフロウ狙撃手スナイパー、なんですね?」


 「うん!、それでね、それでね」


 「おい、識。その辺にしておけ。それよりやることがあるだろう?」


 「あ、そうだった。小次郎君、ついてきてもらえるかな」


 「はい」


 小次郎は識に従って、闘技場の二階に向かう。大きく、分厚い扉の先には狙撃場があった。


 「ここで、君の実力を見せてくれ。傭兵さん?」


 「・・・わかりました」


 (見せてあげますよ。あなた方が言う«フロウスナイパー»の実力を)


 「具体的にはなにを?」


 「そうだね、まずは射撃から見せてもらおうかな」


 「拳銃? それともライフル?」


 「拳銃からで頼む」


 「わかりました」


 小次郎は識からリボルバーを受け取り、スタンスをとる。


 「ターゲットに注文はある?」


 「マンターゲットでお願いします」


 「わかったよ」


 ターゲットが人型に変わり、小次郎は右手に拳銃をぶら下げ、前方をにらむ。


 「では、はじめ」


 ドン、ドン、ドン、ドン!


 きっかり4発、ターゲットの胴体、足、頭、心臓を打ち抜く。


 「・・・・・・」


 「こんな感じでいいかな?」


 「え?、え? ノータイムでこれだけの精度が出せるの?」


 「大体こんなものだろう。使い慣れたベレッタならもう少し早く撃てるんだが」


 「これ以上早くなるの⁉」


 「いや、拳銃なら僕より早くて正確なやつはごまんといますよ」


 「そ、そんな・・・・」

 

 (カルチャーショック、かな?)


 ※次回更新 1月31日 金曜日 0:00

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