第7話 職員会議

 

 「カウンセリング、か」


 小次郎は用意された生徒用の部屋でベッドに転がっていた。


 (殺人者がやることじゃないよな…)


 起き上がって自分の手をみる。今まで数え切れないほど引き金を引いてきた手だ。


 ピンポーン


 ふと、寮のインターホンが鳴る。


 「はい」


 「ケリー様、ですか? お届け物です」


 小次郎はドアを開け、2つの黒いアタッシュケースを受け取る。


 このケースは小次郎が日本の基地を経由して持ち込んだ相棒である。アタッシュケースをベッドの下に入れ、再びベッドに倒れ込む。


 (まあ、日本で使うことなんてないだろうけど)


 ーーーーーーーーー次の日


 「狩谷小次郎、17歳です」


 小次郎は職員会議で自己紹介をしていた。学園長をのぞくほとんどの職員がいぶかしげな表情をしている。

 

 「彼には体術及び狙撃の補助教師をやってもらいます」


 学園長がこう言ったとき、端の方に座っている女教師があからさまに顔をしかめた。


 (前途多難・・・・・・・)


 「学園長、納得できかねます」


 案の定、その女教師が口を開いた。


 「何が納得できないとおっしゃるんですか? 柿崎かきざき先生」


 「なぜ、生徒と同い年の少年が教師をやるんです?」


 「年上だからといって彼より強いわけではないでしょう?」


 「それは、私たちが彼より劣ると?」


 「少なくとも彼は私より強い」


 ザワッ


 語気を強めた学園長の言葉に、職員が周りと顔を合わせて小声で話し始める。


 「おい、学園長よりも強いなんて聞いてないぞ」


 「俺もだよ。学園長より強かったら、いくら柿崎先生でも文句言えないだろ」


 「でもさ、なんでそんなに強い人がうちに?」


 「そういえばそうだな。でも学園長が嘘をつくわけないし」


 「はい、皆さんお静かに」


 混乱が大きくなる前に学園長がストップをかけた。


 「柿崎先生、確かにあなたはお強い。しかし、前線帰りの軍人に教わることも多いかと思いますので、よろしくお願いします」


 「・・・・・・わかりました」


 その女教師はたっぷり間をおいてから、しぶしぶそう答えた。


 「さて、これで職員会議はおしまいです。では、柿崎先生、彼にいろいろ教えてあげてください」


 (え、俺があの人の補佐につくってこと? だよね、そうだと思ってた)


 「よろしくお願いします、先生」


 「・・・ついてきなさい」


 「はい」


 柿崎は小次郎を連れて闘技場のほうに向かっていく。


 「基本的に、ここの体術授業は組み手の指導だけだ。よって、授業準備などはいらない。狙撃も生徒に勝手にやらせて、随時指導していく方式だ」


 (うそだろ、時代錯誤にもほどがある・・・)


 ※次回更新 1月21日 火曜日 0:00

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