元傭兵の学園生活

春風落花

第1話 プロローグ

 2330年 第三次世界大戦勃発。----------------


 この戦争は近年乏しくなった石油資源をめぐって始まった。21世紀から危惧され続けていたこの資源問題は300年たった後でも解消されることはなく、現在に至る。


 主に中東を中心としたこの戦争が核戦争にならなかった要因は二つある。


 一つは、現地の資源が使えなくなるため。


 もう一つは、戦士ウォーリアーの台頭であった。


 戦士ウォーリアー。それは精神を具現化した武器デバイスによる異能を行使し、戦う。もともと人間の心を具現化しようとした研究の派生であった。


 各国は戦士の育成に全力を注ぎ始めた。中には非人道的な科学実験を繰り返す国もあるなか、中立的立場を貫いていた日本は比較的マシであるといえる。


 日本の政府は【日本戦士学園】なるものを作り、異能が発現もしくはデバイスの展開が可能になった人間を入学させ、卒業後は自衛隊に組み込んでいた。


 が、10年後各国の経営事情によりこの戦争は一気に収束していく。


 ----------------------中東ー戦闘地域


 「おい、ケリー。上官がお呼びだ」


 任務が終わった後、ベースキャンプのプレイルームで仲間とビリヤードにふけっていた東洋人に迷彩服がはち切れそうな黒人が話しかけた。


 「なんだよ、サム。今いいところなのに」


 ケリーこと狩谷 小次郎は流暢な英語で答えた。小次郎は今年で17歳。182センチと身長が大きく、目が大きい童顔である。そのくせ一人で考え込んでいると、やけに大人びて見える少年である。


 「俺だって上官のパシリなんてやりたくないけどさ。なんかひどく焦ってたもんだから」


 「まなんにせよ朗報じゃないんだろうな。めんどいけど、行ってくるわ」


 「おお、行ってこい。Good luck」


 「Thanks」


 部屋を出た小次郎は一転、真剣な顔になる。


 (とうとう俺も解雇かな。ここにも長いこと居るし、別のとこで雇ってくれっかな)


 騒然とした廊下を歩きながら、ふとつぶやく。


 「もう7年か・・・・・」


 思えばド素人から始めてからよくもまあ生き残ったものだ。その点だけは運が良かったと言えるだろう。


 コンコンコンコン


 上官室のドアをきっちり四回ノックする。


 「ケリーです。お話があるとのことで伺いました」


 「・・ああ、入れ」


 「失礼します」


 中には強面の上官がいた。いつもは毅然としている彼が珍しく沈んだ顔つきをしている。


 「単刀直入に言おう」


 椅子に腰かける暇すら与えず、上官は切り出した。


 (いよいよ解雇の線が濃厚かな)


 「日本への強制送還だ。・・達者でやれよ、ケリー」


 「・・・・・・・・はっ?」


  ※次回更新-1月2日0:00

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