『メリー・クスリマス❗』
やましん(テンパー)
『メリー・クスリマス❗』
≪これは、現実とは関係のない、フィクションです。≫
この、秘密クラブは、別に、犯罪組織ではありません。
月に二回、公民館の小さな部屋で集会が行われますが、とくに、会議とか、レクチャーがあるということは、ありません。
怪しいお祈りも、儀式もありません。
時間が来ると、ぼつぼつ会員がやってきますが、部屋に入るときだけ、秘密の挨拶をしなければなりません。
『メリー・クスリマス❗』
それだけ。
あとは、本を読むなり、ヘッドフォンで音楽聞くなり、ゲームしたり(音を出さないという、規則があります。)、寝るなり、自由にすればよいのです。
小さな声で会話するのは、かまいません。
小部屋が一つ、付録に付いていて、すこし、込み入った話を、アドバイザーと、したいというひとは、30分限定で、使うことができます。
アドバイザーは、この会を主宰している、お医者さまと、臨床心理士のかたです。
ただし、ここでは、医療はできないので、あくまでも、お話し程度です。
夜9時がきたら、閉館なので、その10分くらい前になると、各自報告書に、数字を自己申告します。
べつに、書かなくても、かまいません。
もちろん、来ても、すぐに帰ったってかまいません。
数字、というのは、今現在飲んでる薬の数をかくのです。
同じお薬を二個のんでるなら、『2』 です。
名前は、本名でなくても、可です。
まあ、あやしい、と言えば、あやしい会だといえば、そうですよね。
会の名前は、『メリー・クスリマス』
目標は、無理なく薬を減らすこと。
ただし、原則があります。
① 治療は、主治医に従うこと。
② 飲むべきお薬は、きちんと飲むべきである。
③ マナーを守ること。
④ 無理しないこと。
ようするに、ここは、時間をつぶしにくる場所です。
もし、ほんとうに減薬がなって、3か月続いたら、目出度く退会です。
会費で、お茶パーティーをします。
もっとも、退会しても、『コーチ』という名前で残ることも可能です。
当然、『復帰』もありです。
ぼくは、いつもひとりものです。
かおりさんも、いつもひとりです。
両方とも、もう、けっこう、良い年です。(たぶん)
ある晩、ぼくの車が、突然、動かなくなりました。
この手の車は、故障すると修理が厄介です。
修理屋さんに電話すると、案の定、今夜は、もう無理。
『そおりゃあ、あなた。火星から行くんですもの。そこの資源惑星は、ちょっと離れてるから。明日です。ものによっては、一週間はかかります。まあ、保険があるから、それ使いましょう。』
『はあ・・・まあ、よろしく。』
公民館にお願いして、修理やさんが取りに来るまで駐車場に置いてもらうことができそうです。
まあ、辺鄙な場所だから可能なのですが。
ところで、今夜、かおりさんが、ドクターと30分、話をしていました。
そのあと、かおりさんが、ぼくに言いました。
彼女の声は、初めて聴いたと思います。
実は、かおりさんは、ぼくには、あこがれでした。
だから、内心、ぼくは、踊りあがりました。
『壊れたのならば、送りましょうか?』
『え? いいんですか? ぼくの家は、いま、火星の反対側ですよ。』
『まあ、高級車ですから。大丈夫よ。少々、あばれても。』
『ひえ・・・まあ、助かりますが・・・・』
『じゃ、つべこべ言わずに、どうぞ。』
かおりさん、けっこう、怖い・・・・・
こうした場合、なにもせずに、男女が車に乗り合わせると言うのは、非常識とされマス。
かおりさんの車は、30年ほど前に作られた、中古宇宙自動車です。
ただし、当時の最高級車です。
広い車に中には、なんでもありそうでした。
後部座席は、広いベッドルームにも、食堂にもなりそうでした。
彼女は、運転席に座って、言いました。
『あなたの、座標を入れてください。』
『はいはい。』
ぼくは、自宅の座標を入力しました。
『じゃあ、しゅっぱーつ!!』
駐車場で、ドクターと、アドバイザー、その他数人が、見送ってくれていたのがわかりました。
『なんで、また。わざわざ。』
ぼくが、ぼそっと言いました。
『総合医療小惑星』を飛び立ちながら、かおりさんが言いました。
『まあね、あたしのおくすりは、ひとだから。』
『あらららら。え~~~! かおりさんて、もしかして、『イーター星人』?』
『ご名答。』
『そおりゃあ、まいった。』
イーター星人は、人類をお薬として服用します。
人類にとって、イーター星人に食べられるのは、『最高の名誉』と、されています。
その功績は、高く評価されます。
といいますのも、人類を食べたイータ―星人は、地球全体が3年は十分暮らせるほどの、エネルギーを放出するからです。
もちろん、全部は吸収しきれませんが、あちこちにエネルギー吸収パネルが設置されております。
ただし、彼らにとって、この状態は、病気なんだそうです。
イーター星人は、病気をよくして、薬を減らしたい。
地球のエネルギーを使い果たした人類にとっては、イーター星人の病人は、またとない資源なのです。
だから、あまり減薬はさせたくは、ないのです。
でも、食べられちゃう個人のことは、誰も心配はしないのですよ。
本人が、だいたい、そうなんだから。
そういう、世の中に、なってるのですから。
そう教育されるから。
ぼくの車や遺骨は、たぶん、その後、市役所が引き取るのでしょう。
で、かおりさんが、ぼくに、とびかかってきました。
ぼくは、体が引き裂かれるのを、少し、感じました。
************ ************ 🚙
おしまい
『メリー・クスリマス❗』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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