4-2
「美穂ちゃーん!」
「何やってんのよ!?」
ザバザバと水を掻き分けながら川岸までたどり着いた木下の腕を掴み、中島が彼女を引っ張りあげた。まずはこのびしょ濡れの身体を拭いてやりたいのだが、彼女達は誰一人としてあいにくタオルなど持っていない。あるのはスカートのポケットに入れていたハンカチくらいだが、身体を拭くには小さすぎる。どうしたものか、そう思案していると、木下の視界を何かが遮った。
「
ふにゃりとした笑顔を見せる山下に断りをいれ丁寧に猫の身体を拭いていると、薄らと目を開けた猫がか細い声で鳴いた。
「良かった、生きてた……」
安堵の息を漏らしたものの、猫はプルプルとその身体を震わせている。濡れた事で体温が下がってしまったのだろう。それを見た木下は自分の体温で少しでも温めてやろうと、制服のボタンに手をかけようとする。
「ほら、貸しなさい」
しかし、それを見ていた中島が木下の手から猫を奪い取り、自身の胸元へ猫をうずめた。
「おおー、やっぱり漢字一文字で表すと『巨』ってだけはあるよねー」
「『板』の誰かさんにはこんな事出来ないでしょ?」
「よーし、その喧嘩買ったー!」
山下の一言にふふんっと勝気な笑みを見せる中島と地団太を踏む木下。
「ところで、その猫これからどうするのー?」
山下が漏らした言葉を聴きながら、もげればいいのにと思いつつ中島の胸元を木下が覗き込むと、不安そうに彼女を見上げる猫と目が合った。助けるだけ助けてそのまま放置するわけにも行かない。
「んー……。よし、決めた! 家で飼う!」
そう高らかに宣言した木下。彼女によって助けられた猫は『クロ』と名付けられ、木下家の一員となるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます