マシマロ

天川 榎

チュートリアル

第1話:とりあえず女子校

 あかん。遂に会社クビになった。

 毎日会社に行って、ネットサーフィンして掲示板荒らしていたら、会社にバレた。あいにく給料が安いだの、上司がパワハラだの、文句ばかり書き散らした文面が上層部に行き渡り、本日めでたく懲戒解雇となった。

 営業担当とか言っておいて、だいたいは社内に居たし、結局前期の売り上げは0だったな・・・・・・いや~働かないで食べる飯は最高だったのに。

 いやはや、今日から遂に職無し。就職して今までスキルというスキルは、掲示板に溢れんばかりの罵詈雑言を書き込むスキルだけだ。『ガマガエル上司がゲロ吐いたと思ったら何かスカートのパンツについてしゃべっていた』みたいなことを延々と書き連ねて早5年。ニートで暮らしていた方が、まだ実のある生活が出来ていたんじゃ無いかと思う、今日この頃。皆さん、いかがお過ごしですか?

 今日から当てもなく公園に出勤。朝になると、いつもの出勤のクセで家から出てしまう。いつもは満員電車で密着プレイで悦に浸っているが、もうそれは既に過去の思い出。独りゾウさんにバネが付いたあの揺れる遊具で、元気に遊ぶ幼女を見てどんな育成方法があるかをずっと妄想し続ける遊びに耽る。段々親御さんの目線が自分に集まってきているのを感じて、人妻に蔑まれるのも乙だな、と快感を得てその場を立ち去る。

 こんな俺はきっとどこかの雑草として生えて、見えそうで見えない楽園達を眺めて居るのが一番害も無く、幸せな人生が送れたハズだ。なぜか知らないが、人間に生まれてしまった。生きていればいつも罵倒や悪口ばかり。何も楽しい事なんて無い。そう思うと人は常に罵倒されて生きているのかも知れない。生まれて泣けば罵倒され、学校に入れば成績だの生活態度だの言われて罵倒され、会社に入れば売り上げが悪いだの付き合いが悪いだので罵倒され、どこにも逃げ場は無いのだ。故に人はマゾヒストとして生きていくのが最適解であると結論づけた。

 あとは誰に罵倒されるのが一番良いかだ。子供や老人に罵倒されてもエクスタシーが今ひとつだ。年齢が近いのも少しどうかと思う。とするとやはり女子校生とかか。絶妙なお年頃で踏んだり蹴られたりすれば、背伸びして罵倒している可愛げの生意気さがブレンドされ、現世ではめったにお目にかかれないほどの絶頂を味わうことができる。そんな気がする。

 なにかきっかけさえあれば、女子校に入って罵倒されたい。そう願っていた俺に、天恵が舞い降りた。風で飛ばされたチラシが、偶然足に絡みついた。それを掬い取り、チラシの中を読んでみると『男性募集!』と女子校生の絵がご丁寧に添えられ、携帯電話の番号が書き連ねてあった。これはいわゆるああいうやつだな、と思い俺は、携帯電話を取り出し、書かれている電話番号に発信するのであった。

 

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