突入
到着した。
一樹が暴れないか心配ではあったが、大人しくしてくれて助かった。
切り落としたはずの巨大な枝の上で一息ついている。中に入る場所は分かっているが、先に現状を確認させたかったのだ。
「なんだよ。ここ……」
飛行機やヘリコプターでもなければ見えないであろう位置で見下ろす地上に顔を青ざめている。落ちても平気であると分かっている俺たちは気楽なんだけど、知らないからこそ恐怖しているようである。
「ここに、二葉姉はいる。見つからないわけだよな」
「たまに見えてた大樹は、夢じゃなかったのか」
「そうなんだよ。まぁ普通は夢や幻だと思うわな」
俺たちはバッチリ見えていた。それは、コッペリアンの居る観測者だったからなのだろう。候補の場合だと視界を掠める程度で振り向けば無くなるのかもしれない。
詳しい原理は分からないので、そういうものであると納得している。
「それで、どこに行けば会えるんだ?」
「切り替え早いな」
苦笑しながら、俺は七機の手を取った。
「先導する。彩乃は一樹と着いてきてくれ」
「はい」
「いっくよー」
躊躇うことなくフリーダイブする。命綱なしの行動に、視界の端では一樹が慌てていたが、彩乃に止められている。その上で空を歩いて着いてきてくれている。
バタバタとしているように見えたが、すぐに観念したようで動きを止めて大人しくなっている。
その間に俺は、鎖頼りでグネングネンとあっちこっちと強制移動。この立体機動にも慣れつつある自分が怖くなる。そのうち絶叫マシンに乗っても平気になるのではないかと思えてしまう。
「いや、安心感の問題で絶叫マシン無理か?」
「お兄ちゃん。ちゃんと見てよ」
「悪い悪い」
未来を知ることで移動箇所を決めているのだから、俺が遊んでいたら枝に激突しかねない。普通の枝ならちょっと痛い程度だけど、縦の長さだけでも普通の一軒家よりも巨大な枝にぶつかればタダでは済まない。死すら覚悟しなくては、となってしまう。
集中して前を見る。
最初にやった時はあんなに叫んだことがもはや懐かしい。慣れとは怖いものである。
「あそこ。見えたよ」
指差す一角には、確かにポッカリと穴が空いている。速度を落とし滑空時間を伸ばしている間に、手で彩乃に合図を送る。反応を見ることはできないが着いてきていると信じて前に進む。
いくつかの移動を経て、たどり着いた穴はやはり真っ暗で、侵入を拒んでいるように見えた。
「お待たせしました」
「生きている。ボクは、生きている?」
「生きてるから安心しろよ。ここからはヤバいぞ」
「今より、もか?」
「始まったばかりだしなぁ」
何も出てこないでただ空の旅をするなんてゲーム起動してOP流れているとことほとんど同じだ。開始してすらいない。
チュートリアルもまだなのだから気合いを入れてほしいものだ。
「中をよく見ろよ。たっくさんやっばいのがいるから」
俺たちの手に負えない化け物かうようよと徘徊する洞窟の中。これが、チュートリアルなのだから笑いしか出てこない。
さぁ攻略開始だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます