彩乃到着

しばらくのらりくらりとミライの質問を回避しながら時間を潰していると、扉が開いた。


「遅くなって……ってミライ。その格好!!」

「あーうるさいの来ちゃった」

「ほっ」


ようやく一息つける。

プリプリしながら中に入ってくるので、七機が集めた洗濯物を押し付けて部屋を出る。着替えるだろうし、男の俺は出ていたほうがいいだろ。


「おっ五機じゃないか」

「こんにちは。昨日はありがとう!」

「元気いいな。このこの」


頭を乱暴に撫でれば、えへへと笑みを零している。昨日はほとんど話をする時間が無かったが、いい子そうだ。


「お兄ちゃん。なんで五機にそんなことしてるのさぁ」

「なんとなく?」

「僕にもやってよぉ〜」

「はいはい。よく頑張った」

「にゃはは。くすぐったいや」


頭を差し出してくるので撫でてやる。

普通に頭を撫でているだけなのに気持ち良さそうにすることが不思議だ。

撫でられたことないからどんな気分なのか気にはなる。今度誰かに頼むか?

頼むとしたら……彩乃だな。ミライは全力で回避したいし、先輩方に頼むのは精神的に無理。


「どうぞ」

「はいはい」


ぶぅぶぅむくれながら、ちゃんとした服を着ているミライ。プロポーションがいいため、きっちりとした服を着たら色々な部分が主張してくる。緩い時も視線の先に困ったが、きっちりした服も割と困るのでどうにかして欲しい。

女性であることを変に意識してしまう。


「むぅ」

「わぁ」


スカスカと自らの胸元を確認する七機や見惚れている五機を無視して部屋に戻る。彩乃は洗濯を開始しているので俺は料理でも作るとしよう。

コピーした紙をミライに差し出し、冷蔵庫から食材を取り出した。


「何作るの?」

「ハンバーグとカレー。市販のルーを使えば、特段難しい工程無いしな」


前に買ってきていたカレールーを取り出して確認。作る量を考えて野菜を切り、炒め、作業を進める。

洗濯機の音が聞こえ始め、部屋を覗けばミライと彩乃が顔を突き合わせて書いてきた小説を読んでいる。

読み終わる頃にはちょうど出来ているだろう。そしたらお昼を食べてから作業だな。


俺は書き直しをしないとだし、二人は絵を描くことだろう。黙々とした作業ではあるが仕方がない。間に合わせられるように全力を尽くすだけだ。


「そう言えば、食うか?」

「もちろん」

「食べていいの?」

「ここでならな」


元々多めには作っているので二人が増えようと問題はない。食べていいと皿と箸を差し出せばちゃんと食べられることも確認しているので好きに食べてもらうとしよう。


一緒に食べられたら一番いいのだが、ミライには見えていないので、下手に話しかけられない二人を置いていられない。

俺も彩乃も見えているのだ。平然と話しかけてしまって幽霊騒動を巻き起こしてしまう。

幽霊と似たようなモノではあるが、そうでは無いと分かっているので対応が難しい。


「ほら、二人の分だ。ハンバーグカレーな」


食器の数が足りないので二人に出したのは肉などが入っていたトレーで、ミライが買った弁当についていたであろうプラスチックのスプーンだが、無いよりマシである。

サラダも準備してあるので、軽めに盛って置いておく。野菜も食うべし。


「出来たぞ〜」

「匂いでお腹空いた〜」

「まともなご飯キタコレ!!」


ちゃんと自炊しろと言いたいが、それで火事でも起こされた方が困るのでコンビニ弁当で命を繋いでくれ。

邪魔になった紙を下に降ろしてテーブルにご飯を並べていただきます。

さっ食べて頑張るか。

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