人形たちは愛を求める
風瑠璃
第一章
七機は求める
オープニング
夢を見ているような気分だ。
そんな光景が、眼前に広がっている。
「お兄ちゃん。早く見てよ」
「あっああ」
小学生程度の幼い少女に叫ばれ、片眼鏡をかけた右目で目標を見つめる。
それは、大きな犬だった。全長で十メートルいくのではないかというほど巨大で、見上げないとその全体像を視界内に収められない。
凶悪な顔は幾人もの命を奪っていそうで、鋭い犬歯に足が震える。大樹ほどある前足を振るえば、離れているはずなのに切り裂かれたような錯覚を抱き、届くはずがないと分かっているのに心臓がドクドクとうるさいほどに鳴っている。
「お兄ちゃん!!」
「わっ分かってる」
震えている場合ではない。
金の長髪を翻しながら巨大な犬に単身で立ち向かう少女の手助けをしなければならないのだ。
彼女は、身の丈ほどもある巨大な両手剣を振り回し、使い捨てにしながら確実にダメージを与えている。
細腕に似合わない怪力は、きっと俺なんて及びもしないだろう。
未来が見えているかのように事前に回避し、隙だらけの体に剣を突き立てる少女の居る現在。
明らかな非日常を眼前にしながら、俺がこんなことをしているのかを思い出していた。
ただの、現実逃避である。
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