序章3
志願兵になってからの生活は思いの外充実していた。
前線の近くにある町で他の志願兵と共に半日は農業や開拓、残りは訓練といった毎日。友人と呼べるかはわからないが雑談を楽しむ相手も機会も増えていった。俺はそんな毎日を結構楽しんでいた。
志願兵になってから一ヶ月たった頃戦自体は始まっていた。しかしいきなり志願兵に出番が回ってくるほど自国は弱くなかった。寧ろ優勢だったと聞いていた。
初陣の時は唐突だった。
敵軍の名のある敵将軍をうち取ったところで戦場後方の若い指揮官の一人が敵に急襲を受けていると連絡が入ったのだ。
戦場全体から見たら小さい規模でのやり取りではあったが出番は出番。
たまたま戦場近くで訓練していた志願兵の内、足の早い面子が選ばれて急ぎ救援に向かった。勿論俺も入っている。
道中遂に戦が始まるんだという緊張感と、ここから俺の人生がどう変わっていくのかという期待と不安で複雑な感情だったのを憶えている。
結果からいうと救援は間に合った。
急襲こそ受けたもの指揮官は冷静に対処、指示をだし被害を抑えて撤退戦を繰り広げていたらしいが、敵軍も黙っておらず生き残った急襲部隊がなりふり構わず指揮官を狙い始め、さらに両軍死者、怪我人が増えてきて戦場が混乱し乱戦化して指揮官にもあわやというシーンが増えてきた所に俺達が到着したのだ。
勿論正規兵ではない志願兵はあまり強くなかったが、横をつけた事や投擲武器中心だった編成も功を奏し有効打を与えることかできた。俺個人の話をすれば一番早く駆けつけ、不意打ちの投石と槍投げで志願兵内では一番敵を倒す事が出来た。
特に指揮官に向かって行った敵兵を槍投げで仕留めたことが最大の戦果だと思う。
聞くと俺達が助けた若い指揮官はアイン領の三男でトール様という名らしく、身分に驕ることなく真面目な方だった。
その後も部隊に少なくないダメージを受けたトール様が自領に戻るまで一ヶ月の間補充要因として働き、気が付けば恩賞を頂ける事となっていた。
村を出て志願兵になってから二ヶ月。俺の人生が今まさに変わろうとしていた。
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