イージープラネット

@mAcchang

第1話

人の文明が栄え、歴史が続こうとそこに生きる人たちは常に入れ替わり、決して同じ人物が歴史を紬続けるわけではない。

ただ僕の種族は他に比べて家変わるのにかかる期間が長めというだけである。それは生物的な寿命の長さの他に、生命の危険を回避する為の能力が高いという事でもある。

個人のレベルでなら、より長い寿命と強い能力を持つ者は歴史上数え切れない程居るが、種族の平均や種族内で最も劣った者で比較すれば、僕の種族は確かに高い能力を持っていると言える。

昔の話になるが、種の歴史上には複数の銀河を支配し、他の知的生命体の住む惑星を一人一個の感覚で支配していたような時代もあった。

まぁ、その後は僕達種族からの解放を目指す多種族による惑星感連合との戦いに敗れてその体制は崩れ去った。実のところ他の種族との共栄派と独裁派の戦争による戦争で、同族での戦いが多かったらしい。共栄派に前述した個人として強い他種族が合流し、終戦と共に概ね平和がもたらされた。

それも僕が生まれるはるか昔の事だ。でもその戦争の影響は今も数え切れない程残っている。僕達の宇宙は未だに復興の途上にあるといえる。



"セリオット・マーシェ、最終認定ランク 能力8 身体18 有性 優性。種族保護申請推奨"


そんな事か書かれたメッセージが通信端末に届いたの一昨日の事だ。その後は両親からの祝福の言葉が届いていた。あと早く孫の顔が見たいと。


最初のメッセージの内容を説明するとこうだ。

僕の名前はセリオット・マーシェ

マーシェ家の一人息子セリオットだ。

僕達種族の持つ超能力者としての評価が十段階の内8段。最高位の10は測定不可を意味するので事実上最高位の一つ下。非常に優秀な評価だ。誇らしいし家族も喜ぶ。

身体は肉体の年齢を表す。僕達の種族は超能力の目覚めと共に老化が止まる。成長期であるなら成長も止まる。変わりに超能力が成長していく。十代前半から二十歳を迎えるまでに最も超能力は成長し、そこからは人によるが、少し衰えて安定する。

つまり、早く能力に目覚めればそれだけ強力な超能力を持つことになる。

反面、早すぎると体が出来上がる前に成長が止まることがある。それが有性と優性の記述だ。簡単にいうと、生殖能力の有無と、他種族と交配した時に、僕と同じ種族の子どもが出来るか否かの判定だ。

若くして能力に目覚めると、生殖能力を得る前に成長が止まったり、目覚めると共に失ったり、持っていても同族以外とは子どもが出来なかったり、出来ても相手種族しか生まれなかったりと、生物的な問題があったりするのである。

そういった問題が僕には無かったと判定されたのだ。故郷の両親はこれからの長い人生で孫の成長を見守れる立場になったことを何より喜んでいるだろう。


ここまで話して、察しはついているだろうが、僕達の種族は種としての寿命を迎えつつある。というより、今の生態になった時点で衰退は決定付けられていたのだ。強き者は子孫を残せぬ生態。

それ故に、かつての独裁派の人々は個による支配と安寧を求めたのだ。より強き個により彼らの願いは潰えたが、それも昔の話である。


「そうかぁ、ちゃんと機能してたのか」


メッセージを見ながら呟く。出るものは出ていたが、それが不活性な事が多いのだ。僕の友人もそうだ。僕より少し早く能力が目覚め、身体の成長が15で止まった。

能力は9。しかも測定限界ギリギリの判定9。

現在生存している種族の中でも最高レベルだと言われている。

肉体年齢的に期待され、実際に生殖機能はあったものの、種が不活性で色々あったのを覚えている。アイツは元気にしているだろうか。


能力の数値に関してはなんというかあまり感心がない。理由としては自身の出生に依るところになる。

単純に回りに同じレベルかもっと高いレベルの同世代がいるからだ。

衰退する種族の保存の為に、高い能力と生殖能力を同時に有する個体を自然に発生させようという流れがあり、そういったコミュニティの中で生まれ育ったからだ。


友人もそういう集団の中の歳近いもので集まっているため、比較的能力は高い。半数以上は早くに能力に目覚め判定9だ。僕も最初は同じ判定だったが肉体の成長と共に衰え、今回の最終判定は8となった。

回りの大人達よりは高いが、同世代では下から数えた方が早い。そう思うと複雑な気分だ。ギリギリ判定9の友人は最初は測定不能の判定10だったが、何とか測定出来る様になってのものである。

そんな友人達とも、ここ数年会っていない。僕達種族はそういうものである。かつて星をまたにかけて支配した種族。能力判定6以上は自力で惑星間の移動が可能である。単に宇宙に出るだけなら判定3から可能だが、惑星間の移動となると光の速度でも年単位で時間がかかる。瞬間移動の距離も能力が低ければ限られる。

そんな種族であるゆえ、行動範囲は広い。仕事の場所も銀河単位で離れている。

今の僕の職場はかつて先祖が支配し文明を築いた範囲の末端、辺境の様な惑星で過去の文明の遺産の回収を生業にしている。

辺境の惑星にすむ未発達の知的生命体に自らを崇拝させて奴隷としていた惑星だ。今は支配から解放されて、僕らの先祖の与えた歪んだ発展と文明を失い、独自の文明を発展させている。

この星の人々は僕らの事は知らない。

そして、この星に残されているかもしれない、先祖の遺産を早期に発見し彼等の文明への影響を極力減らすのが僕の仕事だ。友人達も離れた土地で似たような仕事をしている。

メッセージを受けた多機能デバイスをしまい、この星の情報端末を立ち上げる。こちらには新たなメッセージは無いようだ。それを確認して部屋を出る。時刻はこの惑星では朝の六時半。出勤時間としては特に違和感の無い時間だ。

この惑星は僕達の様な存在を認知していない。その為に惑星の住人に紛れている。この惑星の健全な文明発展に、僕らの先祖の残した遺産が影響を与えないのは勿論、僕自身が影響を与えるのも望むところでは無い。


扉を開けて部屋を出る。目の前は背の低い草が手入れのないまま生えた空き地だ。都市圏の末端、ビル群を抜け、崩れかけの集合住宅地の更に端、水道も電気も届かなくなった荒れたと街の境の小屋に僕は居を構えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る